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9.目の前に見えるのは短剣か? 取っ手を俺の方に向けている。

Is this a dagger

 which I see before me,

The handle toward my hand?



「さあ、誰を襲っちゃおうか?」

「ですねえ。どうしましょうか」

「男爵は強そうだから、後回しにしたいな」

「同感です。彼が悪の首謀者みたいですからね」

「奥さまはいじめるの可哀そうだから、同じく後回しと」

「可哀そうですか。はははっ……」

「ということで、執事のアルフレッドか、牢屋の番人のレックスかだね」

「どっちにします?」

「まずは弱っちそうなアルフレッドからだね」

「はい。そうしましょう」

 意見はまとまって、私たちはアルフレッドから襲うことにした。


 私たちは、Q13に対して、1を選んだ。


――

 わたしはそっとドローイングルームの扉に手を掛け、少しだけ扉を開けて、中をのぞいてみました。アルフレッドはこちらに背を向けて、なにやら書棚の整理をしているみたいです。

 さあ、チャンスは今です!


Q14 さあ、あなたはどうする?

1.アルフレッドに襲いかかる。

2.アルフレッドを襲うのを止める。

  ――


「どうする、ちいちゃん」

「ここはさすがに、行くかないですね」

「OK。じゃあ、行くよ――。死ねえ、アルフレッドー!」


 私たちは、Q14に対して、1を選んだ。


――

 息を殺したわたしは、そろそろと背後からアルフレッドに近づき、傍にあった暖炉の火かき棒を手に取ると、アルフレッドの後頭部目がけて、力いっぱい振り下ろしました。

『あうっ……』

 不気味な短い悲鳴を残して、アルフレッドがどかっと倒れました。

  ――


「よわー。アルフレッド……、あっ気なさ過ぎない?」

「なんか、可哀想ですね」

「同情は無用よ。アルフレッドは悪いやつなんだもん。これまでの数々の仕打ちの恨みを思い知れ、ってとこね」

「はい、そうですよね」


――

 わたしは、床にうつぶせに倒れているアルフレッドを仰向けに起こして、タキシードの内側の胸ポケットを探ってみました。すると、中に一枚の折りたたんだ紙切れを見つけました。わたしはそれを開いてみました。中には青いインクでなにやら文字が書かれています。


   SAYUKNU, UYAOD


 どうやら、これ以上ここにいるのは危険なようです。わたしは、ポケットに謎の文が書かれた紙切れをしまい込むと、気絶しているアルフレッドを残して、ドローイングルームから抜け出しました。


Q13 さあ、あなたはどうする?

2.らせん階段を上って、男爵を襲う。

3.食堂に入って、奥さまを襲う。

4.煉瓦階段を下りていって、牢屋の番人を襲う。

  ――


「さあ、まだ出て来たね。謎の文章が……」

「そうですね、この文章の意味を解かないと、答えにたどり着けなさそうですね」

「とにかく、Q13の選択はどうする? 次に成敗してくれるのは、どいつにしよう?」

「レックスはどうですか? 次に弱そうな人ですよね。なんとなくですけど」

「うん。そうだね。そうしよう」


 私たちは、Q13に対して、4を選んだ。


――

 ホールの中央に設置されたにせもの暖炉の床のふたを持ち上げると、その下に姿を現す煉瓦でできた隠し階段を、わたしは注意しながらそろそろと降りていきました。長い階段を降りきると、驚いたことに、そこにはアーチ状の形状をした高い天井の回廊がありました。壁も天井も赤茶色の煉瓦でびっしりと埋め尽くされています。地下の奥底にもかかわらず、壁のところどころにくべられた松明たいまつのおかげで、昼間さながらの明るさがそこにはありました。わたしは靴を脱いで、両手に取りました。靴音がこつこつと鳴り響くのはなんとなく危険だと思ったからです。回廊の奥底に向かって足を進めます。どのくらい歩いたでしょうか。途中には窓や扉はなにもありませんでした。すると、目の前の行き止まりのところに、お酒の入った樽を思わせる木材を使用して頑丈に作られた巨大な扉が姿を現しました。傍によって、扉に耳を近づけると、中からなにやら鼻歌のような声が聴こえてきます。中に誰かがいるのでしょう。わたしはそっと、扉を開けてみました。

 扉の向こうには木でできた椅子とテーブルがあり、テーブルの上には灯されたランプとお酒の瓶が一つ置いてあります。椅子には背の低い小男が座っていて、こちらに背中を向けています。きっと酔っぱらっているのでしょう。

 さっきから鼻歌で、『レックスさまが、この世で一番偉くて強いんだ』とか、『いつかそのうち、金と女をはべらせて、王さまのようにぜいたくに暮らしてやる』とか、意味不明なことをいっています。

 ふと、横を見ると、寒さをしのぐために用意された、まきの束がいっぱい置かれています。その中の一つの束の紐がほどかれていて、わたしにとって手ごろな大きさのまきが一本ありました。今なら、そのまきを手にして、背後からこの小男を襲うことができます。


Q17 さあ、あなたはどうする?

