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家族で異世界冒険譚(ターン)!第2部 ~永井家異世界東奔西走~ 改定版  作者: 武者小路参丸


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第10話 水の都カチオ教国へ 家族で挑む新たな影

戦いの日から数日後の朝。



ミサオが顔を洗いダイニングへ向かうと、味噌汁のいい香りが漂っていた。



「あら、今日は起きるの早いのね? 朝ご飯、まだちょっとかかるわよ?」



忙しく動きながらも、クミコは笑顔で声をかけてくる。



「おはようさん。なんかさ、考え事が多くて眠りが浅かったみたいだわ。ウチの可愛い坊主たちは、まだ夢の中かい?」



「ジョロがね、「に~に~たちと一緒に寝るの~!」って聞かなくて。さっき覗いたら川の字で寝てたわよ。可愛いわよね~!」



包丁を持ったまま、その場で身悶えるクミコ。



「マジかっ! 俺も見てくる!」



こちらも相変わらずのバカ親っぷりを発揮するミサオ。



そうこうしているうちに目を覚ました息子達と共に、みんな揃って食卓に着く永井家。息子たちが獣人化したおかげで、今では全員同じ食事がとれるようになった。



シャケに似た異世界産の魚の塩焼き。現代世界から持ち込んだ納豆と卵。コルテオで手に入れた新鮮な野菜のサラダ。



日本では平凡な朝食かもしれないが、異世界でこれを食べられるのはありがたい話である。



「いただきます!」



みんなでワイワイと箸を進めながら、話題は自然と今後のことへ。



「さて、次はやっぱりカチオ教国かな。コルテオに向かってきた闇憑きや魔物の動き、詳細不明って親書にあったし、放っておけねぇよな」



ご飯を頬張りながら、ミサオが話す。



「そうですね。闇憑きの異常な動きはこの国だけの問題ではありませんし。幸い、冒険者ギルドは国境を越えて活動出来ます。向こうでも協力は得られるでしょう。」



静かにお茶をすすりながら、ムサシが口を開く。



「行ったことないけどカチオ教国って、水の都なんだろ? 見たことない魔物とかもいそうだし、狩れたら教会の子どもたちやマリアさんにも食わせてやりたいなぁ」



三杯目のおかわりをしながら、コジローがのんびりと笑う。



「水のみやこって、お水でできてるまちなの~っ?」



ジョロが、キラキラとした目でみんなを見回しながら聞いてくる。



「ほら、顔にご飯粒ついてるわよ!」



クミコがジョロの顔に付いた飯粒を自らの口に運びながら、優しく説明する。



「水の都っていうのは、町の中に川や噴水があちこちにあって、お水がとっても身近にある町のことなのよ。」



「そういえば、グラマスが言ってたけど、あっちは獣人にとって住みづらいらしいな。・・・ま、もしお前らに何かあったら、おらぁ許さねぇけどな。」



ミサオはそう言って子供達を見回し、味噌汁を一気に飲み干した。



「ごちそうさまでした!」



再び、永井家一同は出発準備に取り掛かる。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「みんな!準備出来たな!」



家族達に確認するミサオ。



クミコ、ムサシ、コジロー、コジ丸。


家族みんなで、新たな討伐への旅立ち。


本日の出立の事は、事前に周囲には伝達済み。



まずは、ミサオお約束の・・・。



「ファミリー、ポチッとな!」



スマホのチートアプリ、(イセ・ゲート)の転移で、まず永井家が向かったのは、辺境都市コルテオ。


先日のスタンピード及び辺境伯暴走の被害。


復興には、まだ時間がかかりそうだが、町の人々の目は前を向いている。



精力的に復興作業の指揮を取るのは、トリニダス王国コルテオ駐留騎士団長、エリオットである。



ミサオが声を掛けると、なんと次期辺境伯へ爵位が上がるとの報告が。



セルジオの、王国への強力な後押しがあったらしい。



(流石グラマス、末席でも王子の肩書は伊達じゃねぇなぁ!)


