模擬戦。+おまけ。
『…はじめなの。』
ここは始まりの街。 とある施設の中にある、演習場。 今ここに、星の魔法少女と。
『やるからには本気で行きますよ…。』
『…ああ。 かかってこい。』
模擬刀をぶつけ合う二人の姿が。
片方は巧みに相手の身体の隙を狙って攻撃を仕掛け続けるシズヤの姿。
片方はその攻撃を受け流しつつ、正面よりの攻撃を繰り返すアルフレッド。
『…記録のために戦ってもらっているけど、迫力あるの〜』
そしてそれを眺めながら『記録』をとる私。
『シズヤはいい筋を見つけ続けてるの。 1…2…うん。 速度も見た通りなの。』
剣を打ち続け、一度離れたあと、いつの間にか相手の後ろに移動して一撃を取ろうとする。
『アルフレッドは…対処がいいの。 流石といったところなの。』
シズヤの攻撃を流し続け、体勢が崩れ続けた瞬間、斬撃に移っている。シノビの里で見かけた攻撃も多々見えるの。
シズヤは普段、魔剣を使うから、その分の力の使い方を理解している。
対するアルフレッドは、地力が出しやすいから有利かしら…っ!?
『…さあ、受け止めてみせろ!』
『…!? くるっ…!』
シズヤがその場で相手の行動を見続ける。
『これが人の業だ。無双天幻!!』
圧倒的な気迫から繰り出される一撃目。
模擬刀が槍に変わり、横薙ぎの攻撃。
シズヤは正面から受け止める。 模擬刀を縦に受け止めつつ、力を最小限に流し続ける。
『…次だ。』
二撃目。引き戻した槍を、相手の胴体目掛けて突き刺す。
シズヤは…その攻撃をギリギリで避ける。
腹のわずか数センチを通る攻撃を、私は正確に見る。
『…これでっ』
『終わりではない。』
目で捉えるにはあまりに速い移動。先程まで槍の先の位置に、彼はいる。
特有の戦法。シノビの里のものなら、会得していてもおかしくはない移動。
『…!?』
シズヤの反応が遅れる。
『…これが無双三段だ。』
その位置から、槍を振り回す。単純な回しではなく、相手の対応できない位置を狙う、文字通り人の限界を詰めた行動。
なんとか対応したシズヤも、次第に押されて…
『そこまでなの。』
行動を予測して、あと0.5秒で一撃を与えるタイミングで、終了を合図する。 両者その状態で固まる。
『…どうだ?』
『…あの…。』
少し息を切らせて、何かを伝えようとするシズヤ。
私は拍手しながら、
『…アルフレッド、いい一撃だったの。 …けど、忘れてない?』
動きが固まる。
私が模擬にしていしたルールは、『技を使わない』こと。
『お陰で急な行動に対応できずにやられかけましたよ…』
『…すまなかった。』
そんな二人を見て、…まあ、今から二回目をやってもらうには、早すぎるの。
一息ついてから、その場を収めるの。
おまけ☆
『…ねえ、アルフレッド…どうしてこうなったの!』
始まりの街に、排気音が高らかになる。
…アルフレッドが、赤い車を乗り回して。
『シャチホコ』
…狂ったの。
絶対走っちゃいけないところで、思いっきりドリフトをして周りが悲鳴であふれる。
『アルフレッドー!? 聞こえてるのー!? や!め!る!のー!』
『許してヒヤシンスは丁寧な謝罪の言葉。
ヒヤシンスには謝罪の花言葉があり、某国では許してほしい相手のデスクにヒヤシンス一輪と謝罪の手紙を添えることもあるそう。だか…』
…もうそのままにしよう。 呆れて半眼で遠くから見続ける私。もう少しの間、悲鳴と意味不明な言葉が行き交っていましたとさ…。