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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第2章

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魔鳥襲来、最終日

六日目の朝。

まだ空が白む前、エドモンドは目を覚ました。

魔鳥の爪傷の痛みが、あまり無い。肩が、動く。


「……?」

首を動かし、傷を確かめる。血はほとんど止まり、腫れもなく、傷跡が薄れていた。

頭の中で理由を考え巡らすが、思い当たる節は……薬? ……いや、そんなに効果があるのか?


隣を見れば、リリアーナがまだ深い眠りの中にいた。

頬には涙の跡、手はかすかに彼の服を握っている。

昨夜、リリアーナは薬を使って何かしていたのかもしれない。

今は……ただ眠っていただけか。


「……起きれるの?」

小さな声でリリアーナが寝ぼけ眼で聞く。

「え……ああ、大丈夫だ」

「……良かった」

安堵の言葉を残し、リリアーナは再び目を閉じた。


エドモンドは静かに立ち上がり、彼女に毛布を掛け直す。

「疲れたのか……」

エドモンドは知らない。リリアーナの魔力で、痛みも傷もほとんど癒えていることを。


外に出ると、兵士たちの視線が集まる。

「動けるのですか?」

「……ああ」

「魔鳥の回収が出来てません」

「そのままにしろ。今日は全員、物陰で待機。決して魔鳥に姿を見せるな」

エドモンドは短く指示を出す。

今日の戦いは、賭けでもあった。


空から、魔鳥たちが降りてきた。昨日落ちた仲間の死体に群がり、嘴と爪で肉を貪る。

死体が次々と消えていく…。人にも、家畜にも見向きしない。……目の前に、食糧があるのだから。


夕方、最後の魔鳥が去っていった。それを見届けて、エドモンドは深く息を吐く。

――賭けは、なんとか勝った。

人も家畜も被害は無かった。しかし、魔鳥の死体は殆ど無くなり、明日を思う人々の表情は暗かった。


リリアーナは、依然として眠り続けていた。

その姿を見て、エドモンドはただ静かに見守るしかなかった。



七日目。


リリアーナは目を覚ました。

「眠ってた……」

丸一日気を失った様に寝込んだ為、疲れもすっかり消えていた。

窓の外を見ると、朝の光に照らされた町の景色が柔らかく輝いている。


隣を見ると、エドモンドの顔色が良くなっていた。

ほっと息をつくリリアーナ。

「……やれるかな」

小さく呟き、彼女は深く呼吸を整えた。


昨日、兵士たちは一日休んで少し回復していた。

そして今日――最後の戦いが始まる。


リリアーナは、弓を手に取る。

エドモンドも大弓を構える。

森や空を見渡す魔鳥たちの影。最後の襲来が迫る。


二人は声を交わすことなく、ただひたすら矢を放ち続けた。

リリアーナの矢は次々と魔鳥を射落とし、エドモンドの大弓もまた遠くの標的を確実に撃ち抜く。


回復した人々の矢も、魔鳥を確実に射落としていった。

矢も、魔石の矢も、残りわずか――。


夕方になり、戦いが終わった。

人々は胸に抱えた緊張が解け、歓喜の声をあげた。

泣き崩れる者もいた。

「生き延びた……」涙を拭う手が震えている。


しかし、エドモンドとリリアーナはただ静かに立ち尽くし、互いの姿を見つめることもなく、黙って空を見上げていた。



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