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第5話 ギャル 強制、決定

「……起きなさい」


声。


「……は?」


めいは目を開ける。


寒さで体が重い。


「無理なんだけど」


「立ちなさい」


扉の前。


見たことのない女が立っている。


「……誰」


「参りましょう」


答えない。


「いや、どこ」


「お目通りにございます」


「は?」


意味が分からない。


「来ていただきます」


有無を言わせない。


「……だる」


めいは立ち上がる。


体が重い。


――廊下。


長い。


静か。


視線が集まる。


「……なにこれ」


「前をお向きください」


「無理でしょ」


「不要にございます」


ズレてる。


全部。


やがて。


静まり返った一角。


空気が違う。


「こちらに」


襖の前で止まる。


「失礼いたします」


す、と開く。


中。


広い部屋。


そして――


ひとり。


座っている。


何もしていない。


ただ、それだけで。


空気が重い。


「……は?」


「御園様にございます」


小さく告げられる。


「……みその?」


分からない。


でも。


偉いのは分かる。


「頭を」


「無理」


即答。


空気が止まる。


「……よい」


御園の声。


静かに。


「そのままでよい」


めいを見る。


逃げ場がない。


「……あなた」


低く。


「何者です」


「いやそれこっちなんだけど」


即答。


「なんでここいんのか分かんないし」


沈黙。


「……存じぬか」


「知らない」


御園はわずかに目を細める。


「……異なる者」


ぽつりと。


「は?」


「ここは」


静かに。


「定めにて成る場」


「乱れは許されぬ」


空気が締まる。


「……で?」


めいは言う。


「だからなに」


わずかな間。


御園は、静かに口を開く。


「……わたくしは」


一拍。


「この場を預かる者」


「お局にございます」


空気が変わる。


周りの気配が、一段下がる。


それだけで分かる。


この場の、上。


「……は?」


「おつぼね?」


意味は分からない。


でも。


軽く扱えない何かだけは伝わる。


御園は、それ以上語らない。


沈黙。


重い。


「従いなさい」


短く。


それだけ。


「……は?」


めいは顔をしかめる。


「いや意味わかんないんだけど」


一歩、前に出る。


周りがざわつく。


「なんでいきなりさ」


「知らん場所連れてこられて」


「ルール守れって言われて」


「はい分かりましたってなるわけなくない?」


止まらない。


「てか普通に無理でしょ」


「こっちの都合とかゼロじゃん」


空気が凍る。


それでも。


めいは目を逸らさない。


「帰れるなら帰りたいし」


「帰れないなら帰れないで、説明とかなくない?」


まっすぐに見る。


「なんなのここ」


沈黙。


重い。


だが――


御園は、動かない。


「置けぬ」


ただ一言。


「……は?」


「従わぬ者は、置けぬ」


静かに。


「食も、寝所も、与えぬ」


「この場にて、生きられぬ」


言い切る。


それで、終わり。


議論じゃない。


決定。


沈黙。


めいの言葉が、止まる。


視線が刺さる。


逃げ場はない。


「……だる」


小さく、吐く。


何も言わない。


ただ、考える。


(……なにこれ)


(意味わかんないんだけど)


頭の中だけで、ぼやく。


でも。


(出れないってことはさ)


一瞬、間。


(ここにいるしかないってこと?)


嫌でも分かる。


(従わないと、無理なやつじゃん)


納得はしてない。


全然。


でも。


(……だる)


結論だけが、落ちる。


顔には出さない。


何も言わない。


ただ――


わずかに、視線を逸らした。


「……澪」


御園が呼ぶ。


「はい」


すぐに応じる。


一歩、前に出る。


それだけで分かる。


この場での立ち位置。


「教えなさい」


「かしこまりました」


――澪。


(みお、ね)


めいは心の中で呟く。


「……紬」


御園が続ける。


「……は、はい」


障子の外。


控えていた紬が入ってくる。


「共に当たれ」


紬の表情が、ほんの少し揺れる。


「……かしこまりました」


逆らえない。


「……え、あんたじゃん」


めいが言う。


紬は目を合わせる。


一瞬だけ。


困惑。


そして。


すぐに伏せる。


「……こちらへ」


小さな声。


さっきより、少しだけ弱い。


「……マジかよ」


めいはついていく。


理解はしていない。


納得もしていない。


でも。


ここで、生きるために。


動き出していた。

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