ミサオはセルジオの行動力に感心する。



エリオットと別れた後、永井家は下層の孤児院へと向かう。



実際には数日しか会っていないが、元孤児達は満面の笑みで迎えてくれた。



皆で楽しく話している間に、ミサオはその場をスルリと抜け出し、 店舗兼自宅の(ジョロの宝箱)へと1人で転移。差し入れのお菓子の山を取りに戻り、シスター・マリアへと手渡す。



後ろ髪引かれる思いはあるが、すぐに再訪を約束し次は冒険者ギルドへ。



ギルマスのテッドに会い、お互いの労をねぎらった後に、聖カチオ教国行きに用立てられた馬車へと向かう一行。家族のみで向かう為、ムサシとコジローが御者台へと登る。



(ポチッとばっかりやってっと、他国じゃどこかで目に付くと困るしな・・・。)


ミサオも色々考えている。


ここから永井家一行は森を抜け、馬車はカチオ教国とトリニダス領を隔てるイルナス川へと向かってゆく。


先日の騒動のおかげか、魔物の姿も見ない様である。


そこに掛けられた橋を渡って、カチオ教国へと入国する予定。



(断片的だが、スタンピードの一件・獣人に対する差別・噂に聞いた教国内の子供の行方不明事件・・・。


教国って名前の割には、裏で色々ありそうだしな。


ま、ウチの家族に手ぇ出す輩にゃ、容赦なくかますだけだがな。)



コルテオへのスタンピードにおける、教国側への調査名目を盾にして、ミサオ達は初めてのトリニダス以外の国、聖カチオ教国へと乗り込んでゆく。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



聖カチオ教国まで。


途中、狩りをしたりしながら約三日の道程。


家族で少し旅行気分を味わいながらも森を抜け、橋を渡り、整えられた教国の首都までの道ををまっすぐ馬車は進む。


しばらくすると、最初に尖塔が見えてくる。


そして進むうちに、その国の姿が、どんどん露わになってゆく。


「ふぇ~! ここ、壁ないね~!」


馬車から身を乗り出して、ジョロが感心する。


「ほらほら、危ないわよ! この国は魔法の技術が進んでるから、魔法の防壁で国を囲んでるらしいわよ。」


ジョロを施し、膝の上に乗せながら言うクミコ。


「・・・一応、検問があるみたいだが、どうなんだろう?」




難しげな顔をして、御者台に座るムサシがつぶやく。


コジローは、馬車の揺れのせいかグッスリと夢の中。


「まぁ、まずは様子見ってとこかな。いきなりケンカ腰で対立せんでもいいべ。先にかまして来たら泣き見んのは向こうだろうけど。さ、コジョ、そろそろ着きそうだぞ! 起きろ!」




窓から顔を突き出し、コジローに声をかけるミサオ。


そして、馬車は最初の検問で停車する。




聖カチオ教国で聖騎士と呼ばれる兵士が二人、馬車へと近付く。




「身分の証明と、来訪の目的を!」




ギルド唯一のS級冒険者の印・銀のペンダントと、トリニダス王国からの身分の保証証明を提示するミサオ。




「・・・確かに。先般のスタンピードの件での調査。内容に不備は無いようですが。おや?ご同乗の方の中に、獣人が居るようですが・・・?」


少し眉間に皺を寄せる兵士。


「ウチの可愛い息子達だが、何か問題でも?」


ミサオが早くも眉根を寄せる。


「息子? 人と獣人が親子とは・・・。」



納得のいかない様子の兵士に、続けて言うミサオ。



「トリニダス王国では、下らない偏見や差別とか無いからな。ウチの息子達は全員、身分が保証されている!


