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家族で異世界冒険譚(ターン)!第2部 ~永井家異世界東奔西走~ 改定版  作者: 武者小路参丸


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サイドストーリー カチオの伏線 第2話

みんなでワイワイ囲む食卓。分からない言語が混じりながらも、現代世界でずっと1人での食事ばかりしてきたマサヒトにとっては、凄く楽しい時間を過ごしていた。


(いや~!永井家シリーズの登場人物が、生きて目の前におるってなんなん?息しとるで?しゃべっとるで!ほでもて、飯食うとるがな!しかもその飯がごっつう美味いときとる!どないなっとん!)


相変わらず精神的におかしなテンションが収まらないマサヒト。


しばらくして、楽しい団欒も落ち着いた頃に、自分の立場からすれば、小説作品の主人公であるミサオが、マサヒトに声をかけてくる。


「マサヒト・・・って言ったよな?

また、俺のガキの頃のマブダチと名前一緒とは、こんな所まで課長さんの狙いか?・・・ま、それはいいとして。どうだ?この立ち上げ途中の村の様子見た感想は?このあたりはまだ、普通の人間たちにとっちゃあ、特に目新しいもんも無い場所だから、どう感じたかは俺もわからんが。そうさなぁ。・・・俺の見立てによると、お前さんは、随分と遠い遠いとこから来た様だし。せっかくだから、ひと汗流すか?多分お前さんには、面白いもんだろうと思えるから。」


(え?いきなり風呂?昼から?露天かなんかまであるんか?)


ミサオのいきなりの誘いに戸惑うマサヒト。


「じゃあ、午後からも鍛錬の時間に費やすか!それじゃ、男連中は落ち着いたら誰か声かけて、客人のマサヒトも一緒に連れて来いや。俺は、先に行って準備しとくわ。」


笑顔でダイニングに居る皆に声をかけ、ミサオは席を離れる。


(・・・今の聞き間違いじゃあ無いよな?・・・鍛錬って、風呂とは違うやん?ひと汗かくって、サウナみたいなもんとか想像してた俺・・・別の意味で詰んだんちゃう?)


言葉に出すのはこらえたものの、これから迎えるであろう展開を想像し、マサヒトの顔はヒクヒクと引きつっていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「・・・お名前、マサヒトさんで間違い無いですよね?それでは改めまして!私がこの永井家の長男ムサシと申します。この左隣に並んだ順に、次男のコジロー、三男のサンシロー。端っこに居るのが四男坊のコジマル・・・まぁみんなは愛称のジョロで呼んでます。本人もそれの方が喜ぶようなんで、あなたも良ければジョロって呼んであげて下さい。


で、私の右隣が母のクミコです。そして、先ほど声をかけて出ていったのが、この家の大黒柱である、永井家の父、ミサオとなります。」


マサヒトが現代世界で読んだ、小説投稿サイトの作品。その作品である永井家異世界シリーズの登場人物のキャラそのままに、丁寧に家族の紹介をするムサシ。


「は、はあ。・・・ご丁寧にどうも。あ、自分、いえわたしは、マサヒト、マサヒト・ヤマザキと申します。」


(いや、知っとるで!こっちの世界じゃ、名前が先に来るんだって!ワシ、ものごっつぅ知っとるで!物語でさんざ、見たさけな!)


既に心の中は、狂喜乱舞しているマサヒト。言葉遣いも乱れに乱れまくっているが、心の声なので、周囲には何もバレてはいない。


そこに、いつの間にか空手の道着のような服を着替えたジョロが現れる。さっきまで黒服身に着けていた人達も、同じ様な道着に着替え、ジョロに続いてダイニングに入って来る。


「準備出来たよ!お兄ちゃん・・・えと、マサヒトって名前なら、マー兄ちゃんって呼ぶねっ!・・・マー兄ちゃんも、お着替えして!パピが準備して、待ってるよ!」


シッポをピコピコしながら、マサヒトを急かすジョロ。


(あかん!ジョロくんの道着姿も、ものごっつぅ可愛いやんけ!しかも俺の事マー兄ちゃんて!これって、推しの声優さんに自分の名前呼んでもらった感じ?何、この多幸感!・・・いやちょっと待て?やっぱり俺も鍛えられる前提で話が動いてるやん?風呂じゃなかったの?・・・この人たち、俺の知ってる作品世界のキャラのまんまなら、優しいんだろうけどもさ。俺みたいな現代世界でさっきまで暮らしてた一般市民からしてみたら・・・化け物レベルだよな?やっぱり俺、詰んだ?)


