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10.なんてきれいに月明りがこの堤を照らしているんだろう。

How sweet the moonlight sleeps

 upon this bank!



 ゲームは佳境に入っている。私たちは、解答選択に苦慮しながらも、どうにかQ13の反撃の場面にまでこぎつけた。でも、反撃相手の四人のうち、老人のアルフレッドと、牢屋の番人レックスへの攻撃は、どうも結果が功を奏したように思えなかった。残る相手は、男爵か奥さましかない。でも、どちらも成功する可能性が見えなかった。そんな中、私たちは苦渋の決断として、奥さまを襲うことにしたのだが……。


 私たちは、Q13に対して、3を選んだ。


――

 わたしはまわりに注意をしながら食堂の扉へと近づき、扉を少しだけ開けてみました。中には奥さまが一人だけ、食卓の椅子に腰かけています。奥さまはこちらに背を向けて、テーブルに突っ伏しています。どうやら、眠っているみたいです。わたしは、食堂の中に足を踏み入れると、そっと扉を閉めました。男爵さまやアルフレッドが戻ってくるとまずいです。今の内に、奥さまを襲ってしまわなければなりません。でも、あたりに武器になりそうなものは置いてありません。ひょっとしたら、奥さまなら素手のわたしでも太刀打ちできるかもしれません。

 わたしは、奥さまの背後にゆっくりと近づいていきました。料理皿が片付けられたテーブルの上には、グラスとお酒の大瓶が置いてあります。奥さまはぐっすりと気持ちよさそうに眠っていらっしゃいます。お顔の色が赤くなっているので、お酒に酔っぱらっていらっしゃるみたいです。わたしはテーブルにのっている瓶を手にして、そのラベルをみてみると、アブサンと書かれていました。わたしは以前にこの名前を聞いたことがありました。強くて、飲みすぎてしまうと脳がとろけてしまうという、とても怖ろしいお酒です。


Q16 さあ、あなたはどうする?

1.奥さまに襲いかかる。

2.奥さまを襲うのを止める。

  ――


「じゃあ、チイちゃん。やるよ!」

「はい……。

 はっ、あいちゃん、ちょっとだけ待ってください!」

「えっ、どうして?」

「はい。私たちには、今のプレイを含めて、チャンスはあと二回しか残されていません。でも、私たちは、なんの勝算もないまま、これから奥さまを襲おうと安易に考えてしまっています。

 もう少し待ってみませんか?」

「そう……。じゃあ、とりあえず、ここは2番を選択しておくね」

「はい。ごめんなさい、勝手なことをいっちゃって……」


 私たちは、Q16に対して、2を選んだ。


――

 わたしはそっと食堂を抜け出して、ホールに戻って来ました。

わたしが寝室で眠らされている、と屋敷中の人たちが思い込んでいる今こそが、アリエルを助けて、この恐ろしい屋敷から逃げ出す最後のチャンスでしょうから、ここは強硬手段を取るしかありません。

 では、屋敷にいる人物の中の誰から不意打ちにかけていけばいいのでしょうか?


Q13 さあ、あなたはどうする?

1.ドローイングルームに入って、アルフレッドを襲う。

2.らせん階段を上って、男爵を襲う。

3.食堂に入って、奥さまを襲う。

4.煉瓦階段を下りていって、牢屋の番人を襲う。

  ――


「どうしよう? じゃあ、男爵を襲撃するの? それとももう一回、食堂に行ってみる?」

 私が困ってチイに話しかけたけど、チイは無言のままだった。

「あれれ、チイちゃん。眠っちゃったのかな? そういえば、もうリアルの時刻も深夜三時過ぎだしな……」

 五分ほどして、ようやくチイから、会話のチャット文が打ち込まれてきた。

「ごめんなさい、あいちゃん。しばらく、黙ってしまって――。ちょっと、考え事をしていました」

「何を考えていたの?」

「例の暗号です。あれを解かない限り、正解に到達できないと思ったものですから」

「書斎に隠されていたメモ、


  POOR SO PEEK.


  ASTEYMUKM SOPPULO ME

  UYAOD UKN SAYUKNU.


のことだね」

「はい。それと、アルフレッドのポケットから出てきたメモに書いてあった、


  SAYUKNU, UYAOD


もです」

「そっか、メモもあったんだね……」

 そういって、私はチイが打ち込んだアルフレッドが持っていた紙切れに書かれたメモ文を読み返してみた。

「はっ……。チイちゃん。よく見ると、同じ単語が含まれているよ!」

「そうですね。たしかに、書斎のメモとアルフレッドの紙切れには、『SAYUKNU』と、『UYAOD』という、二つの共通の単語が含まれています」

「どういうこと?」

「あいちゃん――。この暗号文は、私は英語のアルファベットを置き換えた文章なのではないかと、思っています――」

「どうして?」

「母音と子音の並び方が、なんとなく英語っぽい感じがするからです。でも、根拠はありません」

「アルファベットの文字を置き換えた暗号?」

「はい。アルファベットの五つの母音と二十一個の子音を、別なアルファベット文字に置き換えてしまえば、これまで見たことがない単語のように見えてしまうということです」

「うーん。でもさ、そんな置き換え、解読するなんて、絶対に無理なんじゃないの? 

『SAYUKNU』と、『UYAOD』の二語だって、チイちゃんから解読のヒントをもらった今でも、ぜんぜん意味が分からないよ」

 私の愚痴をよそに、チイは遠くを見つめながらにっこり微笑んでいた。

「慌てないで、落ち着いて考えてみましょう。きっとなにかが分かるはずですよ!」


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