もしもENFPの男が公爵令嬢に転生したらー入学式編ー
私の知り合いに、とにかく明るくポジティブな ENFP がいます。
(ちなみに筆者は「I=内向型」から始まるタイプです。)
その姿を見ていて、「もしもポジティブで気遣い屋の ENFP が主人公だったら、きっととても明るいストーリーになるのではないか」と想像し、この作品を書きました。
どうぞ、ENFP が見せる陰の努力と、彼らが紡ぐハッピーな日々を覗いていってください!
「……様、…お嬢様…!」
「…。」
ユウはゆっくりと目を覚ました。
白髪碧眼の美しい女性が、不安そうな目で俺を覗き込んでいた。
そしてふかふかなベッド…。
「頼む、あと3分!アレクス!3分のタイマーをセットして!」
しーん。
「アレクス!!3分の…」
ん…?……そういえば俺の家のベッドはこんなふかふかだったか…?
いや、待て白髪…?碧眼…?……誰だ誰だ誰だ!!
状況が飲み込めない。
勢いよく体を起こし、…きょろきょろと見渡してみる。
大きな窓。深紅のカーテン。金縁純白の支柱。俺の家にあるはずのないふかふかのベッド。
そして俺についているはずのない、おっっっっ
「うわあああああああああああああ!」
外でバサバサと鳥の逃げる音がした。
「ユウフィリアお嬢様!!
大丈夫でございますか!明後日が入学式なので、それに関してはご心配なさらないで下さいませ!」
「は…?」
白髪碧眼がはっと目を見開き泣き始めた。
「やはりお嬢様、、お記憶が…」
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そのメイと名乗った白髪碧眼の侍女が全て教えてくれた。
俺も状況が飲み込めないので記憶喪失ということにしておいた。
どうやら、この体の持ち主――ユウフィリアという令嬢は、入学式でのスピーチを目前に控えていた。
しかし侍女がインクの入れ替えを忘れていたという理由で空のインク瓶を壁へ投げつけたところ、それが跳ね返り頭に直撃。
そのまま倒れ、二日間も眠り続けていたというのだ。
俺の知らない記憶だ。
だって俺は確か、営業の飲み会で徹夜明けのまま仕事をし、昨日家のデスクで眠りに就いたはずだ。
(悔しい…あの営業絶対取れてるよな。俺の手柄、せめて後輩が受け取れてるといいけどなあ。。。)
とりあえず、異世界転生というやつだと思う。
宇宙で人間が存在しているくらいだから、これくらいの奇跡は起こっても不思議じゃ無いと思ってる。
しかも俺運がいいから、こういうの引きが強いし。
ユウはあほみたいに前向きな男だった。
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ユウフィリアは、自分で投げた瓶に自分で頭をぶつけるという何とも天然で可愛らしい人だが、
王国2大勢力のうちの1つ、ホワイトライトフォーン公爵家の1人娘として高度な教育を受け、
見事ノーブルロード学園への首席入学を果たしたらしい。
そして入学生代表としてスピーチをし、父に晴れ姿を披露するのをとても心待ちにしていた矢先の出来事だったのだ。
俺も、人を喜ばせたくて必死に努力する気持ちがよく分かる。
努力の成果を実力で皆に示してやりたいしな。
――よしユウフィリア、俺がお前の体に乗り移ったからには、任せろ。
絶対に心残りを晴らしてやるからな。
「じゃあメイ、明後日入学式なんだろ。
おr…私、倒れる以前の姿に戻って見せるから、指導よろしくな!」
珍獣でも見るかのようなメイをよそに、ユウはニッと笑いかけた。
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ユウは礼儀から始まり、スピーチの暗唱、品のある動作、貴族の関係図など全て学習した。
ユウフィリアの記憶が少しあるのか、学ぶというより思い出すような感覚だった。
言葉遣いについては、なかなかお嬢様言葉が馴染まなかったため、威厳のある丁寧な言葉ならば公爵家だし良いだろうとの結論にいたった。
その頃、ユウフィリアの明るく優しく逞しい姿は、侍女の間で小さな事件となっていた。
侍女A――ユウフィリアお嬢様が、勉強に付き合ってくれてるからって、お花をくれたのよ!!
