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家族で異世界冒険譚(ターン)!第2部 ~永井家異世界東奔西走~ 改定版  作者: 武者小路参丸


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第38話 ピリオド、そしてプロローグ

「・・・それじゃこの男、預かってくわ。」


先だって贈っていた、現代世界から取り寄せ、ミサオのチューニングで、異世界魔石燃料仕様に変えられたオフロードバイクにまたがったセルジオが、その場に居た皆に声を掛ける。


クミコに回復魔法を付与され、セルジオの戦いの傷は癒えているが、何やら離れ難そうな表情を見せている。


セルジオのまたがる、オフロードバイクの後には、白の軽トラが停まっている。


運転席には永井一家の舎弟頭であるグレンが座り、荷台にはもう1人の舎弟頭のトニーが、縛り上げたきらびやかな衣装の男と乗っている。


「俺がポチッとすれば・・・転移かければ良くね?」


ミサオがセルジオに確認する。


「いくら簡単に戻れるとはいえ今のお前が、少しでもこの場を離れるのはマズイだろうが。それに、身柄を押さえた2000を超える他の聖騎士たちを、カチオ教国の方へ全て送り返しとるんじゃろうが!そのポチッとやった転移を、何度も何度もやって。


・・・お前さんもクミコの魔法で回復したとはいえ、心の疲れは取れとらん筈じゃ。なぁに。戻る道中も、馬車より断然早く進めるし、この男に取っては引き回しの刑と変わらんから丁度良い。此奴は、ワシが責任持ってトリニダスへと護送する。まぁその後は王国の然るべき上層部・・・父上たちに判断は任せるがな。・・・面倒くさいのは嫌いだが、闇憑きの根源に関する知り得る情報や、例のコルテオにおけるスタンピードの企みやらを聞き出すのであれば、そうも言ってられん。お前さんはそこまで、このイグナシアにおいて手広く動いていなかったなんだが、一応、お前も知らない他の国との折衝なども出てくるからのぅ。冒険者ギルドとしても身柄を引き渡して知らぬ存ぜぬは通用せんしな?」


重々しい口調で周りを見回しながら、セルジオが滔々(とうとう)と理由を説明する。



セルジオたちが出発する目の前には、あちこち破壊されたグレースの森。


振り返れば、化け物に破壊された、ヒノモト村の外壁や、村内のいくつかの建物。


あの戦いからまだ日も経っていない。今も村人総出で絶賛復旧作業中である。


最後にミサオと戦い、倒された元エドワルドは、その遺体を抑える前に、黒い霧となって雲散霧消してしまっていた。


言葉を終えて、周囲をしみじみと見回している男、冒険者ギルド総責任者、グランド・マスター、セルジオ・トリニダス。


剣聖の二つ名を持ってる上に、末席とは言え、トリニダス王国の次の王位継承権を持つ王子。


いささかとうが立つセルジオを見て、ミサオが改めて考える。


まだ謁見などした事の無いトリニダス王とは、どれだけ子沢山で長命なのだろうと。


思考が一瞬横道にそれたが、ミサオは重くなったその場の雰囲気を和らげるかの様に、またいつもの軽口を叩く。


「グラマス・・・本当は、そのバイクでかっ飛ばしたいだけだべ?」


「・・・それも無いとは言わんがな?このカチオのバカ者を王都まで引き連れて戻って行けば、道中で様々な人の目に触れる。そうすれば、噂も回る。これは示威行為というやつだ。」


ミサオのツッコミに乗ってくるかと思われたが、そこはセルジオも真面目に答える。



(バウン!バウ~バウ~パンパンパンバババババ・・・。)


セルジオが左足で、バイクの横のキックペダルを踏み込んで、エンジンをかける。


「・・・本心は、帰りたくないんじゃぞ?皆で復旧作業やって、終わったら酒を酌み交わす。クミコの飯も美味い。・・・何よりジョロがそばに居る!・・・やはりワシ残ろうかな?」


この地、ヒノモト村を離れる直前になって、またセルジオが悩み出す。


「はいはい、あなたには本部で仕事山盛り待ってんでしょ!組織のトップが書類仕事放り出して、テメェの国とも関係無い村の喧嘩に、個人参加なんて非常識だかんね?立場考えなよ?グラマス!・・・ありがたかったけどよ?」


