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家族で異世界冒険譚(ターン)!第2部 ~永井家異世界東奔西走~ 改定版  作者: 武者小路参丸


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第3話 長男ムサシの真実と永井家のこれから

ミサオ・クミコ・ジョロ、そしてまさかの再会を果たした、獣人姿で転生していた永井家長男のムサシは、菓子店(ジョロの宝箱)のあるテリオスの町の、自宅兼店舗の近く、人目の無い場所に転移する。


まずは店へと顔を出し、帰宅の挨拶をする永井家。店長リュミア並びにピピン・ポポンへのねぎらいと、ムサシの紹介をするミサオ。


ムサシの顔を見てリュミアちゃんが顔を赤らめたようなのはミサオの気の所為だろうか。


この日は4人で建物2階の自宅に上がった後は、次の日まで、食事以外の時間は語らう事で過ぎていく事となる。


「・・・俺とコジョとサンくん。3人はずっと見ていたんだよ、マミとパピとジョロの事を。


生きてる者は皆魂に還る定めがあって、その時が来たら、犬と呼ばれた種族は(虹の橋のたもと)って所で、自分の生きてた時の愛しい者達を待つ事を選択出来るらしいんだ。


再会出来た者達は、その虹の橋を一緒に渡って、同じ場所に何らかの形で一緒に転生出来るんだって。


・・・だから俺は、家族が必ず後から来ると思って待つ事にしたんだ。


そしたら、コジロー・・・コジョの奴が来て。


俺達の居た場所からは家族の毎日がちゃんと確認出来てさ。コジョの具合が悪くなって、魂へと戻る所も見てたんだ。だから、俺の所に来る事をコジョが選ぶのをわかってたし、その通りになった。


その時に、新しい弟のサンシロー・・・サンくんが永井家に出来ていたのも見ていたよ。


時は流れて、アイツも俺やコジョと同じ場所に現れた。


それから俺とコジョとサンくんの3人で、いつかはみんなが揃って、みんなで虹の橋を渡れる日を待ってたんだ。


・・・そしたら、マミとパピと新しく家族になった4人目の兄弟コジ丸・・・ジョロが不思議な事になってるのが見えて。」


そこまで一息の話したムサシは、クミコの用意したコップに入った冷たい紅茶で喉をうるおす。


そしてムサシは話を続ける。


「普通は生まれた世界で皆魂に還るのに、ウチの家族は違う世界に移り住もうとしてて、3人共ビックリしたよ!


もしかしたら、会いに来れなくなるんじゃないかって。・・・まぁそこは、マミとパピとジョロの事だから、どんな事しても会いに来てくれるって信じてたんだけど。」


ムサシの言葉に、静かに聞いていたミサオ・クミコ・ジョロは何度もうなずく。


「だから、違う世界での3人の生活も見守り続けようと思ってたんだけど・・・。」


そこでムサシは少し目を伏せる。


「どうもパピのやってる化け物倒す仕事が、家族の生活を脅かしそうだって感じたんだよ。3人共に。」


ミサオはそこで息を飲む。


「闇憑き討伐の事なのか?俺の命がヤバいって事か?」


ミサオはムサシに問う。


「あの闇憑き自体に、パピが負けるなんて思わなかったよ?パピ強いって知ってるし。


でも、その闇憑き討伐の仕事を続けていった未来に、とんでもない事が待っているらしいって不安を、俺達3人は感じたんだよ。


・・・そしたら居ても立っても居られなくなって。待ってる事は出来たんだけど、それは本来の形の再会じゃ無い。なら、何とかしてパピとマミとジョロの力になれないかって思ったんだ。


どんな事をしても助けたかった。


たとえ、虹の橋を一緒に渡る事が出来なくなったとしてもね。


・・・その時、まばゆい光が俺達3人を包み込んで・・・。俺達の願いが、聞き届けられたのがわかったんだ。


まさかひとりぼっちで山の中で放り出されて、その上獣人に変わって目が覚めるとは思ってなかったけどね!