ましてや御者台で手綱を握る長男のムサシは、ギルドに登録済みのC級冒険者で、俺の部下でもある。


それとも何かい? おたくら正式な形で来てる俺達家族に、アヤでもつけようってぇ魂胆か?」




表情をガラリと変え、獰猛なオーラを放つミサオ。



「いや、そんな意味では! おい、今すぐ防壁を解け!」


慌てて叫ぶ兵士。




「早速これか・・・。。面倒くさそうだなぁ・・・目が覚めちまったよ。」




ムサシの隣で、伸びをしながら言うコジロー。




「何もないなんて、最初から思ってないからな。取り敢えずは冒険者ギルド寄って、その後は今夜の宿探しだな、コジョ!」


ムサシが前を見据えながら声をかける。



一行を乗せた馬車は、奥へと向かって行く。


聖カチオ教国。


国というくらいだから、やっぱり領土は広い。


首都は水の都。いくつかの村や町を領土に持つ。元々砂漠地帯だったらしい。


この国の初代枢機卿が一介の神父だった頃、布教の為にこの地を旅していたが、たどり着いたこの地の砂漠で倒れていた所に、この世界の主神であるカチオが現れ、近くの湖へといざなわれ一命を取り留めたと言われている。


尽きることの無い豊富な水源・・・オアシスから、一介の神父は自らに起きた奇跡の喧伝と共に布教を広め、国が興ったとミサオはアプリの動画で予習している。。


さらなる布教と言う名目での、十年前のトリニダス王国の領地・川の国境を挟んだ辺境都市コルテオとの争いでは、痛み分けと言うより、前辺境伯ラウロ・ファルミニスの獅子奮迅の働きにより撤退。


領土はお互いそのままに、表面上はトリニダス王国と友好関係を築いている。



1つ目の検問を永井家が越えると、すぐ草原だった。この場所は、獣人たちが住む区域。


一応、(獣人種保護区)などと謳っているが、隔離政策にしかミサオ達には見えない。


一応建物は存在するが、ちらほらと、現代世界で言うゲルと呼ばれるテントみたいなものも散見される。


水に関しては不都合はなさそうだが、遠くに見える中央の尖塔の豪華絢爛さに比べると落差がある。



(どこの世界も、同じ様な事がありやがる・・・。)



ミサオは、馬車からの景色を見て、喉の奥から苦い物がこみ上げて来るのを感じていた。



しばらく先に進むと再び検問。先ほどと似たやり取りがあって、「信徒区画」と呼ばれる場所に入る。


いわゆる一般住民の居る生活エリアである。



馬車は、この区画にあるカチオ教国冒険者ギルドへと向かう。



程なく見慣れたマークのある建物を見つけ、馬車を停めた永井家は、そのままギルド内へ皆で入る。


この冒険者ギルドの建物は他のギルドと違い、建物の上が尖った塔のような作り。首都の景観に合わせているのだろうか。



受付でのS級冒険者のペンダント提示、御当地ギルマスとの面談までのスムーズなやり取り。


だいぶ慣れた様子のミサオである。

 

