第3話:ギャル、処罰 謎
空気が、凍りついた。
「……今、なんと申した」
低く、押し殺した声。
めいは眉をひそめる。
「だから、やだって言ってんじゃん」
ざわ、と周囲が揺れる。
「控えよ!」
鋭い声が飛んだ。
次の瞬間、数人の女たちがめいの腕をつかむ。
「ちょ、なに!?」「無礼にも程がございます!」「離してって!」
ぐい、と引かれる。
「お待ちなさい」
ぴたりと動きが止まる。
お局がゆっくりと歩み寄る。
「その無礼……見過ごすわけには参りません。この者を――」
一瞬の間。
「下がらせなさい」
短く告げる。
再び、腕を引かれる。
「は?どこ行くの」
答えはない。
廊下を進む。さっきまでの視線が遠ざかっていく。
奥へ。奥へ。
空気が変わる。
「……なにここ」
ひんやりしている。音がない。
やがて足が止まった。古びた扉の前。
「中へ」
「は?」
背中を押される。
「ちょ、待って――マジ無理なんだけど」
よろけて中に入る。
すぐ後ろで――がちゃん。
重い音が響いた。
「……は?」
振り返る。閉じられた扉。
外の気配が、途切れる。
「ちょっと、これマジで――マジ無理なんだけど」
扉に近づき、叩く。
「ねえ、開けて」
返事はない。
「……ほんと無理」
もう一度叩くが、反応はない。
静かすぎる。何もない。逃げ場がない。
その現実が、じわっとくる。
壁に手をつく。冷たい。
「……はあ」
そのまま、しゃがみ込む。
沈黙。
時間が妙に長く感じる。
めいは、ぼんやりと天井を見上げた。
「……てかさ」
ぽつりと呟く。
「なんでこうなってんの」
思い出す。
さっきまで、普通に渋谷にいた。
ネオン。人混み。友達の声。
「……あのあと、なに?」
視界が歪んで。
それで――
「……終わり?」
そこから先が、ない。
「意味わかんないんだけど」
「……てかこれ、夢でしょ」
ぽつりと呟く。
「そうじゃないと無理なんだけど」
眉をしかめる。
「誰かがやったとか?」
でも、そんな感じじゃない。
気づいたら、ここにいた。
「……はあ?」
考えても分からない。
めいは目を閉じる。
沈黙。
やがて――
「……だる」
ぽつりと呟く。
ゆっくりと顔を上げる。
「……でもまあ、ずっとここってわけじゃないでしょ」
完全ではない。
でも、少しだけ開き直る。
その頃。
「……なるほど」
障子の向こう。
ひとりの影が、静かに目を細めていた。
「異質、か」
誰にも知られぬ場所で――
ひとつの興味が、生まれていた。