幸い、言葉は何故か喋れる様になってたし、山の途中で見つけた湧き水や、麓で遭遇した魔物を苦労して倒してご飯も何とかなって。そうしてる間に魔物に襲われてた獣人の集団をたまたま助けて、そいつらの集落に連れて行って貰って・・・。


この世界の仕組みを教わったり、一緒に狩りや畑仕事をしたりして。内心は一刻も早く家族に会いたかったけど、何せ情報も無かったから下手に動けなくてね。そうこうしている内に、周囲に闇憑きや魔物の異変が起き始めて。・・・後はパピ達も分かるよね?」


そこまで話してムサシは、座っていたソファーで一度大きな伸びをした。


「ムッちょん・・・私達の為に、本当に苦労したのね。」


クミコが座っているムサシの側へと向かい、そっと頭をなでる。


目には涙をためて。


「そっか。そんな事が起きていたのか・・・。


俺達に起きた最近の目まぐるしい生活の激変も大概だと思ってたけど、知らない所でムッちょんも中々な出来事が起きてたんだな。


で、今の話聞いてて思ったんだけどさ。


・・・ムッちょん以外の2人。コジョとサンくん。この2人もこっちの世界に・・・来てる可能性、あるんだよな?」


ミサオは一番気になっていた事をズバリ聞く。


「必ず・・・とは言えないけど、あいつらも俺と同じ思いだったから、この先のどこかで会えるって、俺は信じてる。」


ムサシは核心に満ちた目でミサオを見つめ返す。


その時、ミサオの気持ちが溢れ出し、身体は震え、言葉も乱れる。


「そっか・・・ぞっが!生ぎで、・・・会えるかも・・・。」



「ムッちょんにーにーに会えたのもすごいのに、コジョにーにーにも初めて会えるの!久しぶりにサンくんにーにーも!ほんとに?」


ジョロは早くも興奮している。


「待ってジョロ!ムッちょんもすぐとは言ってないでしょ?ても、コジョもサンくんも、私達と会いたがってるのだけはわかったわよね?・・・今は焦らず、家族みんなが笑顔で会える日を楽しみに待ちましょう?ね?ムッちょんも、パピも!」


3人にそれぞれ声をかけるクミコ。


それを受けて、それぞれ笑顔になる3人。


「・・・んじゃ、せっかくだから、ここで情報共有といきますか。」


気を取り直したミサオが皆に告げる。


「詳しく話すタイミング無かったから遅くなっちゃったけど・・・。


俺の元々の課長さんからの副業オファー。ま、闇憑き討伐なんだけどさ。本来ならこっちの世界で何とかしなきゃならない問題な訳じゃんか。それをわざわざ違う世界の人間に頼んできた理由。


・・・マミには言ってなかったけど、移住する前に、1回課長さんと腹割って飲んだんよ。


あの人・・・人で良いのか?


まぁ普通とは違うのは置いといて、俺が手土産で持ってった焼酎とかローストビーフとか思った以上に喜んで!たまにはこういう機会作りましょうなんて盛り上がっちゃて大変だったのよ!結構気さくでさ・・・。」


「パピ?本題進めてくれないと、お昼ご飯・・・1人だけ無くなるかもね?」


クミコのジト目にミサオは居住まいを正して話を続ける。


「ングッ!・・・そん時にぶっちゃけ聞いてみたんよ。何でそんな手間掛けたんだって。


・・・したらさ。


このイグナシアって世界には、魔法もあるし、魔物も居る。まぁよく見聞きする物語上のファンタジー世界だわ。


でも、(闇憑き)の出現だけは、進化とか突然変異とかじゃ無くて、この世界のことわりを超えた、完全なイレギュラーな事らしいんだと。」


ミサオはそこで、目の前のぬるくなった炭酸飲料を一息に飲んで話を続ける。


「ゲフッ。あ、ワリィ。


んで、こっちの世界の生態や、生活レベルとかの自然な流れをコイツはぶち壊す、いわば脅威だって言ってた。


しかもイレギュラーだから、すぐにこっちの世界の力だけじゃ対応が追いつかないって事が分かったらしくて。んで、対策を課長さんが色々各所と協議して決まったのが、違う世界からの人材確保なんだと。