最後の言葉だけは何故か小声で、ミサオは少し真顔になりながら、セルジオに苦言を呈する。


「いいじゃろうが別にっ!・・・貴様達ばっかり面白楽しい事毎日あって!ワシだって、もうちょっとぐらい、混ぜて貰ってもいいじゃろうがっ!」


スネて文句を言うセルジオ。


「・・・なあ兄弟。アレで剣聖なんだぜ?俺には単なるわがままジジィにしか見えんぞ?」


トニーが軽トラの荷台から、運転席のグレンに声をかける。


「王子やグラマスって肩書が台無しだよな?・・・ウチの兄貴・・・いや、総長も普段は単なるおちゃらけ親父だし。・・・でもよ。これで2人とも、スイッチ入ると化け物だもんな?・・・人間って本気出したらどこまで強くなれんだか。あの2人見てたら、俺達もまだまだ修行しなきゃって思うわ。・・・お?若い衆や村人たちも、わざわざ別れの挨拶か?」


答えるグレンの視線の先に見えていた、少し崩れた村の入り口の方から、わらわらと人の姿が現れる。


「おぅグラマス!やっと王都まで帰んのか?」


「・・・また一緒に飯食おう。」


「男やもめも大概にして、グラマスも所帯持ったら?そうすればフラフラとこんな村まで来ないでしょ?」


冒険者パーティー・暁の牙の、ジェイ・ドリトス・サブリナの3人が、憎まれ口混じりにセルジオの見送りへと現れる。


「うるさい小童共こわっぱども!・・・暁の!貴様達が本部に来たら説教だ説教!」


言いながらもセルジオの顔は、少し嬉しそうでもある。


「お世話かけましたグラマス。・・・いや、S級冒険者セルジオ殿。永井家はこの信義を忘れません!」


相変わらず礼儀正しく、セルジオに一礼するムサシ。


「グラマスッ!また珍しい食材でもあったら、王都から送ってなぁ。こっちも狩りたての魔物とか、山菜や果物なんかをパピ経由で届けるからさぁ。」


相変わらず呑気にコジローが声を掛ける。


「・・・また修行、付き合ってよグラマスっ!いつか追い抜いてやるからさ。・・・その剣技もね。」


負けず嫌いのサンシローが、セルジオに再会を誓う。


「・・・また来るよね、セルジオのおじちゃん?」


心底寂しげに、少しうつむいて言うジョロ。


「・・・坊主達。・・・お前達は本当に可愛げあるのう!・・・特にジョロは天使!・・・ミサオ?ワシやっぱりここに・・・。」


大事な役目を放り出して、村に残る方へと気持ちが傾きつつあるセルジオ。


「グ~ラ~マ~スッ・・・!大人が一度決めた事を放り出したら、子供達への教育に悪影響!ちゃんとした背中見せてあげないと駄目ですよね?・・・また暇作って、来ればいいじゃない。この村は、グラマスの村でもあるんだから。身内はいつでも歓迎するわよ?」


いたずらっ子の様な笑顔で、セルジオをいさめるクミコ。


「ミサオッ!・・・お前の奥方が厳しいっ!少しの甘えも許してくれん!なんとかしてくれっ!」


それでもわがままを言って、セルジオがミサオに助けを求める。


「戦場での勇姿も、今の姿見たら台無しだわグラマスッ!・・・でも、恩に着ます。道中くれぐれも気を付けて。・・・S級の同士、セルジオ・トリニダス。」


ミサオが右手を差し出す。


「・・・お疲れさん。専任S級冒険者、ミサオ・ナガイよ。・・・どうせこれからも、まだまだやらかすのじゃろ?」


ミサオの差し出した手を、セルジオがバイクの上から強く握る。


同じ戦場を駆けた男同士の、硬い握手。


「・・・まだ闇の勢力だかの方は、全貌の解明もしなきゃならんしな?・・・まあその辺りは、課長さんとも話して、おいおい詰めとくわ。」


「・・・主神と気軽に話す人間なんて、この世界広しといえどもお前ぐらいのもんだわ。やれやれと言いたい所だが、せいぜいこの先も、楽しませて貰うとしようかの。」


2人の会話が終わるのに合わせて、黒いスーツの集団が皆で一歩前に進み出て、セルジオに一礼する。


「叔父貴!お疲れ様でした!」


永井一家の若い衆が、声を揃えての言葉を発する。


「・・・ミサオ。この挨拶、落ち着かんのじゃがの?」


「・・・何度もやめろと言ってるんだが、もうそういうもんだと思って諦めてくれ。コイツらなりの感謝の気持ちで、決して悪気は無いから。」


セルジオとミサオが、互いに見つめ合ってため息をつく。


「それじゃ、皆達者でな!ほれ!弟分共!王都まで爆走じゃ!」


(バウゥ~!バウバウ~!ババババババ・・・。)