心の中の滂沱ぼうだの涙を気付かれる事も無く、マサヒトはジョロに手を取られて案内されながら、予想もしなかった異世界での道場体験入門の扉を開く事となる。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


(・・・異世界来て、現代世界で言う道着を着るって、これ何プレイ?これ、旅行で体験する事とは違う様な気がしてるのは、俺だけ?)


困惑しながらも、ジョロに見守られながら、永井家の新しい自宅に併設されている道場の隅で、粛々と着替えをするマサヒト。


道場内には、永井家ブラザーズの4人が、既に着替えを済ませて正座をしている。


その他に数名の、マサヒトの目からは大人に見える獣人達や、人間の子供たちも数名ほど、黒スーツを先程まで着ていた大人たちと交互に、道場の中へと一礼しながら入って来る。着替えの終わった者から順に、礼儀正しく同じ方向を向いて正座をしてゆく。


皆が向いている方向である、道場の上座には、皆に相対する形で、ミサオが正座で黙想をしている。


着替えの終わったマサヒトが、気を使って最後列に正座をすると、わかっていたかの様に、ミサオが静かに黙想をやめてその瞳を開く。


「さて。・・・皆準備出来たな。それでは午後の鍛錬を行う。・・・お願いします!」


「お願いします!!」


互いに深々と一礼し、皆がその場で立ち上がる。まだ出来たての道場には、マサヒトにとっても馴染みのある、青畳の匂いがほのかに立ち込めている。


(これって武道やん?異世界なのに、日本の和の心全開やん!木造でしっかり雰囲気あるし、壁には木刀やら槍やら立てかけてあるし、建物だけなら、現代世界って言われてもおかしくないやんけ!)


表情は平静を保ちながらも、内心はおかしなテンションのマサヒト。正直、鍛錬の前にも関わらず、マサヒトの精神は既に疲労を感じている。


「・・・それじゃあ、まずは各自の得意なやつから!・・・隣の者と組手形式。それが済んだら、皆で外に移動して、1人ずつの修行の練度、俺がこの目で確認するからな!いつも言ってる事だが、ここではデカいのはダメだぞ!


それと、マサヒトッ!お前さんはこっちに来い!お前さんの相手は俺だ!ほら、早く隣に来いっ。巻き込まれると痛い目見るぞ?・・・よしっ。それでは、始め!」


(いや、呼ばれたからミサオさんの隣には来たけれど、いきなり始めって、形の稽古とかは無いの?組手って肉弾戦?でもって、俺の相手が物語での設定上は、この世界での最高戦力レベルの化け物だよな?・・・もう死ぬ。確定。ワシ絶対死ぬ!)


ビビり倒した表情で、急いで隣に走ってきたマサヒトに、ミサオがマサヒトの想像よりも、優しく声を掛ける。


「まぁ、そんな緊張すんな。だが、確かにいきなりじゃ焦るわな?見ての通り、ウチでやってる鍛錬は、お前さんが知ってるであろう武道って奴の、こっちの世界にカスタマイズした仕様だし、お前さんの想像とは少し毛色が違うだろうから、取り合えす俺の横で、少し見学だな。・・・ちなみにこれも稽古の内。見取り稽古って言ってな。まぁ力抜いて、足崩して座っとけ!」


