第一話 転生しちゃった...?
これが転生というやつなのだろうか?
生前、憧れだった女性らしい声帯、女性らしい顔立ちを手に入れた。
しかし、転生したからといって運動能力、学力が他の人よりも優れているわけではなかった。
なんなら前世よりもそれらの能力は低い、主に運動能力。
でも、私は嬉しかった。
生前はスタートラインにすら立つことのできなかったが、今は違う。
白線を超え、踏み出す歩幅は明らかに小さいが、進むことができる。
もしかしたらなれるのかな?
憧れのvtuberに!!
僕が転生に気づいたのは中学三年生の卒業式を迎える三日前。
その日、僕は幼馴染と最近話題のお店で昼食取っていた。
「ハアー...」
幼馴染の神崎真奈の様子が先程からおかしい。先程、スマホをみてから呆然としている。
「さっきから元気ないけどどうしたのよ。押しのアイドルのライブチケットがハズレでもしたの?」
「違う、違うよ!!!椿ちゃんが引退しちゃうんだよ!!!」
椿?その名前に覚えがあった。友達や親戚ではない類の人の名前であることはわかりきっていることだが。
「その人って何をしている人なの?芸能人?それともvtuberってやつ?」
「そう!椿ちゃんはワールドバーチャルスターのトップに立つvtuberだよ!!しかも、椿ちゃんは世間にvtuberという存在を浸透させたスターアインの一人なんだよ!他にもね...!!!」
「いや、もう、それ以上は大丈夫。椿ちゃんがvtuberってことがわかっただけで十分だから。」
椿ちゃんを知らないのは人生の七割を損していると、謎の理論を展開され、私に複数のURLを送りつけてきた。
そのURLを家に帰ってからタップしてみた。
ん...?
動画の投稿日を見ると17年前と表示されていた。
「私達が生まれるよりも前の動画じゃん。なんでこんなに昔の動画のURLを送ってきたんだろう?動画のタイトルを見る限り、歌っぽいけど。」
広告が流れたあとに流れる美声に私は圧倒されるとともにに過去の記憶が呼び覚まされた。
生前、僕はトランスジェンダーで苦しんでいた。そんな中、椿ちゃんの存在を知り、僕は彼女に救われた。
彼女は僕と同じく身体は男、心は女である状態に苛まれていた。しかし彼女は苦難を乗り越えて性転換手術をして女性となった。僕と同じような彼女がvtuberとして人気を集めているのがなんだか親しく感じ、家族や友人から嫌がらせを受けていた僕に生きる希望を作ってくれた。
しかし、僕は十分な食事を与えられずに死んでしまった。
でも、女子に慣れたのだから死んで良かったのかもしれない。