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家族で異世界冒険譚(ターン)!第2部 ~永井家異世界東奔西走~ 改定版  作者: 武者小路参丸


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第19話 武の研鑽と約束──白犬の決断、そして子供達の未来

ヘリオス山麓の村。

ミサオがS級冒険者としての初めての任務で訪れた異世界の村。


「この村もそんな変わんねぇか。てか、どうしてここ来んのにムサシ呼んでねぇの俺?白犬たちの村俺知らねぇし!」


忙しいスケジュール。久しぶりの単独行動。


意識はしてないが、ミサオは少し掛かり気味になっていた。


「こっから、坊主達とも次々と再会出来て・・・ありがたいこった。さて、村長、話聞けっかな?」


村内の一番大きな建物までは無事に到着。ミサオがドアをノックすると、村長は家に居て、笑顔で迎え入れてくれる。


「あなたはあの時の!その節は大変お世話に・・・。」


「いやいや。息災で何よりです。ちなみに最近、ヘリオスの山の方は?」


「あれから闇憑きも現れず、狩りの方も大きな問題も無く、つつがなく毎日を過ごせております。」


村長の言葉を聞いて、ミサオも一安心する。


「良かったですね。それはそうと前にうかがった、例の白犬達。彼らの集落って、お分かりになりますか?ちょっとそっちの方に行きたいもんで。」


「ああ!それでしたら、ここから半日もしないで着けますよ!


最近は畑の作物のやり取りなどもしておりましてなぁ。」


「そうでしたか!いや、皆が仲良く暮らせてれば何よりです。」


村長が情報を持っていたので、ミサオも肩の力が抜ける。


その後村長から道を教えてもらい、村の外に出てからスマホアプリ(イセ・ゲート)のマップを確認するミサオ。


「山の麓をグルっと迂回して・・・まあまあ、普通に歩いて3時間といったところか?


身体強化かけりゃ、1時間かかんねぇべ。ポチッとばっかじゃこの辺の地理うとくなっちゃうしな。まだ時間の余裕あるから、ボチボチと行きますか!」


ミサオはスマホで自らに身体強化の魔法を付与し、その場で3回軽くジャンプして、そこからダッシュをかける。


「いや~、相変わらずすげぇよなこれ!乗り物いらずだもんな!向こうん時だったらもう倒れてるわ、マジで。」


走る途中で魔物を見つけたミサオ。


「お、土産になるか?せっかくだから毎日コツコツ積み上げてる成果、試してみるかね?」


水場に居たイノシシの様な魔物。闇憑きではないが、体長は3メートル程もある。顔の前に、2本の長い牙も突き出ている。


イノシシに似た生き物の傍まで歩き、足を止めるミサオ。


ミサオの気配に気付き、鼻息を荒くして、後ろ足で地面を何度も蹴り出すイノシシモドキ。


やる気満々のようである。


「さて、どうかな?」


いきなりイノシシの前で奇妙なダンスを踊り出すミサオ。


身体を大きく左右に動かし、その間にしゃがみ、立ち上がり、回転し、ジャンプする。


その動きを意に介さず、イノシシモドキがミサオに向かって突っ込む瞬間!


ミサオが側転し、逆立ちの体勢から繰り出す蹴り!


「だりゃ!」


その天地逆転した状態からの上からの蹴りは、イノシシモドキの左の牙を叩き折る。


通り過ぎたイノシシモドキ。 先ほどよりも憤怒の表情を見せている。


ミサオは逆立ちの体勢のまま、両腕だけでその場で回転したり、両足を開いたり閉じたりを繰り返して挑発する。


その動きを見ながら再びミサオに突っ込むイノシシモドキ。


「このバナネイラ(逆立ち)からの・・・。」


身体の天地をミサオは元に戻し、しゃがむと同時にそのまま地面に手の平をついて、タイミングを合わせて素早く前転、右足のカカトをイノシシモドキの脳天に叩き込む!


「メイア・ルーア・ジ・コンパッソ!ってか?よし、噛まなかったな。」


ミサオの試した技。


現代世界、ブラジルで発達した格闘技カポエイラ


ミサオはイグナシアに来てから、家族が寝静まった深夜や早朝に暇を見つけては、(イセ・ゲート)の動画で色々な武術・格闘技などを調べ、人知れず鍛錬を積み重ねている。


それは自宅だけでは無く、旅先でも。それこそ戦いの前の時間でも。


「こっちじゃ絶対、対人でイケると思うんだけど。まぁ人間相手ならたまげる事請け合いだわな。今回は通用したけど、他の生き物相手じゃどうなのかな?・・・ま、土産は手に入ったから良いか。んじゃ、こいつ担いて、急ぎで行きますか!」


息の根の止まったイノシシモドキを担いで再び走り出すミサオ。亡くなった生き物は、早く血抜きをしないと鮮度が落ちる為、ミサオもスピードアップする。


しばらく走ると、遠くに柵の様なものが見えてくる。


(アレかな?お、物見のやぐら、上に誰かいんじゃん。)


土煙を上げながら走るミサオは、警戒されぬ様に離れた地点から早めに声を掛ける。


「お~い!怪しいもんじゃねぇ!