村の皆に手を振りながら、うつろな目のカチオのトップを荷台に乗せて。セルジオのバイクと軽トラが発進する。


「・・・行っちまったか。グラマスたちが着く頃狙って、先に本部で待ち構えてたら、おもろいかな?」


「パピ?そういう事するのは、せめてこっちが落ち着いてからにしてね?皆で力を合わせて、1日でも早い村の復旧、頑張りましょ?今日も美味しいご飯、女性陣で腕によりをかけて用意するから!ね?」


クミコの言葉に、村人たちから歓声があがる。


「みんなで外で食うの、移住した最初の頃以来だけどよ?あれもあれで、何気に楽しいよな?」


「姐さんの和食、なんかオフクロ思い出しちまってよ・・・家族のみんな、元気かな?」


「今日は何のスイーツ?なのかしら!太る〜っ!でもやめられない〜っ!」


楽しげに話しながら、村人たちがそれぞれ村内へと戻ってゆく。


「さて、俺も復旧作業に・・・お?」


着ている服のポケットの中で、スマホが振動している事にミサオが気付く。


「バイブか?・・・おっ、課長さんからの着信ね。ちょうど良かった。マミ!先戻ってて!課長さんから着信!」


スマホ画面の着信表示を確認して、クミコに一度声をかけて、ミサオが電話に出る。


「もしもし?お疲れ様です、ミサオです。」


「はい、お疲れ様です〜っ!・・・ミサオさんも、家族の方々や村の皆さんも、今回は本当に大変でしたね~っ!・・・でも、あの国もこれで少しは変わりそうな感じですし、闇の勢力とやらの方も、こちらの世界においてはこれで一息つけそうです。やっぱりミサオさんに副業進めて良かった~っ!」


上機嫌な課長・・・この世界の主神であり、当人(?)曰く、観察者だとミサオに説明しているカ=チオ。


「課長さん。あの。・・・元エドワルド1人の話だけで、全部のカタついた訳じゃないんでしょ?」


ミサオは元々、カ=チオの副業オファーによってこの世界、イグナシアに来た男。


契約内容は、この世界に本来生まれてこないイレギュラー、闇憑きの討伐。


ミサオ自身が、現代世界から呼ばれる形のイレギュラー的存在。闇憑きという、イレギュラーに対抗する為のカウンター。このイグナシアで不足していた、闇憑きに対しての補充戦力として、この地に飛ばされて来ている。


そんな中で様々な出来事があり、死別した息子達ともこの地で再会し、闇憑きの原初の謎への肉薄。


側近と自ら名乗った、元エドワルドの撃破という流れになっている。


だが、その元エドワルドの発した言葉の中にあった、御方様おんかたさまなる上位存在の示準。様々な計画への匂わせ。ミサオの疑問は一向に晴れてはいない。


カ=チオがここで、ミサオの疑問に答えるかの様に説明を始める。


「その事なんですけどね。・・・こっちの世界、イグナシアに関して言えば、ミサオさん達の働きのおかげで、これ以上の拡大要素、無くなったみたいですよ!」


「へ?いや、あの野郎が他の計画とか、御方様とか言ってましたよ?あのステゴロで終わりな訳無いでしょ?」


課長の言葉に焦るミサオ。まだ問題が完全に解決した訳でも無さそうなのに、ミサオにしてみれば意味がわからない。


「まあまあ焦らないで!言いましたよね?この世界での勢力拡大を阻止だって。あの闇の霧自体が無くなった訳では無いし、やっぱりちょこちょこは湧くみたいなんですよ。・・・ですが、とんでもなく強い個体が、集団で現れる危険性が無くなったと言う事で。たまには闇憑きも出現するでしょうが、統一した意思を持って、この世界の破壊まで目論む上位の異物が現れないと言う感じみたいです。そうなればこの世界の戦力だけでも、対処の目が出てきたということになりますよね?いや〜、良かった良かった!」


相変わらずどこまで本気なのか、ミサオも読めない課長の言葉である。


「はぁ・・・。そりゃ、よござんした。でも、闇の勢力の根本。大元の、闇の上位存在ってまだ消えて無いんですよね?それに、俺達家族が、このままイグナシアに存在してても良いのか。その辺どうお考えなんですかね?」


