第18話 それぞれの思惑、交錯する始動
永井家一行が廃村に入った同時刻。
聖カチオ教国大礼拝堂最上階。
玉座に座る1人の男。
「全てはあの男・・・いやあの家族!奴等が余計な事さえしなければ、我等の大望が成就していたものを。・・・全て無駄にしおったわ!かえすがえすもあの永井家なるもの、この先の我が教国にとって、目障りこの上ない!」
独り言を述べるのはマリアード・ギルモア。
前枢機卿補佐兼典礼大司教。
精神を病み、正常な判断力を失ってしまった枢機卿に変わり、カチオ教国の実権を掌握した男。
現聖カチオ教国枢機卿代理。
ギルモアの独白は続く。
「我が国の教義こそ正義!
・・・怠惰にまみれたこの世界を導きし担い手たる我等。奴等の所業を断じて許すわけにはいかぬ!
奴等に血の粛清を施し、この地に、我等の大望は達成されん!・・・カチオの慈悲のあらんことを!」
ギルモアの、あらん限りの絶叫が、部屋に闇の色を深めていった。
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時を同じくして。
どこやもしれぬ山中の中腹。
断崖絶壁に作られた洞窟。
その奥に1人の人間、いや、人間だった者が佇んでいる。
その人間だった者の目の前には、透明な中にどす黒い霧が渦巻く球体が宙に浮かんでいる、
「御方様におかれましては、本日もご機嫌うるわしゅう・・・。」
言葉を発したその人間だった者は、球体に向かって平伏する。
「御方様の想い、私めが必ずやこの地に顕現せしめましょう!・・・それにしてもあの家族、我等と似た物を感じるのは気の所為なのでしょうか?・・・まぁ所詮羽虫程度の煩わしさ、如何様にでもなりましょうぞ。」
その者の目の前の球体の中で、黒い霧が少しづつ色を強め、その渦の回転を早めてゆく。
(あの、私欲にまみれたカチオ教国の者共。
・・・彼奴らもあの永井家なる者達への動きを行う気配。
どうせならそのままお互いこの世界から消えて無くなれば手間がかからぬ。
せめて片方だけでも潰れてくれれば、残りは我等の勢力にてチリへと変えてくれようぞ!)
球体へと語りかける者の心の中は、自分達だけの世界の構築だけに向けられている。
「・・・御方様の崇高なる願い。この世界からの人間どもの完全なる駆逐。我等だけの世界を必ずや我等の、御方様の御手に!ハ〜ッハッハッハッハ〜!」
顔を上げたその者とは、カチオ教国にてクミコを危機に陥れた男、エドワルドと同じ顔をしていた。
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「・・・へ、へっ、へっぐし!う~、ブルッと来た~。」
「風邪?大丈夫?薬飲んどく?」
「いやいや、そんな大袈裟なもんじゃないって!いきなり悪寒というか、背筋が・・・へ、へ、へっぎし!」
「ほら!なめてると、痛い目みるわよ?でも薬飲むならお酒はダメよ!」
「いや、そんな感じじゃ・・・てか、せっかく向こうで総菜山盛り買ってきたのに、家族でワイワイ酒盛り出来んて!・・・薬、もうちょっと我慢する。」
ムサシの提案であちこち転移して買い物に駆けずり回っていたミサオが、廃村に戻りクミコと会話を交わしていた。晩酌を楽しみにしていたミサオに対し、厳しい提案をするクミコに対し、ミサオは抵抗の言葉を寂しげに口にしていた。
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「各所全ギルドマスターへの招集指令、滞りなく伝達したか?」
