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14−恋愛ゲームの始まり

結婚しているもの同士が付き合うーその定義はなんだろう?

考えてもそこにはいくつもの矛盾がある。結婚という成就がない。配偶者を裏切っている。

所詮、背徳の恋愛ごっこ。好きという感情があっても、お互いに絶対に踏み込めない領域が

ある上っ面だけの付き合い。

ゲームに徹するしかない、はっきりと自覚してはいないけれど、麻衣子の心の中でハルに対してあなどる感情があった。


どうせ、そうは言っても遊びなんだ・・・・


ハルはそれから毎朝メールを送ってきた。「おはよう」という挨拶から始まって

一通りの近況報告。そして今日は何をしてるの?お茶くらい飲める?ランチはどう?

いつ飲みにいこうか?

麻衣子のスケジュールすべてを把握したいのか、執拗に求めてくる。


だが麻衣子がやんわりと誘いを断ると必ず「無理言ってごめんな。少しでもマイに会いたかったからなんだ」とくすぐるような返答を返す。


誘いを承諾すると「うぃ〜っす!じゃあ、飛んでいくよ!早く逢いたい」と返す。


一日に何度もメールが交わされ、その文面には甘い言葉が並ぶ。


「ずっとマイのことばかり考えてる。声が聞きたい」


「好きで好きでたまらないよ」


「ちょっとの時間でもマイの可愛い顔がみたいよぉ〜」


そんなメールを受け取ってうれしくないはずがない。

こんな風に臆面もなく愛の言葉を羅列する男性ははじめてだった。


ハルは顔を合わせているときも、同じように愛情を表現した。


「オレ、こんなに入れ込んだことないよ。実は今まで結婚してから付き合った女は二人いるんだ。でもこれほどしょっちゅう会ったこともないし、普段は連絡なんか全然しなかった。でもマイにはすぐ逢いたくなるんだよな」


「前の彼女たちとはなんで付き合うようになったの?」


「オレの結婚ってできちゃった婚なんだ。22のときに彼女に子供ができて、卒業と同時に結婚したんだ。それから二人目の子供を生んでからだけど、女性って母性本能が強くなるのか、セックスに嫌悪感を持ったみたいで、拒否されたんだ。それでなんとなく・・・・」


「あっ、でも夫婦仲が悪いわけじゃないよ」弁解するように付け足した。


「前の彼女とはいつ別れたの?」


「もう1年前かな。相手は独身で、どうも彼氏がいたみたいで二股かけられてたんだ。それで向こうが結婚することになって別れた」


「悲しかった?」


「いや。良かったって思った。オレは離婚する気はないって言ってたから、割り切った関係だった。別れてからは一度も会ってない。もう1年もたつし、そろそろ誰か好きな人欲しいなぁって思ってた。でも誰でもって訳にはいかないし、サークルなんかバカにしてたけど、マイを初めて見たとき、おって思ったよ。サークルも悪くないなって。一目惚れなんだ」


「一目惚れ・・・」


「そうだよ。サービスエリアで初めて会ったろう?一目みて、タイプだなと思ったよ。

オレの好みにストライクだった。それからなんとか仲良くなれないかなぁってずっと思ってたから、お茶に誘って、きてくれたときは舞い上がっちゃったよ」


その言葉に「うれしい」と素直に反応できない自分がいた。

いやな気持ちはないけれど、あまりに明らさまに気持ちをさらけ出すハルを目の当たりにすると、戸惑いの方が大きい。


「マイはどうだった?オレを見てどう思った?」


「ん・・・・特になんとも」


「ちぇっ、そっかあ・・・でもいいんだ!これからもっとマイがオレのこと好きになるようにするから」


本当はハルと初めて出会ったとき、この人がハルだったらいいなぁと思ったことを覚えていた。しかしそれをハルに言うと、自分も一目ぼれだったと告白するようで、それはなんだかくやしい気持ちがしたからだ。まだ付き合いは始まったばかり。恋愛ゲームだと言い聞かせていた麻衣子はハルの気持ちを手探りで模索していた。


ハルとはほんの1時間程度でも毎日のように顔を会わせるものの、それは月曜から金曜まで。週末はお互いの家族と過ごす日々、そしてその間は1度はメールのやりとりをするだけと

決めたわけでもないのに暗黙の了解があった。


しかし週末以外のハルとの付き合いは、ほとんど普通の恋人同士のようなものだった。


「ねぇ、メールチェックとか入らないの?大丈夫?」と聞いたことがある。


「大丈夫だよ。仕事がら携帯メールや電話はしょっちゅうだし、家で携帯なんかその辺に

置いてるけど、見られたことないよ」


「ホント?」


「それは大丈夫。そういうことはしないな。マイの方は?」


「うちも大丈夫。人の携帯なんか見ないよ。それに携帯の機種が違うから、使えないんじゃないかな。あの人メカオンチだから」


ハルはそれを聞くと夫のことを聞いてきた。仕事、体格、出身地、兄弟・・・・

あまり気が進まない話ではあったが聞かれるままに答えていった。出会いは友達の紹介だったこと。結婚して7年になること。するとハルが何気に聞いてきた。


「子供は?つくらないの?」


「子供ねぇ・・・うちはセックスレスだから」


「レスっていったって全然ないわけじゃないだろう?」


「ううん、うちは全くないの。それも結婚して2年目からそうなったんだ」


ハルは驚いたように目を開いた。










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