お前さん達、白犬の衆だろ?お前さん達のリーダーの名代・・・てか父親だ!中入れてくれ!」


ミサオの声が届いたのか、櫓の上から声が飛び、目の前の柵が開く。中から数人の獣人が飛び出してくる。


「これは!親父様!この日をずっと待ち焦がれておりました!・・・して、リーダーはいずこに?」


見覚えのある顔が1人前に進み出てきてミサオに対応するが、首をひねっている。



「スマン!ムッちょんは・・・。お前さん達のリーダーは、今、新しい拠点作りの真っ最中でな。


あ、これ取り敢えず土産の肉。皆で食ってくれや。


で、俺の時間カツカツだからこの場で話すけど、皆どうする?


新しい場所は確保した。この集落丸ごと受け入れる敷地はある。


だが村と言っても廃村見つけてこれから建て直し。又イチからの村作りになる。畑も耕さなきゃならない。今のここでの生活、安定してるんだろ?」


ムサシが彼等とした約束。


それを果たす為にミサオが来たのだが、それは強制では無い。彼等にも暮らしがある事をミサオはわかっている。


だから夢物語では無く、今の現実を伝えた上で、ミサオは判断を白犬の衆に委ねた。


「何を言われる親父様!我等皆、リーダーに大恩ある身。別れる時も言ったではありませんか!で、いつまでに移り住む準備をすれば?」


彼等の判断に迷いは無かった。ミサオは内心、ムサシの事を改めて見直している。


「はぁ。ムッちょん、好かれてやがんな。・・・よしわかった!麓の他の村との兼ね合いもあるだろ?


準備期間は3日!


勿論、全員来いとは言わない。


来たいヤツらだけ来れば良い。


飯だけは腹一杯食えるから、身一つで来ても構わん!


逆に持ってくもん多い奴は、皆で一カ所にまとめといてくれ。移動の手配は心配しなくていい。」

 

テキパキと段取りを伝えるミサオ。


「しかと承りました!我等の集落、年寄りや女子供も含めて約50と数名、全ての者がリーダーの元へ、馳せ参じます!」


「お、おぅよ!皆で話し合い持たなくても良いのかよ?ま、新天地じゃ、しばらくの間大変だが、お天道さんの下、みんなで笑って暮らそうや!んじゃ俺はまだ行くとこあっからこれで!ほな!」


「いや、親父様~~!」


白犬の衆の引き留める声を待たずに走り去るミサオ。


「さて次は?・・・そか!おチビさん達とシスターんとこだな。ほんじゃこのまま・・・ポチッとな!」


土煙だけを残し、走りながらスマホアプリ(イセ・ゲート)をタップし、ミサオは次の目的地、コルテオへと転移した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


辺境都市コルテオ。


先の騒動が収束しても、まだ完全なる復興とはいかないものの、街の人々の生活は以前の活況を取り戻している。


外壁外にある黒の森。その中で突如出現する白い光。


「やっぱ、こっちでも土産いるよなぁ。子供達は食べ盛りだし、コジョが居なくなった分、また食料厳しかったら困るしな。どうすべか・・・。」


ミサオはスマホアプリ(イセ・ゲート)のマップを表示し、生体反応を探す。


「ふ~ふふ〜。に~く、に~く、美味しいお肉~!」


ミサオは画面からなるべく大きそうな生き物の表示を探す。


「お、いいじゃんいいじゃん!コイツなら、こんだけ大ききゃ孤児院でも2日~3日いけんべ。さて、今度の新しい訓練の成果は、アレ試すかね?なら、必要なのは木の枝木の枝・・・。」