この世界の人間に変な強い力与えちまうと、それもそれで世界の均衡おかしく変える恐れも合ったり、これは俺個人の見立てだが、他の世界の人間なら・・・まかり間違って死んでも影響少ないとかあったりしたのかもな。


ま、少なくとも課長さんは俺に対して、真摯に対応してくれてるけど。」


意味がわからずキョトンとするジョロ以外の2人は、ミサオの言葉に目が細くなる。


「んで、違う世界からの人間を連れてくる話になったんだけと、やっぱ課長さんとこでも管轄のエリアとか色々分かれてるみたいで。課長さん個人で好き勝手出来なくて、それこそ色々な世界の面倒見てる同僚とかにもけんもほろろに断られたりしたみたいなんよ。


そんなこんなあって、やっとこさ許可出してくれたのが、俺達が居た現代世界の課長さんと同格の人・・・人ではねえけど多分。


でもいきなり異世界に突然連れてくのは良くないって課長さん思ったらしくてな。、現代世界の様々な地域や人種の中から適性とかめっちゃ調べて。何人かこれはと思うやつに、何でそんな手段にしたのかイマイチ俺もわかんないんだがあの副業オファーのメールって形とったんだと。


・・・でもよ、俺も最初思ったけど、あのやり方絶対失敗だよな普通。誰が見ても詐欺だなぁって考えるもんよ。」


「・・・パピ。じゃあアンタはその詐欺みたいなメールにわざわざ返事したのかしら?」


クミコはミサオの言葉に少し気色ばむ。


慌ててミサオは言葉を返す。


「いや、いやいや!たまたま!ほら、俺も裏の世界は海千山千じゃん?下手に俺の事詐欺ろうなんて奴いたら、逆にケツまくってギャフンと言わす事も出来んじゃんか!


・・・あ、マミ、プンスカしてる?してる顔だね?


・・・すんません!あわよくばアブク銭になるかもなんて気持ち、ほんの少しありました!だって、少しでも生活の足しにしたかったから!」


必死な顔で手を合わせて拝むミサオに、クミコはため息を吐く。


「全く・・・。ま、それがあったから今こうしていられてる訳だし。副業始める前のパピの顔、ずっと元気無かったから・・・雨降って地固まるじゃないけど、今回は結果オーライとしてあげましょうかね。」


苦笑しながらもミサオの動きを許すクミコ。



「流石俺の異世界一の奥様!これからもずっと愛してるよハニーッ!」


「ね、パピ?そろそろお腹ペコペコリンなの・・・。」


一人で盛り上がったミサオに、切ない顔でジョロが空腹を訴える。


「さ、難しい話ならこれからも出来るわ。今すぐご飯準備するから、ジョロもムッちょんもこのまま座って待っててね?パピ!台所!ゴー!」


「俺?今日俺メインで作んの?いきなりそんな・・・あ!


ジョロもムッちょんも獣人だから普通に食べれるんだもんな?なら、イッちゃうか、男のカレー!野菜も肉もゴロゴロ入ったワイルドカレー!


よし!マミ、材料はストックあるよな?一緒に準備手伝って!ほら、早く!」


「・・・たまにはゆっくり子供達とダラダラしようと思ったのに、結局1人じゃやれないんだから・・・はいはい、わかりました!」


ミサオとクミコは、なんだかんだ言いつつも、台所に2人で向かう。


現代世界でも異世界でも変わらない。


普通の。


ごく普通の家庭の風景だった。


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