そのまま永井家一行は、応接室へと通される。


「ご苦労さまです! コルテオでの活躍、こちらの耳にも届いておりますよ!」



この地のギルドマスター、ランカ・スタンフォード。


テリオスの町と同じく女性。冒険者ギルドは実力主義が徹底している。能力さえあれば上級職にも上がれる。


理知的な目をし、ブロンドのセミロングの髪が似合う、武張った感じがない柔らかな表情・・・その様にミサオの目には映っている。


「いやいや、あれは全部、グラマスが収めた事ですから。


俺達は、たまたま対処しただけ。・・・そういう事にしておいてください。


余計な噂は、動き辛くなりますからね!」



軽くウインクして答えるミサオ。



挨拶もそこそこに情報のすり合わせをしたミサオは、近くの宿屋を紹介してもらう。


ジョロの要望・・・ご飯の美味しい宿屋は譲れない。



ここでミサオは気になる話を耳にする。



「・・・獣人保護区の自警組織?」



「はい。最近の、人間や獣人の子供の失踪事件で、何やら独自に動いているらしいと・・・。


この国では、獣人に対して色々ありますから、騒ぎにならなければいいと、こちらも心配している所で・・・。」



深刻そうに言うランカ。やはりギルド側は、この国の施策とは違って、獣人に対して思うは無いらしいとミサオは安心する。



ギルドを離れた永井家一行は、迷う事無く宿屋に入り、旅装を解いてすぐに夕食。


この宿は外からの来訪者しか勿論居ないので、獣人に対する変な視線も感じずに、皆で楽しく腹を満たしたら、家族会議の時間となる。。


宿屋の部屋は・・・一応スイートと呼ぶべきか。


値段はそれなりだが、親子5人一緒の部屋となると仕方が無い。水の都だけに、シャワーもトイレも水だけは気にする必要が無いだけありがたい。部屋に備えられた大きなテーブルを囲み、ここから家族の団らん・・・ではなく会議である。




「スタンピード関連の調査ってのが今回の目的だが、俺は正直、子供絡みの事件が気になる。・・・って言うか、気に入らねぇ。」


腕組みをしたミサオが言う。


「そうねぇ・・・。親御さんの心境考えると、辛いわねえ・・・。」


ハーブティーを口に運びながら、沈痛そうに言うクミコ。



「獣人保護区以外での行動は、俺達兄弟は、目を付けられそうですしね、ここは、俺とコジョとジョロで保護区、その他の場所の聞き込みをパピとマミ、それが無難じゃないですかね。」



コジローとジョロを見ながらムサシが言う。



「か~っ、頼りになるなぁ長男坊!コジョ、ジョロ、それでいいか?」


ミサオの言葉にうなずく2人。



「俺は、ついでに魔物達の居そうな気配のある所も探すかなぁ・・・。いいだろ?ムッちょんにーにー!」


相変わらずのコジロー。



「この国でも新しいお友達、あえるかなぁ?」




シッポはパタパタしながらも、少しだけ成長した感じのジョロ。兄達の良い所に影響を受けている様で、口調も少し大人びてきている。




「じゃあ、獣人保護区は我が家自慢のC級冒険者に引率任せて、俺等2人は、久しぶりのデートにしますか!」


笑いながらクミコに言うミサオ。



「デートって、聞き込みでしょ!もう、緊張感もあったもんじゃないわね!」




言いながらも、笑ってしまうクミコ。




かくして、家族の明日の予定が決定する。




その日の深夜。町の中も永井家の皆も寝静まった頃。




「おい!早くしろ!誰かに見られたらどうする!」




「わかってる!でもコイツが暴れやがって!」




抑えた声で、黒尽くめの覆面をした2人組の男達が話している。1人は大きな頭陀袋を抱え、袋の中で何かが動いている。




この首都の区域はそれぞれ防御魔法で守られ、検問を通らないと互いの区域を往来出来ない様になっている。なのにこの2人は、民家の路地裏でその防御魔法を通り抜けようとしていた。


その時、怪しい2人に、背後から声が飛ぶ。


「・・・おい!その袋、置いてけ!」



ギョッとした2人が振り向くと、少し離れた所に、獣人の少年が立っている。


利発そうだが、少しヤンチャな所も漂う顔。耳は、白がメインで、所々、茶と金の毛が混じっている。歳の頃は、現代世界で言う15歳くらいだろうか。


「誰だ、お前は!」



袋を持たない方が、言いながら右手にナイフのような物を持つ。




もう1人は、防御魔法の壁を何かで必死に広げようとしている。頭陀袋を下に置き、左手に不思議な筒形の道具を持ち、右手で防御魔法壁に触れている。




「獣人風情が何でこの地区にいやがる!しかもこんな夜中に出入りする様な所じゃねぇぞ!消えろ!」




ナイフの男が声を抑え気味に、しかし恫喝した口調で言う。




「・・・ゴタクはいいからその袋、寄越せよ!」


少しイライラした感じで少年が言う。


その瞬間。


ナイフを持った男が、少年に向かって走る!


男がナイフを持った右手を、少年の胸元に突き出す!


(カィ~ン!)


男のナイフが弾かれる。


盾。


少年の胸元、その前には、左手に付けた氷の小さな盾があった。




















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