ミサオがカ=チオに続けて問う。


「・・・実は、今回の連絡って、メインはその話なんですよね。・・・ミサオさんに改めてご相談がありまして。あ!そうそう、私も上の存在から言われましてね?実は今度・・・こっちの世界とミサオさんの居た世界の2つ。・・・2つの世界の観察者と相成りました~!パチパチパチパチッ!」


能天気に話すカ=チオ。


「・・・偉くなった・・・昇進ってあるんスか?神様?の界隈も。」


ミサオも発言の意味がイマイチ理解出来ない。


「いや、ミサオさんの頑張りでこっちの世界も少し落ち着いたのが、上位存在に評価・・・されたというか、この後の事もあっての狙いと言うか・・・。で、ですね。それに伴って私の呼び方、変わるんですよ!」


「役職変わるって事ですか?・・・あの、一応お伺いしても?」


「はい!これからはブ=チオと呼んで下さいっ!イグナシアの古い言葉で、2つの世界を統べる神って意味らしいですよ?まったく。神なんて大げさな。」


「・・・えと、言葉だけで聞いたら、課長から部長に昇進って事で。・・・おめでとうございます。忙しくなりそうですね?・・・心中お察しします。」


ミサオは現代世界でも、下っ端の役職は経験している。偉くなれば楽になる、偉くなれば金がウハウハなどとは考えない。その役職なりの大変さを思い、課長改め部長さんに同情を示す。と、同時に自らを振り返り、今の状況に少し安堵する。気の合う家族と仲間たち。それらとの毎日を過ごせる幸せを

これからも続けられるかも知れないという希望を、少しだけ感じていた。


その部分においては、カ=チオ改めブ=チオにミサオは本心から感謝している。亡くなった息子たちとの、獣人に姿を変えてはいたものの、生きたままでの再会。ミサオにとって、何にも代え難い幸せである。


「いやいや、ミサオさん。意味も無く、あなたの元居た世界も任された訳じゃないですよ?この話に、あなたが関係しない訳無いでしょ?」


「へ?それどういう事ですか?」


「さっきの、闇の勢力の上位存在や、元エドワルドだかのほのめかした他の計画。・・・どうも動きが出ているらしいんですよ。・・・現代世界の方で。」


特大の爆弾をブ=チオが放つ。


流石のミサオも、普段の軽口の余裕も吹き飛び、すぐには言葉が出せない。


「・・・ほら、以前に。村作りの時に、現代世界から若者が来たでしょ?」


「・・・あぁ、ウチの一家のバッジ渡した、マサヒトの事ですね。課長・・・いや、部長さんが、裏工作かましてきた案件ですよね?それが?」


ミサオとブ=チオで、過去に起きたであろう、謎の会話が始まる。


「彼。・・・今、1人で闇憑き討伐、頑張ってるんですよ。現代世界で。」


「・・・読者プレゼントやらウチの家族の物語読んだとか、中々面白い事言ってましたけど、課長・・・いや、部長さんのお茶目なイタズラくらいに思ってましたよ。ま、性根は真っ直ぐな人間だったから、俺も仲間にしたんですけどね。・・・ちなみに、どこまでが部長さんの仕込みだったんですか?」


ミサオはカ=チオ改めブ=チオの手腕に、今更ながら舌を巻く。


「・・・現代世界の方に出現し始めた闇憑きも、イグナシアに出始めた当初と同じくらいのレベルなんで、魔法使って討伐出来るのが彼1人でも対処出来て居ます。しかしこれは、彼の住んでいる日本だけの話であって、現代世界における他の国々にも、少ないながらも魔物や闇憑きは出現し始めていて、対抗する勢力もまだまだ少ないのが実情です。それに、出現数の増大や、上位存在が現れるであろう、これから先の事考えると・・・ね?」


言葉の最後は、可愛く締めるブ=チオ。


「ね?じゃないですよっ!・・・せっかく村っていうコミュニティも出来て、壊されたけどみんなで復旧頑張って、これから楽しくスローライフ目指そうと思ったのに・・・。俺の生活設計、どうしてくれるんスか!生活資金の心配も、やっと無くなってきてたのに!」


嫌な予感を振り払いつつも、逃れられそうに無いお願い事に対して、ブチオに文句を言うミサオ。


「・・・申し訳無いと思ってます。・・・正直、私もここまでの予想はしてませんでしたよ?元々マサヒト君の件も、ちょっとした、私個人のお茶目だったんですから。現代世界は現代世界で、別の観察者が居た訳ですしね。


