表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/19

2.ひとは微笑みながら悪人になることができる。

That one may smile,

and smile,

and be a villain;



――

『寒かったでしょう。おからだを温めたほうがよろしいですね。シャワーがありますからお入りください。

 そうでした。このお屋敷の奥さまは、とてもきれい好きな方でございまして、お食事の際には粗相そそうのないようにしていただく必要がございます。そこで、すべてのおからだの箇所はしっかりとお洗いになり、くれぐれも洗い残しのないよう、お気をつけくださいませ。お食事は、そのあとすぐに、ご用意いたしておきます』

 そういうと、アルフレッドはかしこまってお辞儀をしました。


Q1 さあ、あなたはどうする?

1.提案を承諾して、シャワーを浴びに行く

2.提案を拒否する

  ――


「ここは普通に承諾していけばいいよね」

「そうですね。とくに拒む理由もないですからね」

 あっさりと意見は一致した。


 私たちは、Q1に対して、1を選んだ。


 すると画面がふたたび、あの広い洋館の中の世界へと変わった。白い髭のアルフレッドが、優しそうにこちらを向いて、微笑んでいる。


――

『さあ、お嬢さんは奥のシャワー室をご利用ください。弟さんは、手前のシャワー室でお願いしますよ』

 いわれるがままに、わたしは奥のシャワー室へと向かいました。シャワー室とはいいながら、そこは、ライオンの口からお湯がながれ出る大きな湯船がある、とても豪華な浴場でした。おどろいたことに、どの湯船も桶も、ぜんぶが金色をしています。

 置いてあった石鹸は泡立ちが細やかで、からだにぬると肌にしみこんでくるような、ここちよい感じがしました。とてもいい匂いが浴場の中にみちあふれます。温かいお湯で洗いながすと、すべすべしたわたしの白い地肌があらわれました。

 どのくらいそこのいたのでしょう。やがて、わたしは至福の喜びにみちあふれながら、浴槽をあとにしたのです。


 広間にもどってくると、執事のアルフレッドが待っていました。

『では、これからお食事にいたしましょう。さあ、食堂へどうぞ』

 そういえば、弟がいません。

『アリエルは?』

『はて、弟さんは、シャワーを終えたあと、撞球室に展示された武具の装飾品にご興味をしめされたみたいで、行ってしまわれました。きっと、そのうちにもどってみえることでしょう』

と、執事は特に心配するようすもなく、いつものとおり、にっこりと笑っていました。


 わたしの目の前はとてつもなく広いホールとなっています。奥の右手に玄関につながる廊下が見えます。その手前の右側の壁には、大きなドアが二つあります。左側の手前には二階へのらせん階段があります。そして、その階段の向こうの左手の壁には、食堂へ行く扉があります。


Q2 さあ、あなたはどうする?

1.食堂へ行く。

2.右手前のドアの部屋に行く。

3.右奥のドアの部屋に行く。

4.階段を上る。

  ――


「さあさあ、チイちゃん。一気に選択肢が多くなったわよ」

「そうですねえ。簡単に食堂に行くのは、なにかもったいない感じがしますねえ」

「うんうん、同感。じゃあ、どれにする?」

「右手前の部屋から順番に行きますか?」

「ええっ。やっぱ、一番危険な香りがする階段からでしょう!」

 私が強くいい張ると、

「分かりました。じゃあ、階段を上ってみましょう」

と、チイはすんなり同意をした。


 私たちは、Q2に対して、4を選んだ。


――

 らせん階段はとても長くて、ゆったりと大きな弧を描いています。先の方はまっくらでまったく見えません。わたしは、おそるおそる段に足をかけると、そろそろと階段をのぼっていきました。でも、うしろから、

『ミランダさま。お食事の用意ができておりますよ』

と、アルフレッドの声がしました。わたしは階段をのぼるのをあきらめて、食堂へと足をすすめました。


 食堂の中は、とても広くてきれいです。ゆうに十人は座れる、白い清潔なクロスがかけられた大きな長いテーブルがどんと置かれていて、ところどころに蝋燭キャンドルがともされています。正面には男爵さまと、そのとなりに奥さまが座っていました。

『やあ、お客さんかな。これはかわいらしい娘さんだ。さあ、こちらにいらっしゃい』

 タキシード姿の男爵さまは、髪の毛を油でべったりとかためた、ちょび髭の似合う、ハンサムな紳士です。お齢のころは、三十くらいでしょうか。

『本当にきれいな肌をした娘さんだこと。まるで、ドリュアス(美しい木の精霊)を見ているようだわ』

と、奥さまは、わたしの顔を品定めするみたいに、じっと見つめられていました。赤いロングドレスを身にまとい、しょうが色をした長い髪が自慢の、美しいご夫人です。

『さあ、遠慮なくどんどん食べてください』

 男爵さまはわたしに食事をとるように勧めてくれました。おなかはぺこぺこ。湯気がほのかにほとばしる料理は、とてもおいしそうです。


Q4 さあ、あなたはどうする?