あぐらをかいて座るミサオの横に、施されるままマサヒトも並んで座る。


(毛色違うって一体・・・あ!魔法!・・・火やら、水やらを拳に纏わせとるやん!視認出来るのがすげぇっ!・・・あっちの人達は木刀や長い棒に、なんかモヤモヤッとした・・・あ!あれが魔力ってやつ?小説の中でミサオさんが使ってた無属性とか何とかの!うわぁ、リアルでこんなの見てんの、世界中で俺だけだぜっ!・・・いや、こっちの世界的には当たり前の事なんだから、俺の方が希少価値あんのか?いや、そもそも永井家の最初に来た人達も、現代世界から来てる訳で・・・あ、頭の中ショートしそう。考えるのやめやめっ!あれ?ジョロくんは魔法使わない?・・・そうか!道場の中って、土とか無いもんな!魔力使わないで、素手で組手するのね。よく見れば、他にもちらほら居るわ。ここだけは普通の道場みたいな雰囲気に見える。でも、空手の要素も入ってれば、柔道みたいに投げ技もあるなぁ。別に武道なんてそこまで詳しく無いけど、多分色々混ざってるのかな?・・・総合格闘技と言うのか、総合武術って言うのかその辺は門外漢だから難しいけど、あのジョロくんみたいな子でも必死な顔して動いてる。・・・それだけ、こっちの世界で生きていくって厳しい所あるのかな。)


色々思う所があるマサヒトに、ミサオが声を掛ける。


「・・・この道場の作りは特殊でな。建物の内部に、防御の魔法を付与して・・・お前さんの居た世界流に言い換えれば、特殊なコーティングをしててな?この位の魔法なら、畳や壁が、焦げたり穴が空いたりしない様にしてあるんだ。だが、人によっては、魔法の適正や魔法操作に対する練度とか、それこそ得手不得手があるから、道場内ではそこまで魔力を使わない形での組手を行ってるんだ。んで、毎回みんなには気を抜かない様にわざわざ釘を差した上で、でかい魔法や外でしか使えない魔法の訓練も考えて、そっちは外でやるんだ。まぁ今の時間はウォームアップだな。」


ミサオが丁寧に、目の前の状況を説明する。


「そうだマサヒト!お前さんって魔法は?」


「えっ!魔法って!いや、あの・・・。」


(どゆこと?使える種類?威力?現代世界で生まれ育った俺、魔法なんて一度も使ってこなかったし!・・・この人、俺の事をどこまで理解してるんだ?」


「その様子じゃ、まだっぽいな。」


困惑して上手く答えられないマサヒトに、苦笑して言うミサオ。


「せっかくこっちに来たんだから、ここで出来るようになんなきゃ、もったいねぇぞ?・・・俺も我流だけど、わかる範囲で手ほどき位、してやんよ。」


不安そうな顔をしているマサヒトに、ミサオはこの世界での、魔法発動の指南を申し出る。


(は?え?俺が魔法?出来る前提で話が進むのは何故?)


「・・・じゃあ、あぐらをかいたまま座っでていい。んで、背中は真っ直ぐ。猫背になりがちなんだよな、現代人って。まずはそれを意識。頭の天辺から背骨を通して、鉄の棒が1本打ち込まれたイメージって言えばわかりやすいのか?・・・まずはそこからだ。さ、目をつぶって、それだけに意識を集中してみ?」


動揺しているマサヒトの心を知ってか知らずか、ミサオがゆっくりと話を進める。


臍下三寸へそしたさんずん・・・へそから、横にした指2本から3本下くらいの場所。いわゆる丹田たんでんって言われてるとこだな。自分の尻の穴締めて、腹の力入れてみな。・・・一番、力が集まる場所わかるだろ?そこに意識も集中してみろ。温かい感じがしてきたら、それを覚えておけよ。」


「は、はい・・・。」


ミサオの言葉に対して、素直に従うマサヒト。


丹田たんでん?・・・。あ、意識すると何かあったかい・・・様な・・・気がする様な・・・?)