「はい!全てこちらとの緊急ホットラインを通じて、全ギルドマスターに伝達完了、即時こちらへの移動開始の旨、返答頂いております。
尚、カチオのギルド・マスター、ランカ殿においては、S級冒険者ミサオ・ナガイの今後の動きが有りますので、そのまま現地で待機。
折り合いつき次第こちらに向かう段取りとなっております。」
トリニダス王国。
王都トリニダス内、冒険者ギルド本部、執務室。
冒険者ギルド総責任者、グランド・マスター
セルジオ・トリニダス。
永井家を廃村に送り出した後、こちらもこちらで、この世界の人々の笑顔の為に、動こうと奮闘している。
「やっぱりミサオに言って、緊急時の移動手段は、考えるべきだな・・・。
アイツみたいに皆がポチッと出来れば、どこの国と争ってもギルドだけで戦う手段が持てる。
兵站、兵糧の移動が一挙に解決するのは、完全にこの世界よりは進み過ぎた技術だからな。
ミサオはその辺のありがたみとか・・・わかっとらんようだが。」
誰にともなく言って苦笑するセルジオ。
「多分今頃、現地で呑気に段取り進めてるんだろうよ。
・・・そうだ、段取りと言えば永井家のいる廃村への建築関係の人員の送り込みも、既に始まっているよな?」
「・・・グラマス、その確認も、もう朝から3度目ですが。もう馬車でそれぞれ向かっておりますよ。
永井家も今日早速向かわれ、現地での受け入れ体制を迅速に進めるとの事。
人員も、急いでも最低で5日以上は掛かるのも、永井家の一同にご承知頂いておりますれば、焦らずとも順調に事は運んでおります。」
相対するギルド職員も苦笑している。
「そ、そうだったな。・・・まったく、ミサオは身軽に動けるから良いものの、我々はどうしても距離のある所へは、時間というものが必要になる。
先々の困難。
予見される闘いを考えれば、やはりミサオの知見を活用しての画期的な乗り物、開発せねばなるまいな。
・・・そうすれば、こう、パッと行って、ジョロにもお土産なんぞ持っていって・・・。」
「そっちですかメインは!・・・最近、グラマス少し変わりましたよね?皆の前では、もう少し威厳を保って頂かないと。」
「いや、そこら辺は、考えて行動しているつもりだが?でも、ジョロ可愛いだろ?貴様もそう思うだろ?」
「そこは私も同意致しますが、公私混同は厳に謹んで下さい!ギルド全体の沽券に関わりますゆえ!」
「わかっておる!そうやいのやいの言わんでもな!・・・はぁ、ジョロ、今頃何をしておるのか・・・。」
グラマスの心配の声が、執務室に響く。
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場所は再び、聖カチオ教国。
ここは信徒地区内、カチオ教国冒険者ギルド執務室。
「あれ?ギルマスは、いらっしゃいませんか?」
用事を伝えに来たギルド職員が室内をキョロキョロと見回す。
「あぁ、ランカさんなら朝から獣人保護区の長の、ヘンリーさんとこ行ってるよ!」
執務室の掃除を行う女性が答える。
「そうでしたか・・・仕方ありませんね。先般の騒動、未だに収拾ついた訳では無いですし、永井家の意向もありますからね、保護区の人達については・・・。」
「そうよ!もしかしたら、獣人保護区自体がこの国から消滅・・・いや、今のは聞かなかった事で。」
「わかってますよ。・・・それにしても、これから先、この国もどこへ向かって行くのやら、余計に軍事色が濃くなりそうな気配が・・・。」
「ギルド自体は独立団体。とは言えども、絶対は無いでしょ?
