プロローグ
私は幸せになりたい。
私の幸せは、彼といること。彼は私の愛し、愛してくれる人。彼といるだけで、私の心は満たされる。私の幸せは満ちる。
今日も、彼は仕事へ出掛けていった。私が作った朝ごはんを食べて。今日のメニューは、食パンに、目玉焼き、コーヒー。彼は、食パンに、バターを目一杯塗って、目玉焼きをのせ、それを口いっぱいに頬張った。彼は、目玉焼きが落ちないように苦戦しながら、もごもごと週末のデートの予定を楽しそうに話す。コーヒーのカップを傾けると、彼は楽しげな顔から、苦い顔を変わった。どうやら、私が、砂糖を入れ忘れたみたいだ。渋々、二三個角砂糖を入れた彼はコーヒーの一気に飲み干し、残った食パンを飲み込んで、玄関に向かった。
私は、仕事へ向かう彼を見送るために、後から彼に着いていった。彼の広く、頼もしい背中は飛び込みたくなるほどで、玄関への向かう間、それを眺めて、少し惚けてしまった。今日の帰宅時間を尋ねると、遅くなるということを伝えられた。少し落ち込んだ顔していると、察してくれたのか、頭を撫でながら、出来るだけ早く帰るからと慰めてくれた。
彼が仕事に出て行った後、彼がさっきまで座っていた椅子に座ってみた。まだ暖かい。自分の行動に呆れながら、私は食パンに口をつけた。
「おいしい…」
これが私の幸せなんだろう。ささやかだけれど、この日常を噛み締める。彼との日常を、幸せを。私は心をいっぱいにして、頬張った。
明日も、明後日も、私と彼が幸せでありますように、私はそう願っている。