少し時間はかかったが、ミサオにはマサヒトが、何かをつかんだ様に感じられた。


「うん。初めてにしちゃあいい感じじゃねぇかな。それじゃ、今感じているその温かさを、今度は右手に移動させるイメージをするんだ。丹田から胸まで動かして、胸から骨を伝って肩。肩から右肘。右肘から右手首。手首から手のひらの順にだ。・・・最初から上手く行かなくてもいい。とにかく、意識だけは途切れさせず、集中して、ゆっくりでいいからやってみな。」


ミサオの言葉に従い、マサヒトは眉間に皺を寄せながら、温かさを感じる何かを意識して、ゆっくりと順番に右手へと移動させる努力をする。


「・・・ん?ちゃんと移動出来てるみてぇじゃねぇか!それなら、左手に同じ様にもやってみ?もう一度丹田に意識集めてから、順番に、ゆっくりと。焦らなくていいからな。」


ミサオのアドバイスを聞きながら、マサヒトは同様に、左手にも、感じた温かさを意識して流す様に動かす。


「よしっ!取り敢えず1回リラックスしな。・・・それにしても、想定してたより上達が早いな?これって、素質の問題か?それとも違う世界から来た人間は全て・・・まぁその辺はいずれ、課長さんに確認すれば良い事だな。さて、少しは息整ったかマサヒト?それじゃあ、さっきみたいに右手にあったかいやつを動かして集めたら、俺の手の平に向かって、右拳を打ち込んで来てみな。」


「えっ?いや、そんな、急に・・・。」


「遠慮すんな!いいから余計な事考えずに、来い。そこまでヤワな作りはしてねぇよ!」


ミサオが笑顔で右の手の平を出すと、マサヒトは恐る恐るではあるが、言われた通りに右拳を突き出した。


「おっ!・・・やっぱ少ぅし、出て来たな。」


「えっ?出てきた?何がですか?」


「・・・魔力だよ、魔力。拳にちょっとだけ、乗った。」


「魔力・・・俺に?」


驚くマサヒトをよそに、ミサオがその場で立ち上がる。


「じゃ、次は蹴りの方だな。」


「えぇっ!お、俺、喧嘩もほとんどした事無いですよっ!」


「今度は、さっきの感じた温かさを、もう一度丹田に集めて、それを右のつま先に流して集約させる感じだ。そこまで出来たら体重を、最初は軸足になる左にかけておいて、蹴り込む・・・インパクトの瞬間に、当てる右足に体重を乗せるイメージ・・・っつっても難しいか。とにかく、お前さんは右足をスッと後に引いて、身体の右半分が後ろに・・・そうそう。それが右半身みぎはんみ。両腕をあげて、顔の少し前くらいに両手の平が、くる感じ。肘も、肩も力は入れずに。フワッとな。うん。右のつま先にあったかいのが集まったと自分で感じたら、右足を俺に、そのまま蹴り込んで来い。今の距離だと届かないから、届く様にする為には、下げた右側の身体を、今の左半身ひだりはんしんよりも意識して前に出す事。その時に右のつま先に、体重も乗っけるんだ。一遍には難しいのはわかるが、ものは試しだ。やってみな?」


動揺するマサヒトを相手にせず、ミサオが身体の右半分を後ろに下げて、マサヒトの蹴りを受ける体勢に構える。頭の中で、ミサオに言われた事が整理出来ぬまま、とにかく魔力を右足のつま先へと集中するイメージだけ保ち、マサヒトはミサオに、不格好ながらも、いわゆる前蹴りを右足で蹴り込む。


(ボシュ!)