常に中立で居られるとは限らないし、それも見越して本部も色々動いてる様だし。
ま、あのS級が矢面に立つ様なら、私達もそれに従いましょ。
あたしゃ止められても動きますけどね。」
掃除の手を止め、女性が笑う。
「それは私も同じ事。各ギルドの職員、所属する冒険者も大半は意見変わらないでしょうね。
関わる全ての人々の、笑顔の為に動いてる永井家に、皆助力は惜しみませんよ!」
こちらも笑顔で答える職員。
「再び争うなんて。・・・本当は、そんな事無ければいいのにねぇ。仲良く出来ればそれでいいじゃない。」
掃除の女性が肩をすくめる。
「守る為。避けられないならば、我々も出来る限りの努力をしましょう。微力でありますが。」
職員の女性は手を振ってその場を後にする。
永井家の奮闘の裏で。
又別の、人々の笑顔を守る決意の者達が、人知れず動いている。
まだこの世界は、悪意に染まりきってはいない。
希望の火は、まだその光を絶やしてはいなかった。
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そして場所は永井家のシマ、廃村へと戻る。
「ジョロ、そこの欠けたレンガ、そこを埋めたいんだ。お、良いぞ。細かいのも結構上手いな!」
「エヘ、ムッちょんにーにーに褒められた!」
村の中の井戸の1つで、2人は補修を行っている。
場所を移した森の中では、こちらの2人が動いている。
「そうそう、指先を獲物に向けて、集中・・・今!」
「ボン!・・・おし!当たった!」
「いやサンくん、バン!だから・・・。
まぁ当たってるからいいか。」
「流石に貫通まではしてなかったね、コジョにーにー?」
「いや、時と場合に寄ったら、非殺傷の手段もアリかなぁ。サンくんの方が多分いいぞ?俺だと火が着いちまうからな、弱めだと。さ、次は魚!今度は俺に手ほどきしてくれな、水神様!」
「それやめて!コジョにーにー!」
永井家の息子達は、それぞれの場所でたくましく働いている。
「坊主共も、逞しくなったよな・・・てか、向こうの世界じゃワンコの姿しか知らんけどもさ。」
「そうね・・・お話出来て、手と足使って、物を作り出したり、狩りをしたり・・・今は当たり前だけど、決して当たり前じゃないのよね・・・。」
拠点として使う大きな廃屋の中で、手を加えて使用可能になった椅子に座り、テーブルの上の炭酸飲料を飲みながら話すミサオの言葉に、クミコも感慨深げに返す。
「そうだな・・・当たり前の奇跡。・・・お、俺ちょっとロマンチスト入ったか?」
「バカね、自分で言ったらいい雰囲気台無しじゃないっ!ほら、さっさと什器、運んでちょうだい!」
「身体強化付与!・・・簡単に言うけどさ。普通は、1人でやる作業じゃないんですけど?」
まったりとしていた空気が一転し、クミコの指示が出てミサオは慌ててスマホアプリ(イセ・ゲート)から魔法を自分に付与する。
「あ、そう。これ頑張れば、冷えたエールが・・・。」
「マミ!冷蔵庫、こっちでいいんだよな?魔石に魔力フル充電!
って、電気じゃねぇよな?よし、フル充魔力!」
「冷凍庫も設置したら、食材放り込んどいてね~!」
「あいよ!親子で宴会・・・グフ、グフフフフ!」
闇の足音が届くには、まだいくばくかの猶予は、あるようだった。
その日の夜は、家族で盛り上がった。
サンシローとジョロは流石に現代世界のジュースだったが、早速稼働させた冷蔵庫で冷やした現代世界のビールや缶の酎ハイ・異世界産のエール・魔物の肉に現代世界の総菜各種。
家族はたらふく腹に入れ、皆で語り合った。
このままいつまでもいられたらと、家族の誰もが思っている。
その為の今。守る為の、闇に抗う為の場所。
楽しい時間も終わり、家族は各自、急ごしらえのベッドで眠りに着いた。
・・・そして、廃村で迎える始めての朝。
「何にもねぇけど、この一日の始まりの風景。忘れたくねぇな。」
「あら、もう起きてたの?」
ミサオのつぶやきの後ろから、クミコが声をかける。
「ん?あぁ、酒も綺麗に抜けたみたいでさ。
今日はいよいよ各所、ポチッと行こうかなと思ってね。
まだこの廃村も、食料ぐらいしかストックしてねぇけど。」
「そうね。・・・テリオスの町、王都、コルテオ、それに教国。
全て今日って訳じゃないにせよ、段取りだけはつけないとね。
あ!あの教国の保護区の大っきなテント!
