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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第2章

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リリアーナ宴で歌う

七日目の夕方、最後の魔鳥が落ち、空に静寂が戻った。

人々は歓喜の声をあげ、抱き合ったり、涙を流したりしている。


リリアーナとエドモンドは食事をし、周囲の喧騒から少し離れ、雑魚寝の場所へ戻った。

床に敷かれた毛布に二人並んで腰を下ろす。まだ体には戦いの疲労が残り、心拍も少し高い。

「……終わった」リリアーナが小さな声でつぶやく。

「ああ……なんとか」エドモンドも答える。


「怪我はないか?」

「うん……でも、疲れた」

リリアーナは深く息を吐き、肩の力を抜く。


二人は毛布に身を包み、隣同士に横になる。まだ戦いの余韻が体に残っている。


リリアーナの手が自然にエドモンドの手に重なり、熱が伝わる。

「……おやすみなさい」

「おやすみ」

互いにささやき、リリアーナは顔を少し赤くして、そのまま深い眠りに落ちた。


雑魚寝の小さな毛布の上で、二人は初めて心から安らぐ夜を迎える。



翌朝、城は慌ただしかった。


人々は昨日の魔鳥襲来の後片付けに追われる。魔鳥を解体し、肉は食料や保存食に。羽根や鱗は武器や装飾に使えるよう回収する。被害のあった家屋等の修理も急がれる。


エドモンドはまだ指揮を執っていた。

リリアーナは、戦いで使い果たした治癒の薬を補充するため城へ戻る。身体を洗い、着替え、調合室に向かう。部屋にある材料で作れる分を作り、ようやく出来上がった頃には、もう夕方だった。


リリアーナ、エドモンドを探す。

「治癒の薬を作ってきたの。怪我人はどこに?渡したいの」

「……ああ」

エドモンドは兵士を呼び、薬を手渡す。兵士は急いで各所へ駆けていった。


周りが少し賑やかだと気づいたリリアーナ。

「何をしてるの?」

「ちょっとした宴だ。城から少し酒を出した。魔鳥の肉を焼いて食べるんだ。皆、頑張ったから。リリアーナ、一緒に食べよう」


リリアーナはエドモンドの横に座り、肉を口に運ぶ。意外にも美味しい。手には飲み物も配られた。

「終わったね」と、頬を赤くしてへにゃりと笑うリリアーナ。……飲み物はお酒だった。


エドモンドが取り上げようとする前に、リリアーナはくいっと飲む。

「美味しいねぇ…」


そして突然、立ち上がったリリアーナは歌い出す。

「不肖、リリアーナです。皆様の為に歌います」

アカペラで、力強くも優しい声。

最初は英雄を讃える歌。続けて、鎮魂の歌。最後に、全てに祝福あれ、という歌を。


酔って魔力を自由にのせた歌声は、人々の心に届く。泣きながら、耳を傾ける者もいた。


歌い終えたリリアーナは、満足そうにスヤスヤと寝落ちる。

戦いの疲れと安堵が、彼女を静かに包んでいた。


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