「ほらな。今、お前さんの魔力、さっきと違って、蹴った瞬間に俺の方に移動して来やがった。拳の時はまとっただけだったのに、今度は移動した。これって、磨けば立派な魔法による攻撃だからな?」


「うおっ!え?魔法の威力上がってるって本当ですか?すげぇっ!」


自分でも驚く程の魔力が乗った蹴りに、目を丸くするマサヒト。


「うん。成長するってこたぁ、幾つになっても嬉しいこった!・・・さて!みんなも身体あったまったろう。んじゃ、外に移動すんべぇか。」


ミサオの一言で、道場内の面々は次々と外へ移動を始める。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


屋外に移動した、ミサオを始めとする道場の面々。


それぞれが自主的に、あらかじめ用意されていた的に向かって、炎や水の弾を放ったり、先程まで場所の問題で魔法を使えなかった人間が、魔法も取り入れた組手を始めたりと、賑やかに練習する中で。


「こっから俺は、みんなの動きチェックすっから、後はウチのムサシに任せるわ。お~い、ムッちょん!・・・マサヒトの魔法攻撃、魔力の練り方、ちょっくら教えてやってくれ!」


「了解で〜すっ!」


ミサオの呼び掛けで、ムサシが素早くその場に駆け寄ってくる。


「先程道場でチラッとお見受けした所、マサヒトさんにアドバイスするとしたら、まずはスムーズに魔力を流せる様にする事が第一ですね。それにはまず、慣れる事。何度も何度も同じ事を行う。手足に魔力が移動する事への、導線の意識をしてみて下さい。それが出来たら、今度は魔力を集める場所へ、流れを、移動の動線を意識しない様に、ピンポイントでイメージして魔力の集約。段階的にいきましょうね!」


道場内では複数を相手に組手を行なっていた筈のムサシが、どこで見ていたのか、マサヒトに対して的確な指導をする。


(導線・・・導線って・・・まぁ、さっきのあったかいのを、レールとかを擬似的にイメージして、魔力って電車を動かす感じとかにすれば良いのかな?)


さっきまでゆっくりと移動していた魔力の塊が、イメージを明確にとらえて想像しただけで、明らかにスムーズに移動していくのを、マサヒトは早くも感じている。


「思ったよりも進み方が早いですね?・・・それならステップアップしてみますか!マサヒトさん。まずはその場で、ジャンプしてみて下さい。せ~の!」


(ピョン。)


ムサシの誘導で思わず飛び跳ねるマサヒトだったが、もちろん何も不思議な事は起きず、高さにして、せいぜい自らのすねから膝にかけてくらいまでしか飛べていない。



「それが普通の人間の、意識してない時のジャンプ力ですよね。・・・今度は、両足の裏に魔力を集めるイメージで!さぁ集中!・・・いいですか?3、2、1!飛んでっ!」

ムサシの号令に合わせてマサヒトがジャンプする。


「って!なんやこれ!あり得へんこの高さっ!あかんて!」


内心の驚愕が漏れ出てしまったその跳躍は、マサヒトの予想を遥か超えて、優に3メートル以上の高さへと自らを運んでいる。


「身体強化の初歩。随分とペースが早いと思われますが・・・一応、クリアですかね?」


ムサシが慌てるマサヒトを見て微笑む。


新たな力への一歩。


マサヒトの、異世界における魔力操作へのチャレンジは、未だに終わらない。


「はぁ、はぁ、焦った~っ!魔力すげえ!」


素直に感嘆の声をあげるマサヒト。


「ん?この世界でここまで魔力や魔法に驚きを示すなんて一体・・・まぁ、その辺はパピが何か知ってるんでしょうから、置いておきますか!・・・さて、今のはあくまで魔力を用いた身体強化魔法の基礎篇ですからね。ま、うちのパピは、その基礎が突き抜けてる所あるんですが、あれをマサヒトさんに真似させる訳にはいかないですし。・・・ならば、考え方を変えて、魔力の変換・・・まではいけるかな?マサヒトさん!向こうに立っている、的の方へ行きましょう!」


マサヒトは言われるがまま、ムサシの後ろについて的のある場所へと歩く。


(もしかして。・・・俺も、火っ!とか、水っ!とか出来るとか?そしたら俺も、ファンタジー要素全開やん!)


