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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第1章

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特別試験

学院の訓練場に集められたリリアーナ。対面するのは剣術指導の教師、そして見守るのは他の教師五人。

試験開始の合図が鳴ると、リリアーナは走り出した。


(最初から全力でいく。出し惜しみしては――この先生方に届かない!)


初手から魔力を剣にのせ、鋭い踏み込みで斬りかかる。

魔力の乗った一撃に教師の眉がわずかに動いた。


「……ほう、最初から全力か!」


木剣が打ち合う乾いた音。リリアーナの剣筋は淀みなく、攻めも守りも怯みがない。

しかし、教師は余裕の表情でいなす。時に押し返し、時に空を切らせる。


「悪くない! だが、ここまでか!」


叱咤に似た声にリリアーナは食らいつき、さらに魔力を込める。

全力で挑んだ数合――最後は教師の強烈な一撃に押し戻され、剣が弾かれた。


「そこまで!」


汗を拭い、肩で息をするリリアーナ。教師は満足げに頷いた。

「見事だ。この力量ならば、騎士科の上級生と共に学ぶに相応しい」


他の教師たちも頷き、記録に判を押した。



場所を移し、薬草が無造作に並べられた机の前に立つリリアーナ。

薬学教師が告げる。

「では、この薬草を一つずつ説明し、その用途を述べなさい」


リリアーナは手に取りながら、迷いなく答えていく。

「これは胃を整える作用があります。ただし多量に用いると吐き気を催すので分量に注意が必要です」

「こちらは切り傷や火傷に。粉にして外用しますが、熱を加えると有効成分が失われます」


教師たちは顔を見合わせ、驚きを隠せない。


「では次に、この場で調剤を」


器具も最小限。与えられた薬草は種類が限られている。

リリアーナは即座に組み合わせを考え、手際よく刻み、すり潰し始めた。


「……この環境では完璧な処方は難しいですが、鎮痛作用と精神を落ち着ける薬袋を作ります」


薬草を布に包み、仕上げた香り袋を差し出した。ほのかに爽やかな香りが漂う。


薬学教師は頷き、笑みを浮かべた。

「即興でここまで……まるで薬師のようですね。合格です」


他の教師たちも次々に判を押す。




リリアーナが剣と薬の試験で教師たちに認められた――その知らせは、あっという間に学院に広がった。

優待生でありながら実力まである。しかもユリウスと親しいと見られている。


王女の唇は、笑顔を作っていてもわずかに引き攣っていた。


(なぜ……。なぜあの娘ばかりが注目を浴びるの? ユリウスも……私を見ずに、あの娘の存在を気にしているじゃない)


その夜、王女の寮室では重苦しい空気が漂っていた。

取り巻きの貴族令嬢たちはいつも通り王女に取り入ろうとするが、王女は一段と冷ややかだった。


「あなた……今の話、本当かしら? 聞いた噂を私に持ってきただけではなくて?」

「い、いえ、確かに……剣術も、薬も、上級生に混じるとか……」

「ふん。役立たず」


冷たく吐き捨てられ、令嬢は震え上がる。


王女は椅子の肘掛けを強く叩いた。

(リリアーナさえいなければ、ユリウス様は私を見てくださる。私こそが相応しいのに!)


やがて、王女の瞳に鋭い光が宿る。

「……そうね。彼女は実力があると皆が認め始めている。だからこそ、公衆の面前でその評判を打ち砕く必要があるわ」


取り巻きたちは息を呑む。王女の声は氷の刃のように冷酷だった。


「人前で、誰もが見る場で、あの娘に恥をかかせる。二度と顔を上げられぬように―」


王女の指が細く長い扇子をしならせる。

その扇の動きは、獲物を弄ぶ捕食者のように優雅でありながら残酷だった。




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― 新着の感想 ―
>訓練場に集められたリリアーナ この部分ですが、リリアーナ1人に対して「集められた」を使うのはちょっと違和感があるので「呼び出された」などに言い換えたほうが良いかもしれません。
リリアーナは悪くないけど、恋愛タグはやめてくれ。
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