操縦機
これまで経験がなかったから、上から線路を眺めていてもいまいち実感が沸かなかった。画面いっぱいに広がる無機質なビルディングと重苦しい曇天以上の印象はいまいち与えられなかったし、右方に見える商業施設らしい建物にもやはり活気などは見受けられず、むしろ廃墟になりたてのように見える。
「つまんない映像だね」サラは僕の隣で呟く。
「うん、本当につまんないね」
「でもこれ以上移動しても、きっと同じ風景しか映らないよ」画面から見える鉄の棒が水平線に向かって更に伸び続けている。
「でも分からないじゃん。もう少しだけ動かしてみようよ」僕がそう言うとサラはムスッとした表情でコントローラーを僕に半ば投げるように渡した。ただコントローラーは操縦機が安定したホバリングを続けるような指令を出し続けて、映し出される風景は一定のままだった。
全長三十センチメートルほどの機体が再び動き始める。僕の慣れない操縦で機体はぐわんぐわんと揺れ動き、カメラも同様にぶれる。さっきまで写っていた風景も歪み、それを見たサラは「さっきより面白いよ」と手を叩いて笑う。「でもあまり動きすぎたらだめだよ、電波が届く範囲じゃないと墜落しちゃうから」
仕方なく僕は操縦機をこちらに戻ってくるよう指示した。すると帰巣本能が働いたように、操縦機は寸分も狂わず、現在地と目的地の二点を直線で結んだように、文字通りまっすぐ帰ってくる。時折目の前に現れる高層ビルもひょいと避けて、危なげなくこちらの方に向かっていく。僕らはその様子をずっと眺めていた。
「この映像が一番迫力あって面白いね」サラは面白い、と言いながら少しつまらなさそうに画面を見ていた。きっと最初からこうすればよかったのに、と思いながら。
操縦機が僕らのところへ戻ってくると同時に僕はカメラを渡そうとした。するとそこには、サラの表情が映っていた。
「さっきのよりももっと良いものが写ってるよ」僕は言う。
するとサラは、なになに? と言いながらも僕の思惑にすぐ気づき、慌ててコントローラーの電源を切った。すると操縦機は僕の胸元くらいの高さから、急に意識を失ったように墜落した。その時にぐしゃあと嫌な音がした。
僕とサラは数秒立ちすくんだ。その後サラは「お前のせいだからな」と捨てぜりふを吐いて車の方へ歩き出した。僕も慌てて操縦機を抱えて彼女を追いかけた。どうやら音の割に、操縦機はそれほど壊れていないと気づいて、走った。