あれ使えるわよね?建物出来るまでの間、融通してもらえないかしら。
向こうの世界の売ってるテントじゃ、数大量に必要だし、経費も随分とかかるわよ?」
「んだな。獣人保護区だけは秘密裏に、隠密行動必須だけど、なるべく早く連れてきてあげたいからな。
まぁ、又一つ、奴等に恨まれるネタ出来るんだろうけど。」
「そんな事言ってて、顔笑ってるわよ? 早く呼びたくてウズウズしてるクセに。
ランカさんにもお土産持っていってよ?向こうの世界の何かしらのお酒とか。」
「そうだな。各所世話になったギルマスには、義理欠いちゃいかんわな。
てかマミ一緒に行かねぇの?」
「ここに来る人達の最初の食事、誰が用意するの?
寝る場所は手分けして考えて貰うにしても、何もかんもって訳、いかないでしょ?」
「そっかぁ。ムッちょんには、他の坊主共を見てて貰いてぇし、単独行動か。
どこから手ぇつけるかな。・・・まずはテリオスの店行って、皆に状況説明か。どうなるにしても、あの店は残したいよな。最初の拠点。」
「最悪、リュミアちゃんにお店の権利譲るくらいは考えてよ。あの子達なら多分大丈夫だから。」
「おぅ。ほいじゃ少し稽古して、汗流したら早速動くわ。」
ミサオは歩き出し、開けた場所でストレッチを始める。
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身体を動かし、ムサシとジョロが直した井戸で全身を拭き上げたミサオ。
着替えを済ませた後朝飯も取らずに、ミサオは早速テリオスへとポチッと転移。
場所はこの世界での最初の拠点、(ジョロの宝箱)前。
見ると早速リュミアが外の掃き掃除をしている。
ミサオは微笑みながら、後ろからリュミアに声をかける。
(お、開店準備も滞りなく。流石店長!さて。)
「リュミアちゃ~ん!おはようさ~ん!無理してないかい?」
「は~い!あ、ミサオさん!戻られたんですか?ムサシさ・・・いえ!皆さんは?」
わかりやすいリュミアのリアクションにミサオも苦笑するしかない。
「ごめん。みんな今別の場所にいてさぁ。・・・その件で店のみんなに大事な話がある。あの2人も居るんだろ?」
「はい!2人共店内の準備をしてると思います。・・・お二階で宜しいですか?」
「うん。頼むよ。俺お茶準備しとく。店開ける前で忙しいのに、ゴメンね。」
「ミサオさん、自分がオーナーなの、忘れてません?気を使い過ぎですよ!すぐ行きますね!」
リュミアは小走りでポポンとピピンに声を掛けに行く。
そしてしばらく経った二階のダイニング。目の前に座った3人と向かい合うミサオ。
「今日は、大事な話があってね。これからの永井家の未来についてのことなんだ。それはこの店の将来にも関係してくる。」
「永井家の未来・・・ですか?」
ポポンが首をかしげて反芻する。
「そうだね。まずは結論として、永井家はこことは別の場所に村を作る事になった。理由は色々あるけれど、S級冒険者として見てきた事。人の縁。背負った使命。そして、相容れない敵との闘い。」
「敵との……闘いですか?」
女の子であるピピンが、ミサオの言葉に少し怯む。
「そう。今の永井家には、明確な敵が存在する。だから、この町を拠点のままにしておいたら、君たちにもいずれ危険が迫る。それを避ける上でも、迷惑かけない新たな場所を見つけたんだよ。・・・だから3人共さ。この店、引き継いで貰えないだろうか?」
「!」
3人がミサオの言葉に固まる。
「いやさ、最近は店の仕入れぐらいしか俺達は出来て無かったし、今の3人は十分お店を回してる。
新たな商品も自分達で商品化してるよな?もう、3人の店と変わらんよ実際。だから、この思い出の店、続けて行って欲しい。」
ミサオはその場で頭を下げる。
「ミサオさん!そんな・・・。」
動揺するリュミア。
「権利はそのままリュミアちゃんに変更する!仕入れも徐々に現地調達の物に移行しよう。