1.レックスに襲いかかる。

2.レックスを襲うのを止める。

  ――


「もう行くしかないよね。チイちゃん?」

「はい。もちろんです」


 私たちは、Q17に対して、1を選んだ。


――

 わたしはまきを一本手にすると、抜き足で背後から番人に近づいていきました。さいわいにも番人はぐっすりと寝込んでいます。わたしはまきを大きく振りかぶって、番人の頭めがけて、たたき下ろしました。まきは男の後頭部に見事にめいちゅうしましたが、その瞬間、こなごなにまきは壊れてしまいました。このまきの中身はくさっていたのです。

『ううっ、痛えなあ……。きさま、誰だ?』

 頭を押さえながら、男が目を覚ましました。

 わたしはさっと逃げましたけど、すぐに番人に捕まって、両肩を地面に押さえつけられてしまいました。

『お願い、放してください』

 わたしは必死に懇願しました。

『へええ。ねえちゃん、なかなかべっぴんさんじゃねえか? すぐに殺しちゃうのはもったいねえな。存分にもてあそばせてもらうぜ。えへへっ……』

 そのあとでわたしが男から受けたはずかしめは、とても言葉に表すことができないものでした。やがて男は、ぐったりしたわたしの首に太い手をかけて、ぐっと力を込めてきました。わたしの意識はとおのいていきます。


 ゲームエンドです。お疲れさまでした。

  ――


「なになに、レックスってこんなに強かったんだ?」

「たまたま手にしたまきが腐っていたのが不運でしたね」

「相変わらず、不謹慎なエンディングだよね。そろそろめちゃおっか?」

 すると、ウサギが大慌てで私たちを呼びとめました。

「お客さま、ここまで来て、止めることができますか? さあ、正解まであと一歩のところまで、お客さまたちは来ているのです」

「ううっ、痛いところをついてくるのね……」

「はい。こちらも商売ですからねえ」

「仕方ない、続けるか。

 あれれ……。チイちゃん、あたしのゴールド、尽きちゃった!」

 私が財布を確認すると、中身がもう底をついていた。

「あらら。そうなんですか。私もあと10ゴールドしか残っていません」

「ええっ、じゃあ、チャンスはあと二回ってこと?」

「ですね。追い込まれてしまいました」

「チイちゃん、どうする。続ける?」

「はい、もちろんです」

「分かった。じゃあ、頑張ろうね」


 再チャレンジした私たちは、途中で小瓶を手に入れ、さらに、小瓶の中にしびれ薬が仕込まれたピンク色のカクテルをしのばせた。そのあと、眠ったふりをして寝室へ運ばれていたミランダが、ベッドから起き上がると、そっと部屋を出る。


――

 部屋から出たわたしは、狭い廊下に立っています。少し進むと、あのらせん階段が現れました。どうやらこの寝室は、あのらせん階段を上ったところにあるみたいです。

 わたしはそろそろと足音を立てないように気をつけながら、らせん状の階段をゆっくりと降りていきました。どこまでも続くのかしらと思われたらせん階段も、やがて下の階へとたどり着きました。ここは、玄関から入ってきたあのホールがある一階です。

 ものものしい高価な壺が飾られている台の後ろにできたわずかな物陰に身をひそめて、わたしはじっと周囲を伺います。

 すると、中央の大きな柱時計が深夜の十二時の時を告げて、不気味な鐘の音がホール全体にこだましました。

 あっ、食堂の扉が空いて、中から姿を現した男爵さまが、蝋燭を灯した燭台を手にして、暗いらせん階段を上っていきます。まるで寝室で寝ているわたしの様子を調べに行くかのようです。

 男爵さまが階段の暗闇の中に消えてしまうと、今度は水差しを乗せた盆を手にしたアルフレッドが、食堂からホールを横切って、ドローイングルームへと消えていきました。

 奥さまはきっと、まだ食堂の中にお残りになられていることでしょう。

 はっ、わたしはもう一つ不可解なあることに気がつきました。らせん階段の降り口から壁につたって少し行ったところに、火がくべられていない大きな暖炉が見えますが、不思議なことに灰がちっともたまっていないのです。きれいに掃除されているのかなと思ったら、よく見ると、暖炉の床がふたのようになっていて、おまけに把手とってのようなものがついています。誰もホールにいないのを確認した私は、暖炉の前まで行って、把手とってを握ると、力いっぱい引っぱってみました。すると、意外にあっさりと、ふたが持ち上がって、中から煉瓦でできた階段が現れました。どうやら、地下に続く階段のようです。

 ひょっとしたら、この階段の下に地下室があって、そこにアリエルがいるのかもしれません。でも、だとしたら、アリエルはどうして姿を見せないのでしょうか。もしかすると、地下には牢屋があって、番人が拘束したアリエルを始終見張っているのかもしれません。

 わたしは決心しました。わたしが寝室で眠らされている、と屋敷中の人たちが思い込んでいる今こそが、アリエルを助けて、この恐ろしい屋敷から逃げ出す最後のチャンスでしょうから、ここは強硬手段を取るしかありません。

 では、屋敷にいる人物の中の誰から不意打ちにかけていけばいいのでしょうか?


Q13 さあ、あなたはどうする?

1.ドローイングルームに入って、アルフレッドを襲う。

2.らせん階段を上って、男爵を襲う。

3.食堂に入って、奥さまを襲う。

4.煉瓦階段を下りていって、牢屋の番人を襲う。

  ――


「たとえ、アルフレッドを襲っても、手に入るあのしょぼい紙切れがとても有効であるとは思えないし、レックスを襲ったら、返り討ちであっさり殺されちゃうし……。

 ってことは、ターゲットは男爵か奥さま?」

「ですねえ。じゃあ、奥さまから行きますしょうか。なんとなく勝算を感じないんですけど……」

「うん。だよね……」


 私たちは、Q13に対して、3を選んだ。


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