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第2話:ギャル、大奥で早速やらかす

女は、しばらくめいを見つめていた。

 値踏みするような目。

「……お名は」

「めい。春宮めい」

 女はわずかに眉をひそめた。

「……聞き慣れぬ名にございます」

「は?」

「どこの家の者にございますか」

「いや、普通に東京だけど」

「とうきょう……?」

 通じていない。女の目が、さらに警戒を帯びる。

「その装い……その言葉遣い……」

 ゆっくりと、一歩距離を取る。

「ただ者ではございませんね」

「え、なにそれ失礼じゃない?」

「恐れながら――不審にございます」

「はあ?」

 普通にムカつく。

「こちらへ。詳しくお話を伺います」

「いや聞くってなに」

「来ていただきます」

 有無を言わせない口調。

「……だる」

 そう言いながらも、めいはついていった。

 

 廊下に出る。――長い。

「え、まだ歩くの?」

「……静かに願います」

「いや無理、足だるいんだけど」

 すれ違う女たちが、次々と足を止めた。

 視線が、全部めいに向く。

「……なに、ガン見されてんだけど」

「なんという装い……」「はしたない……」「肌をあのように……」

「え、悪口?」

 普通に聞こえてる。

「いやウケるんだけど」

 めいは気にせず歩く。

 

「止まりなさい」

 低い声。空気が一瞬で変わった。

 廊下の奥、ひときわ整った着物の女が立っている。周りの女たちが一斉に頭を下げた。

「……誰?」

 めいだけが、そのまま立っている。

「頭を下げなさい!」

 隣の女が小声で言う。

「なんで?」

「お局様にございます……!」

「おつぼね?」

 よく分からない。でも、偉い人っぽいのは分かる。

「……だる」

 ぼそっと呟く。

「聞こえております」

 ぴたりと視線が刺さる。

 めいは顔を上げたまま、目をそらさない。

「そのような装いで、どこから来たのです」

「え、普通に外だけど」

「外、とは」

「いやだから外は外でしょ」

 話がかみ合わない。周りがざわつく。

「口の利き方を知らぬようね」

「え、そっちもね」

 一瞬、空気が凍った。全員が息を呑む。

「……今、なんと?」

「だから、そっちも感じ悪いって言ってんの」

 めいは平然としている。隣の女が青ざめている。

「……無礼者」

 静かに、怒りがにじむ声。

「控えなさい」

 その一言で、空気が張り詰めた。

 普通なら、終わりだ。

 

「やだ」

 めいは即答した。

 

 その瞬間。

 大奥の均衡が、音を立てて崩れ始めた。

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