向こうの世界のレシピは活かしてるもんな。俺も仕入れは無償で手伝うし。
・・・闘いになったら、そんな事も出来なくなるかもって、そこまで考えなきゃね。」
3人は絶句する。
ミサオの言葉に、悲壮感は無い。
「後顧の憂いは無いようにってね。」
「待って下さい!そしたらミサオさんは?永井家の皆さんは、もうこの街に・・・。」
リュミアの顔が、苦しそうに歪む。
「いや、頻度が減るだけで来られる内は、勿論来るさ。ただ、新たな拠点で守る人達が増えるのも事実。なってったって、村?作りだからね。だから・・・。」
ミサオは3人の不安をなるべく和らげる様に話す。
「行きます!私もその場所に、そこに住みます!」
いきなりのリュミアからのの宣言。
今度はミサオが絶句する。
「今、この(ジョロの宝箱)は、正直私抜きでも回るぐらい2人が成長しています。流石に交代出来る人間は欲しいですが、私1人居ない所で、潰れるような事は決してありません!」
「・・・はぁ。」
リュミアの言葉にミサオも相槌しか返せない。
「それに、新しい場所にも、甘味を求める人達や雑貨が必要となる事も目に見えています。これは1つの商機です。」
「・・・お、おぅ。」
「何より、ムサ・・・ごほん、永井家の皆さんとこんな別れ方、私は断固として受け入れません!」
「あ、あそう。・・・何か、すみません。」
リュミアの怒涛の理詰めにミサオも何故か謝ってしまう。
「結論として、私もそちらでお世話になります!家で待つ母も説得して見せます。だから!」
「待って待って!結論というか、いきなり極論だよそれ?」
リュミアを落ち着かせるミサオ。
「ふぅ〜。・・・リュミアちゃんの気持ちはわかった。
でも、それならそれで、根回しは必要だよ?
何にせよ、商業ギルドへ店の名義の変更お願いしたり、お母さんとも話をしなきゃだし。お母さんも連れて来るなら、テント暮らしって訳にもいかんでしょ?
まずはそれを固める事。
ポポンくんとピピンちゃんにも、負担なるべくかけないように人の手配。話の流れだとどちらかが店長さんか、共同経営の形かな?
実質2人がお店の顔だから、どうせなら先々支店計画とかも立案しないと。せっかくの店、大きく盛り上げて欲しいしね!
あ、コンビニ計画も有りか!そうするとお菓子作る専門の工場も居るし・・・。
ま、まぁ先の話はともかく。俺は他の場所にも顔出して色々動く予定がこれから有るから!
3人共、大変だけど次顔出した時に、少しでも話が着地しているようにしておいてね。」
「はい!」
ミサオの提案に、3人声を揃えて返事が返ってくる。
「じゃ、開店の邪魔になる前に、ここらで話はお開きとしますかね。いつも言う事だけど、無理だけはダメだよ?」
「はい!笑顔もこの店の売りですから!」
ミサオの声掛けに、胸を張って笑顔で返すリュミア。
「頼むね。みんな、商売繁盛!良きかな良きかな!」
3人と二階で別れ、その足で冒険者ギルドのギルドマスター、ハイネスへの土産を手に歩いてゆくミサオ。
「移住決定第一号がリュミアちゃんとは・・・みんな驚くべな。これでまかり間違ってお母さん来ないで、リュミアちゃん1人だとウチで預かる訳だから・・・。お!いよいよか?いよいよ義理の娘の展開か?」
1人浮かれるミサオ。
盛り上がる中ミサオは冒険者ギルドに着くが、ギルド・マスターのハイネスは本部招集の為不在。
職員やその場に居た冒険者達との挨拶もそこそこに、ミサオは冒険者ギルドを離れる。
「やっぱ責任者って忙しいよな。出張とかもあって。なんて言ってる俺も、闇憑き刈ってるだけじゃ済まなくなってきたけど。さて、次は白犬達んとこか。ムサシがあいつらと約束交わしてたし。義理ははたさねぇとな。・・・あいつらも、元気にしてりゃいいが。あ~こっから先長げぇな!ほい、ポチッとな!」
ミサオはテリオスの街から姿を消した。