ルンルン気分で、ムサシに指示された所定の位置にマサヒトが立つ。 


「私の魔法はちょっと特殊だから、マサヒトさんの右隣の子。あの子の動き、ちょっと観察して見て下さい。」


(そうだよな。・・・いきなりコジョくんみたいにバン!とか出来る訳は無いよな。ムッちょん・・・ムサシくんみたいに、刀と重力っちゅうのも、憧れるけど、小説だけ見たら、ちゃんとそれなりに鍛錬してる描写あったもんな・・・。てか、あの作品って、そこまでチート全開な物語じゃ無かったな。改めて思い出すと。)


ムサシに施されて見学していた隣の子供は、人間の女の子だった。幼いながらも魔力はそこそこある様で、右の手の平からコンスタントに水の玉を発射し、それなりに的にも当てている。


「・・・あの子は水の魔法に、才能というか適性があった様で、とてもきれいな流れで魔力の変換・生成がおこなえています。」


言うと同時に、ムサシがマサヒトの右腕を、自らの両手で掴む。


「最初は、私が補助しますから、先程の様に右手に魔力を集めて下さい。ゆっくり、焦らないで。」


自らの父と似たような優しい笑顔で、ムサシがマサヒトを導く。


(えと、丹田!へその少し下のあったかいの感じて、それを右手の平に集めるイメージ・・・)


「来てます。・・・来てますよ!そのまま・・・もっと集めて!」 


(もっと?・・・あれ?何か、手の平が熱うなってきた・・・。)


先程よりも、うっすらとぼやけて感じられていた魔力というものが、ムサシの言う補助のおかげなのか、より明確に、質量の様な物がマサヒトには感じられる様になってきている。


「その魔力を、手の平の真ん中に集約。収束。フワッとした魔力を手の平の上に・・・小さく、硬く・・・凝縮、圧縮していくイメージで・・・。」


(うわっ!結構熱い!)


熱が高まった様に感じられる手の平に、思わずマサヒトが身体をビクッと震わせる。


「ダメ!心を乱さないで!そのまま、もう少し・・・今度は右手の肘をそのまま後ろに引いて・・・突き出せっ!」


言葉を発して、横へと離れるムサシ。


「はっ!」


無意識に右手の平を、前へと突き出すマサヒト。


(パキン!カランカラン・・・)


マサヒトからは少し離れた位置にあった、木で作られていた的が、何かの衝撃で真っ二つに割れて、地面へと落ちていた。


「・・・何か・・出た。」


「・・・見た限り、特に属性付与はありませんでしたが・・・素直な無色の魔力の玉。言うなれば、魔力弾といった所ですかね?圧縮された高密度の魔力を、そのまま撃ち出した攻撃。それにしても、初回で的に当てて割る威力。マサヒトさんは中々筋がいいと思われますが。・・・何か特別な秘密でも隠してません?」


笑顔でマサヒトに頷くムサシ。


「い、いや〜、秘密なんて大層なもんは・・・。そ、それより!こっから、火とか、水とかってやつは・・・使える様になったりします?」


マサヒトが期待を込めた目でムサシに訴える。


「そ・・・うですね。属性を見極めるには、もっと魔力を練る事をスムーズにおこなえる様にならなければいけませんが、それには日数と時間かかりますよ?」


「それはどの位の目安で?」


「人によりますが、まぁ最低1週間は見ないとダメでしょうね。マサヒトさんさえ良ければ教えますが・・・。」


(あかんか〜っ!俺、あのメールによると、一泊二日しかこの世界におられへん・・・。)


「・・・教えて欲しい気持ちは山々なんですが、予定もありますので、またの時間ある時に教えて下さい・・・。」


せっかくの申し出を断らざるを得ず、断腸の思いで告げるマサヒト。


「・・・わかりました。その時は、適性見て、属性魔法が発動出来る様にしましょうね。じゃあもう少し、さっきの反復練習をしましょうか?」


(あれ?終わるムーブだと思ったのに、ムサシくんって、笑顔だけど何気にスパルタ?)


この後ジョロの声がかかるまで、ムサシにみっちりしごかれた、マサヒトであった。












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