ミサオは周囲を見渡して、なるべく真っ直ぐで硬さもある、杖になりそうな枝を物色する。


「お!これならいいんじゃね?・・・ん!いけるべこれ。動画散々見て試してるけど、所詮1人での稽古多いし。試しとかないとな、隠し玉は・・・。」


お目当ての杖代わりになりそうな枝を右手に持ち、2~3度振って、それを片手にコルテオとは逆の、森の奥へと走り出すミサオ。


程なく、狙った獲物と接近する。


「・・・あっちゃあ。


・・・デケぇけんども、さ。大きさと顔!象ってか?それで人型かよ?・・・まぁ、アプリで食用獣で検索したけど、気分的にな?」


軽くへこんだ顔をするミサオ。まだ気づかれていない様子だったが、ミサオはわざと足元の小枝を踏み、音をたてて相手の注意を引く。


音に気付いて、ミサオの方を振り向く象モドキ。


「はてさて、今回はどうかな?」


片足を前に出した体勢、オンガードスタンス。


木の枝を片手で体の前に構え、腕を3分の2程度伸ばし、杖状の枝の先端を象モドキの顔に向ける。


「まずはフロントガードってね!」


ミサオは向かってくる象モドキのすねを狙って一撃。だが、象モドキの勢いを少し削いだだけ。


「ま、折れてもいかんしな。さてお次は・・・。」


(パオ~~~ン!)


再び両手を振り回しながら、振り返ってミサオに向かってくる象モドキ。


ミサオは象モドキの右側をすり抜けざまに、後頭部に枝で一撃を入れ、バランスを崩した所に足払いを決め、その背部に組み付く。


「あ!コイツデケぇから、腕回しきれん!んじゃ、まずこっち!」


体勢を入れ替え、象モドキがうつぶせからあお向けに動いた瞬間に左腕に腕ひしぎ逆十字固めを決め、そのまま肘の関節を折る! 


(ボギッ!)


「ブオ~~ッ!」


叫ぶ象モドキ。


ミサオはすぐさま離れ、枝を離し、無手で左半身ひだりはんみになる。


「わりぃな。人は飯食わなきゃ生きていけん。お前さんも、その食のくびきに縛られて生きてきたんだろ?今回は俺がお前を頂く。しっかり命、つながせてもらうわ。」


狂乱状態で立ち上がり、折れた左腕をプラプラさせながらミサオに迫りくる象モドキ。


ミサオはまっすぐ象モドキの頭部を狙ってあごから突き上げるように蹴り、その蹴りを活かして頭部にカカト落としを決める!


「シャッセ・オから・・・結局最後はテコンドーになっちまったな?


ネリョチャギってか?


複合的に使えりゃ、御の字か。」


ミサオの最後の一撃で絶命し、そのまま前のめりに倒れ込む象モドキ。


ミサオが試した、枝を杖に見立てて使った技術。


(バーティツ)。


19世紀末から20世紀初頭にかけてイギリスで実際に存在した、護身術システム。


東洋と西洋の武術・格闘技を融合させた、当時としては非常に先進的な総合格闘技。


柔術を核に、当時の西洋の格闘技や護身術を組み合わせて作られた技術。


「シャーロックホームズも使ってたって、マミ言ってたもんな!・・・マミの知識は向こうの世界の衛星放送で見てた、英国ドラマ仕込みだけんど。」


身体強化のおかげで何とか象モドキを抱え上げ、街の正門へと走るミサオ。


入口の衛兵は迫ってくるミサオの姿に一瞬警戒を見せたものの、近付くにつれてその警戒を解く。衛兵達はミサオの顔をしっかりと覚えていて、英雄の凱旋並に騒ぎ出す。


「おい!S級が!あのミサオ殿が見えたぞ!街の皆に伝えるのだ!」


「いや、そういうのやめて?お願いだから!」


街の皆に触れ回ろうとする衛兵を何とかなだめ、そのまま下層地区の教会兼孤児院へと向かうミサオ。


「何か心無しか、スラムの感じ薄れたか?」


以前よりも殺伐とした空気が無くなった様にミサオには感じられる。


迷う事なくミサオはそのまま、教会の中へと入る。


教会内では祭壇の前で、以前ミサオが見た時と同じ様に、祈りを捧げているシスターの姿がある。


人の気配を感じてか、立ち上がって振り向くシスター・マリア。

ミサオの姿を見て、笑顔で近寄る。


「・・・まぁ!ミサオさん、その節は・・・。」


「マリアさん、お変わり無いですか?今日は、これ!孤児院のみんなに。コジョ・・・でか兄さんの代理で持ってきましたよ。」


先程の象モドキをそのまま床に置くミサオ、


「でかっ!あ、いや、とても大きいですね!子供達も喜びます!お越しになる度に食料をお持ち頂いて、本当に助かります。」


「いや、カ=チオ・・・課長さんとの関係もありますから、気にしないで下さい。それと今日は、シスターも含め、子供達の将来についてお話したくて・・・よろしいですか?」


ミサオはここで、自分の構想の話をシスターに伝えようと確認する。


「将来・・・ですか?そういう事でしたら、孤児院の皆にも集まってもらいましょう。どうぞこちらへ。」


そのまま孤児院へつながるドアを開けて、移動するシスター・マリアとミサオ。。


歩きながら皆に声をかけ、子供達がミサオのそばに徐々に集まり出す。ミサオはそのまま広い空間の真ん中で止まり、その場であぐらをかいて座る。子供達とシスターにも同じ様に座る事をほどこし、優しい口調でミサオが話し始める。


