魔法国の盗賊6
今日はついに盗賊たちに襲撃をかける日の前日だ。
俺の部屋にフレイヤ姉様が話に来た。
「何だ愚弟よ、緊張しているのか?」
姉様は緊張なんて微塵も感じない様子で言う。
「そうかも知れません。」
そう。俺が次、自分の手で人や魔族を殺したり仲間が殺されてしまったらどうなるかわからない。魔族と戦った時より強くなっているのは実感している。でもこれでいいのかと不安になる。
今からの戦いは誰がどう死んでもでもおかしくない小さな戦争のようなものなのだから。
俺は結局どうしたいのだろう。
今の俺は力も覚悟も何もない。何かを成し遂げたわけでもない。
だが俺には1つだけ譲れないものがある。奪われることだ。
だがもし俺が王になって魔法国と戦争をするとなったら何万もの命をお互いにかけて奪い合うのだ。
そんなことを平和な日本に居た俺が出来るのだろうか?大きな疑問だ。
この世界の人達にとって戦争とは日常的なもので盗賊や人さらいなどがいるので常に危険、死と隣り合わせなのだ。でも俺はこの世界で作られた人格ではない、安全でこの世界での危険など1つもないような世界で生きてきた人格だ。そんな人間がこの世界の兵にいざとなったときに死んでこいと言えるのか?
「命の重み1つ1つのことを考えてなどいたら兵士はもとより王など絶対に心が壊れるぞ。兵士はあくまで目の前の相手にお互いの命をかけ殺し合うのだからまだいいが王は自分の命はほとんどかけず自国の兵士に相手の命を奪ってこいと時には死んでこいとまで命令しなければならない。それが出来ないと思ったからお前は愚弟なのだ。」
姉様は気づいている。俺の甘さを。アメリア様のことを見て見ぬふりをした甘さを。
「愚弟、甘さを捨てなければ王になどなれんぞ。いや王にはなれる、愚王でいいのならな。」
「でも」
「愚弟よ。アメリア様を罪悪感から放置してどうなった?街道が塞がれただろう。じゃあこの責任は誰がとる?アメリア様か?だがもう起こってしまったことを誰かのせいにしても仕方がない。責任は戦う兵士達に負わされるんだよ。アメリア様を放置したせいで我が国の兵は今、いやこの国全体が死地に立たされている。愚弟、お前はどうしたい?何がしたい?」
「奪われたくない、だから魔王にも負けないくらい強くなりたい。」
「だが絶対に奪われないなんてことはない。いかにお前が強くなろうと1人で国を守るなど無理だ。」
「だったらもう次の世代は奪ったり奪わてたりしない世界を作りたい。」
「今、相手は奪おうとしてくるぞ。」
「だったら逆に奪ってやる。こんなところでつまずいてる場合じゃない。」
「だが奪ったり奪われたりしない世界など作れないぞ。この大陸の王達が示しているだろう、何年も何十年も何百年も無駄に戦いが続けられているこの大陸の戦争が。簡単に言えば背負えないのだ。この大陸を統一するために流れる血と命の数を、そして自信もないのだ。絶対に統一してやるという強い思いが。だからこの大陸は1つになれない。英雄王は誕生しないのだ。」
「俺は統一する。この大陸を、自己満足だったとしても。」
「自信はあるのか?途中でもう無理ですなんてことは言わせんぞ。」
「ある。」
「なら王になったら愚弟呼びを変えてやろう。だがまずは学園でトップの成績だ。」
「分かってる。」
「私も少しお前の行く学園国家のことを調べた。この学園は世界中の天才たちが集まって来る場所だ。簡単に言えば小さな世界だ。次世代に出てくるような奴らがこぞって出てくる。今じゃこの学園の成績は国の成績。毎年世界中が注目している。そしてこの学園は対象の国から平等な人数を入学させる。対象の国は12カ国、もちろんこの大陸の7カ国も入っている。1つの国が指名で入学させられるのは毎年3名のみ。あとはランダムで選ばれた子供たちが入学する。」
「1つの国から何人選ばれるんですか?」
「指名された3人以外に7人、1つの国につき10人が12カ国分来て120人4クラスに分けられる。」
「成績トップで卒業できれば」
「お前が王で決定だろう。今、この国は最高順位が8位、周りの国はこの国の次世代は弱いと思われている。」
「姉様はなぜそこの学園に行かなかったんですか?」
「簡単なことだ。めんどくさい、それだけだ。」
「あ、はい」
「ちなみに王族で1位で卒業したのは1人もいない」
「一人もですか?」
「ああ。甘やかされて育てられてはこの学園では勝てないということだ。」
「面白くなってきました。」
「そう言って入学してから泣くなよ。」




