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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第2章

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マルグリットの不安

リリアーナは毎日、午前は調合室で薬を作り、午後は森へ足を運んだ。合間に弓の練習も欠かさなかった。

薬草を摘み、魔鳥を狩り、調合の試行を繰り返す。狩った魔鳥は、前に同行した兵士に運んでもらった。

そうして、渡り魔鳥の時期が目の前になった。


ある日、リリアーナは調合した薬をエドモンドに差し出した。

「これを……魔鳥と闘う人々に渡して欲しいの。ナイフに塗る神経毒と、刺激臭の袋。袋は、魔鳥と揉み合いになったら、顔に向けて投げて。少しは効果があるかもしれない。森で試した結果、一番効いたものだから」


エドモンドは神経毒の瓶を受け取り、リリアーナの瞳をじっと見つめた。

「リリアーナ、本当に闘うのか」

「はい」


横で聞いていたマルグリットが口を挟む。

「リリアーナ、あなたは女の子なのよ。危険だわ」

「誰もが危険です」

「力のある者に任せればいいのよ」

リリアーナは少し息を整えてから言った。

「……力なら、少しついてきました。足手纏いにはならないつもりです」


マルグリットは大きくため息をついた。

すると、エドモンドが母に向かって言う。

「母さん、リリアーナの実力を見てから決めたらどうだろう」

「……そうね。無理だと思ったら、絶対に反対するわよ」


三人と付き添いの兵士は弓の練習場へ向かった。

エドモンドが弓を示す。

「リリアーナ、試してみて」

「はい」


リリアーナは普通の弓と矢を選び、深く息を吸う。

一射目――的の中心から少し外れた。

二射目、三射目――矢は中心近くに続けて突き刺さった。


「いつの間に……」

エドモンドとマルグリットは顔を見合わせた。


「母さん、剣も確かめてみる?」

「そうね」


付き添いの兵士が木剣を取り、リリアーナと対峙する。

リリアーナは身体強化を発動し、魔力を剣に乗せた。

次の瞬間、鋭い踏み込み――。


ガギン、と甲高い音。兵士は押し返そうとするが、力も速さもまるで違う。数合打ち合っただけで、兵士はあっさりと剣を弾かれた。


「……リリアーナ、強くなってない……?」

エドモンドは小さく呟いた。


練習場に静寂が落ちたまま、マルグリットはしばらくリリアーナを見つめていた。

「……驚いたわ。ここまで出来るなんて思ってなかった」


リリアーナは汗を拭いながら、少し照れたように笑う。

「ありがとうございます」


けれど、マルグリットの瞳はすぐに厳しくなった。

「でも、勘違いしないこと。今のは訓練場での話。相手は魔鳥、人の心があるわけじゃない。本当の戦場は違うの。恐怖で体が固まることもあるし、予想もしない怪我や不運だってある。……どんなに強くても、死ぬ時は一瞬よ」


リリアーナは真剣な表情でうなずいた。

「……わかっています。私の、我が儘であることも。それでも、やりたいんです」


マルグリットは言葉を失い、目を伏せた。


彼女は歩み寄り、リリアーナの頬にそっと触れる。

「あなたは私にとって娘のように大事なのよ。可愛くて、心配で仕方ないの。……だから、どうか絶対に無茶はしないで。命を投げ出すことだけは、許さないわ」


リリアーナの胸に、温かさと責任の重さが同時に広がった。

「……はい」


マルグリットは小さく頷き、ようやく表情を緩めた。

「……エドモンド、必ず、守りなさい」

エドモンドは無言で頷いた。


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― 新着の感想 ―
辺境伯家としては、ヒロインさんは要人の一人ですし、護衛スキルを備えた侍女を常時付けて、定期的に報告をして貰うなど、出来るでしょうし、しておくべきでしょうね。
 試され過ぎる大地の温かい家族…(´;ω;`)
この世界の親ってみんな子を放置するの? リリアーナがこの地に来てそれなりの日数経ってるはずなんだけど、なんでリリアーナの能力全然知らないの? 今更力試しとか意味わからない。 リリアーナの事何も見てない…
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