「今日はね。みんなに相談があってさ。


・・・みんなはさ。この街を出て、おいちゃんやおいちゃんの家族、それと仲間達で作る村にさ。来るつもりないかな?」


ミサオの言葉に子供達が色めき立つ。


「あの、それは移住のお誘い・・・という事ですか?」


シスター・マリアがミサオに問う。


「そうですね。まだ、やらなきゃいけない事一杯有りますが、そこに皆が色々学べて、遊べる場所を。・・・最初は寺子屋レベルかな?とか作ろうと思ってます。飯の心配だけはもうしなくて結構です。いずれ・・・自分の力で、胸張って生きてくまでの間は。」


子供達の顔を見回し、微笑むミサオ。


「そこって、でか兄ちゃん、居るんだよね?」


ミサオの見覚えのある顔、生意気そうなリオが言う。


「ジョロくんにも、会える?」


ジョロに優しかったミナも、その場に立ち上がってミサオに問う。


「ああ。みんなもうそこに居るよ?もしもここの子達も来てくれたら、みんなでお勉強して、みんなで遊んで、みんなでご飯食べて・・・俺、楽しいと思うんだけどな・・・。ま、最初は大変だけんども。」


遠い目をするミサオ。


「ミサオさん・・・でも、私達には教会が・・・。」


「あ、そこはご心配無く。なんてったって、本物のお墨付きありますから。そうだ!みんなちょっと待ってくれる?マリアさん、こっち来てもらえます?」


ミサオはマリアと別の部屋に移動し、マリアの肩に手を添えてからスマホを取り出し、アプリをタップする。


「えと、課長さんの部屋はこっちだから・・・よし!マリアさん、行きますよ!ポチッとな!」


子供達を残し、光に包まれ消える2人。


数十秒後に同じ場所へと、シスター・マリアとミサオは戻ってくる。


「・・・ね!本家本元だったでしょ?」


「な・・・な、なんて奇跡が!カチオ様が、私の目の前に!あんな、あんな・・・!」


歓喜の表情のマリアを連れて、子供達の待つ場所へ戻るミサオ。


「・・・というわけで、シスターも納得して貰ったみたいだね。さて、みんなはどうする?ちなみに移動はすぐだから安心してね?おいちゃん、神様と知り合いみたいだからさ!」


「・・・行く、よな?みんな!」


皆に問うリオ。


「あたしは行く!ジョロくんと一緒に、お勉強する!」


宣言するミナ。


その言葉にうなずく車座の子供達。


「みんなの顔見ると・・・決まりかな?


よし!おいちゃんとこ、みんなでおいで!


多分ここよりも・・・笑顔でいられると、思うからさ。


あ、シスター、特に移住の準備とかいらないんで。このままポチッと行ける様に、課長さんの許可貰いましたから。・・・シスター?」


子供達の盛り上がる姿を見て安心するミサオだったが、1人だけ魂が抜けた様な顔をしているシスター・マリアを見て不安になる。


「・・・カチオ様・・・あんなカジュアルで、フレンドリーな方だなんて・・・。」


「お~いシスター?もしもし、マリアさん?・・・えっとみんな、3日後に迎えに来るから!お別れしたい人とか居たら、ちゃんと挨拶済ませておいてね。


ま、この街の誰かに会いたければ、おじちゃんに言えば大丈夫だから。


おいちゃんは、馬車よりも早くみんなをここに連れてきてあげっからさ!


で。くれぐれも、みんなでシスターにこの話、改めて伝えてね?今多分、シスターは心がこことは違う場所に行っちゃってるからさ。


・・・さて。おいちゃんは、まだ用事あるから、今日はここでバイバイね?腹一杯食って、一杯寝とけよ!じゃ、3日後な!」


皆を残し、孤児院を後にしたミサオ。


コルテオの城壁を出て、森の人目に付かない場所へと移動する。


「厄介事無く、段取り組めりゃあいいんだけどもな。あそこは好きになれねぇ場所だ。ま、だからこそ行かなきゃなんねぇのか。・・・笑顔見てぇもんな。」


ミサオは独り言を言いながらもスマホを取り出し、アプリをタップする。

「これで取り敢えず、段取り最後の、ポチッとな!」


ミサオの転移先は、因縁の国。


聖カチオ教国であった。




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