5−どんな人?
その日は天気も晴れ渡り、11月とはいえ、それほど寒くもなく
ゴルフ日和といっていい日だった。
女性は麻衣子を含めて4人だったが、女性ばかりではなく、男性を混ぜた組み合わせ
になっていた。
年恰好もばらばらではあるが、ゴルフが好きといった共通の趣味をもった者同士。
ゴルフの話題を通して、すぐに打ち解けていった。
ハルは幹事という役目だけではなく、人を引っ張っていく要素を持ち合わせているのか
ハルが何か話し出すと、みんな雑談をやめて耳を傾ける。
「今日はニアピンとドラコンはやりましょう」
そう切り出すとルールやコースの説明をしていた。
また新しいクラブを持参した人のところにいって、「おお、カッコイイなぁ。このシャフトってどう?」とクラブ談義を始めたり、初めての参加である麻衣子や他の人に近寄ってくると
「楽しくやりましょう」と微笑みかけてくる。
そんなハルを中心にしたコンペは和やかに進行した。
麻衣子は緊張するタイプなので、最初のホールは林に打ち込み、
そこからなかなか球を出すことができず、途方にくれるスタートになってしまったが、
一緒に回った年配の女性が、さりげなく麻衣子に付いて、アドバイスをしてくれたり、
他のメンバーも「気にしないで、リラックスね〜」と声をかけてくれた。
女性ばかりのサークルで回ったときは、同組のほかの人たちが気になって仕方なかったが
この中では麻衣子が一番へただったので、自分のことだけに集中していればいいので
その点では楽だった。
「そっか、上手な人と回ると楽だってカオリさんが言ってたけど、そういうことだったんだ」
ラウンド後はレストランでお茶を飲みながら打ち上げとなった。
そこでもハルは中心だった。
「今度、ちゃんとコンペやろうよ」
「いいね。どこにしようか」
「そうだなぁ・・・・○○○か、×××か・・・・」
「ニアピン、ドラコン、新ぺリか他にもおもしろいことやろうよ」
コースの名前がいくつか挙がる。
コンペのルールなど麻衣子はあまり詳しくないので黙っていた。
「マイさんは普段どこのコースに一番良くいくんですか?」
急に質問が投げかけられた。
「ええと・・・主人が○○○のメンバーなのでそこにいくことが多いかな・・・」
「ええっ、あそこいいところじゃないですかっ!オレも行ってみたいなぁ」
ハルの目が輝いていた。
麻衣子は心の中で「余計なことを言ってしまった」と後悔した。
麻衣子は女性限定のサークルに入ったことは夫に告げていたが、男性混合のサークルの話は
一切していなかった。
知らない男性とゴルフをするということを告げることはためらわれたからだ。
「ハルさん、あそこって高級なところだから、だめだよ、国産のあんなボロい車でいっちゃ」
他の男性がからかった。
「いいよいいよ、オレ、ベンツ買うから」とハルが笑いながら言う。
周りがどっとはじけるように笑った。
そういえば、今日は平日。
ハルといい、他の男性たちも一体どんな仕事をしているのだろう?
そんな疑問が麻衣子の心の中で湧き上がった。
サラリーマン?自営業?
ハルは月に6〜8回くらいゴルフにいっているようだ。土日を含めてにしても
平日に自由にゴルフできるということは会社勤めじゃないのだろうか。
その疑問は次のラウンドのときに解明した。