ですが、闇憑きの案件に関してだけは、私の管轄内での出来事が端緒ですから。そうなると、どうしてもミサオさんに、ご協力頂く流れになるかと。・・・それにマサヒト君は、もうミサオさんの舎弟なんですよね?・・・今は良いけど、これから大変だろうなぁ。ケガしないかなぁ。心配だなぁ。」


言葉の最後の方は棒読みの様な口調になる、2つの世界の主神であり、自称観察者という立場のブ=チオ。


「くっ!・・・それ完全に、外堀埋めてきてますよね?舎弟のマサが、これから苦労するの見越して、俺に話振るのは反則でしょ?・・・てめぇの身内、ほっとけ無いの知ってて、あえて相談なんて話に持ってって。それ、強制と変わりませんからっ!・・・しばらくは時間の猶予、貰えるんですよね?それと、俺からもまた、色々無茶なお願いもしますよ?こっちの世界と違って、現代世界は俺達が元々居たとこなんスから。未だに日本の戸籍も免許も残ってる訳ですし。」


結局ミサオは、これからの生活の方向性を、ブ=チオの手のひらの上で転がされている様に感じている。が、そこに悪意は無い事も、同時に確信している。


「それはもちろん!あっちからこっち、こっちからあっちは今まで通りに、ポチッとやっちゃって下さい。あ、面倒くさいからあっちで新たな本拠地構えて、そこに常時行き来するゲート付けます?こっちの自宅とつなげて!」


結構な内容の話を、ブ=チオは事もなげに提案する。


「そりゃ、俺からすれば助かりますけど。・・・セキュリティとかも考えて下さいね?ウチの家族同伴でないと駄目だとか、許可した人間以外通れない様にするとか。ガバガバにしちゃうと、2つの世界でドンパチとか、絶対始まる未来しか想像出来ませんから。」


「そこら辺は上手くやりますよ!・・・よ〜しっ!楽しくなってきた!」


「楽しくない楽しくないっ!イッツ、シリアスッ!」


妙にやる気になる、カ=チオ改めブ=チオを慌ててミサオが制止する。


「それじゃその辺、改めて時間とって詰めましょう!たまには私の空間の方にも、遊びに来て下さいよ?あ、クミコさんたちにもお茶会のお誘いしておいて下さいっ!・・・ブ=チオなんて存在にになったんで、空間の方も色々様替えしましたから!でわでわ!」


(プツッ。ツー、ツー、ツー、ツー・・・。)


「あっ、部長っ!・・・切りやがった。あの人(?)も、部長昇進はいい事なんだろうけどさ。・・・俺たち、また引っ越しすんの?いや、いうなれば2拠点生活って感じか?・・・まだまだこき使われて、痛い思いすんの目に見えてんじゃんか。仕方ねぇけど、これをみんなに、どう説明すんだよ?まったく、頭痛ぇよ。・・・はぁ~あっ!」


ミサオはこれからの事を考え、天を仰ぐ。


「・・・でもな。ほっとく訳にもいくめぇよ。マサに預けた舎弟のバッジも、決して軽いもんじゃねぇし。身内が困るのもあれだし、俺らの元居た世界が、闇の勢力に荒らされるのもシャク出しな。向こうの世界でも、やる事は変わんねぇか。あ~闇の勢力うぜぇ!話し合いも出来ねぇんだろどうせ!ましてや現代世界で、日本以外の国も絡んでくるとなると、法律やら宗教やら、利権やらと問題が絶対に山積みだんべ?余計な仕事増えるの確定だわな?・・・早々にみんなに話すか。向こうの世界で坊主達、大丈夫かな?耳とかシッポ、見えない様に何とかせんといかん。そのぐらいの事は部長さんにちゃっちゃと考えてもらうか!あ〜〜〜〜も~イヤッ!誰か俺に休暇を!俺に心に安らぎを!」


愚痴を言いながらも、なんだかんだと、ミサオは次の戦いを心の中で受け入れている。


しかし、神からの使命などとは、勘違いもしていない。


自分のやるべき事を粛々と。


そして、何よりもまず。


家族の、みんなの笑顔。


それを理不尽に奪う輩は、絶対に許さない。


今のミサオには、この世界で得た頼れる仲間たちが、愛する家族が共に居る。


「やれるさ。・・・やってやんよっ!」


太陽に向かって、ミサオが拳を突き上げる。


「どこでだって、いつだって。ウチの家族は・・・負けねぇよ!」


イグナシアでの出来事。これは一つのピリオド。


でもそれは、既に次へのプロローグ。


ミサオは新たな思いを胸に、家族の待つ家へと歩み始めるのであった。




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