侍女B――自分で入浴もできるようになっているし、ドレスもシンプルなものがお好みになったみたいだわ。
侍女C――俊敏になられたというか…弟君が落としかけたナイフを片手でお掴みなったの。
侍女達『何だか……かっこいいのよね』
うっとりしている自分たちにはっと気付き、侍女達はそそくさと仕事に戻っていった。
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そして迎えた入学式当日。
「よし、メイ。 集大成を披露しに参ろうか。」
「はい!」
長い白銀の髪をなびかせ、颯爽と学園へと入っていった。
以前の仏頂面とは違い、凜とした姿で微笑みを称えて歩く主人の姿は、花びらが舞うのが見えるほどに美しく、メイは心底誇りに思った。
席次表を見ていた1人の令嬢が後ろに来たユウフィリアに気づき、ぎょっとして道を空けた。
「ありがとう、助かるよ。」
ユウフィリアはフッと微笑みかけたが、令嬢は一瞬キョトンとした後にすぐに顔を赤らめ、どこかへいってしまった。
――威圧的すぎたか?それに皆見てきたような気がするが、、歩き方がまだ変だったか?
まあ、今やれるベストは尽くしたし、入学してから皆に教えてもらえばいいか。
そんなことを考えていると、異様に大きな靴音が響いた。
カツカツカツ…。
「やあユウフィリア。光の下の奈落に気を付けろよ。今日のスピーチ、上手くいくといいな」
「は?ああ!ありがとう、任せてくれ。」
黒髪銀縁眼鏡の男が、ぎょっとした表情を浮かべたが、すぐにニヤニヤしながら己の席へと戻っていった。
「メイ、あれが例のブラックフォックスナイトの長男か。なんか不気味なやつだな。」
「左様です。お嬢様に首席をとられ、不機嫌なのでしょう。」
「…拗ねてるのか、可愛い所もあるんだな。なんでも良いが、今日は式を楽しもう!」
――か、かわいい?あのブラックフォックスナイトが!?
お嬢様、それはないと思いますが、お気持ちの切り替えが素敵です!!
そうこうしている内に、始業式の鐘の音が鳴り響いた。
200年の歴史を誇る学園において、代々受け継がれてきた重厚にして荘厳なる旗が掲げられ、新たなる伝統の幕開けを知らせた。
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式も終盤に差し掛かり、ついにユウの出番だ。
会場中が静まりかえり、今日の目玉に注目していた。
王国一を争う美人なのに無表情で、怒りを抑えられず、ミスをした人間を許さないという噂の公爵令嬢を一目見ようと心待ちにしていたのだ。
ところが、階段を上る令嬢の姿は噂と違っていた。
天井のガラス窓からこぼれる光を一身に浴び、神々しいまでに美しく微笑む令嬢がそこにいたのだ。
ユウは壇上に上がると、変に床が歪んでいるのに気がついた。
ふとブラックフォックスナイトの方を見ると、ニヤけ顔が抑えられていなかった。
――そういうことか。少しずれておこう。
ユウはすっと息を吸い、低く澄んだ声で話し始めた。
「青空に澄み渡る鐘の音が未来への希望を告げる今日この頃、格式と伝統のあるノーブルロード学園に入学できますことを心からお慶び申し上げます…」
スピーチが順調に進み、残すは締めの言葉のみ。
「…ここに集いし仲間と共に、互いを尊び、支え合いながら歩むことで、必ずやこの学園をより豊かな場へと築いてゆけるでしょう。入学生を代表し、この門出の日を誇りとし、我らの歩みが未来を彩ることを信じ、ここにご挨拶を結ばせていただきます。」
会場がユウフィリアの空気に見惚れていた時だった。
バキバキバキッ
轟音と共に、荘厳な学園旗がユウフィリアに向かって倒れてきた。
『キャーーーーーーーー!』
一瞬の出来事だった。
騎士が駆け寄るのも間に合わないと誰もが諦め、目を伏せかけたその時、
ユウフィリアはひらりと身をかわした。
旗が倒れる勢いを利用してさっと軌道を変え、今にも穴の空きそうな床のちょうどいい歪みにダンッと旗を突き刺した。
「そして!王国の新たな歴史に名を刻めるよう、仲間と共に切磋琢磨して参ります!!」
数秒場が静まり帰った後、会場が歓声と拍手に包まれた。
ユウフィリアの臨機応変な対応を賞賛する者、
凜とした姿を目に焼き付ける者、
惚れ惚れと眺める者・・・
ブラックフォックスナイトはあんぐりと口をあけて悔しそうにしつつも、その勇ましさに見惚れていた。
――危ね、、、穴開けといてくれて良かった、後でブラックフォックスナイトに感謝しないとな。
悠然と前を向くユウフィリアの姿はまるで太陽のように明るく、
ユウの輝かしい学園生活の幕開けを、誰もが確信したのであった。
短編なのに少し長くなってしまいました…読んで下さりありがとうございます!
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