1.遠慮なく、料理をいただく。

2.弟が来るまで、料理をいただくのは待つという。

  ――


「ここは、もちろん食べるしかないよね」

「あっ、でも、あいちゃん。ひょっとしたら、2の方がよくないですか?」

「どうして?」

「ええと。なんとなくですけど、1はちょっとストレートすぎるかな、って」

「そうかなあ。2にしちゃうと、いつまで待っても食事ができないかもしれないよ。男爵さまが、そんなことをいうのならおあずけじゃ、っていったりしないかなあ」

「そうですねえ。じゃあ、素直にいきますか」

 少し首を傾げながらも、チイは私の意見に従った。

「うん。じゃあ、1で決まりだね」


 私たちは、Q4に対して、1を選んだ。


――

 いただいた料理は、この上なくすばらしいものでした。満足しきっているわたしに、男爵さまがお声をかけられてきます。

『ミランダさんは、お齢はいくつですか?』

『十四歳です。でも、あしたの誕生日で、十五になります』

『ほう。明日に十五歳になられるのですか!』

 男爵さまは、目をまるく広げて、興味深げな反応をなされました。

『ということは、明日になれば、いよいよ晴れてミランダさんはおとなの仲間入りをされる、ということですね』

『はい、そういうことになりますね』

 そういって、あまり深い意味を考えずに、わたしはにっこりとほほえみました。


『さあ、お嬢さん。うちで造ったあんずの果実酒です。とても良い香りのするお酒で、おいしいですよ』

 男爵さまが、わたしにカクテルを勧めてきました。


Q6 さあ、あなたはどうする?

1.喜んでカクテルグラスを手にする。

2.まだ未成年なので……、といって、丁重に断る。

  ――


「ここは飲むしかないよね。なんていっても、明日になればおとななんだし」

「あいちゃん、ちょっと待ってください。今度こそ、なにか、いやな予感がします。ひょっとしたら、お薬が仕込んであるのかもしれません」

「ええっ? 男爵さんに限って、絶対に、そんな悪い人じゃないよう」

「そうですか? うーん。なんか、ありそうな気がしますけど……」

「そうかなあ。むむむむ……。じゃあ、とりあえず断ってみようか?」

「はい、そうしましょう」

 チイの警告にしたがって、私たちは用心を期することにした。


 私たちは、Q6に対して、2を選んだ。


――

『ええっ、お飲みにならないのですか? これまた、どうして?』

 想定外の返答だったのか、男爵さまは目をキョトンとされていました。

『すみません。わたしまだ未成年ですから』

『いやいや、明日になれば、あなたは立派なおとなになられるのですから、今夜お酒を飲まれたところで、神さまはお許しくださいますよ。

 さあどうぞ――』

 再び、男爵さまからお酒を勧められます。


Q7 さあ、あなたはどうする?

1.男爵の強い勧めに根負けして、杏のお酒を飲むことにする。

2.初心を徹して、お酒を断る。

  ――


「わー。男爵、怪しい! やっぱ、悪い人なんだ」

「どうでしょう? でも、ちょっと誘い方が強引ですよね」

「うんうん、ここは絶対に断るしかないよね」

「はい、そう思います」


 私たちは、Q7に対して、2を選んだ。


――

 わたしの二回目の拒否に、男爵さまの目つきが変わりました。

『素敵なお嬢さん、これが穏便な私のできる最後の警告ですよ。

 さあ、お酒をお飲みなさい!』


Q8 さあ、あなたはどうする?

1.男爵の再度にわたる強い勧めにしたがって、お酒を飲む。

2.やはり、初心を徹して、お酒を断る。

  ――


「ひえええー、男爵怖いー」

「困りましたねえ。どうしましょう」

「ここは、おとなしくいいなりになっておいた方が?」

「そうですねえ。ここらが引き際でしょうかねえ……」

 チイの返事を聞いて、私はなぜか逆に奮起した。

「ううん。やっぱ、抵抗しよう! これはあたしの直感……」

「分かりました。じゃあ、あいちゃんのいう通りに」

 チイも嬉しそうに同意した。


 私たちは、Q8に対して、再度、2を選んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