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アイムキャット❕❕~猫王様の異世界観光~  作者: ma-no


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29 魔王城の攻略にゃ~


 魔王城に着いた勇者パーティは何度も魔物に襲われていたが、巨大な橋を渡り切って城の中に入って行った。わし達は遠くからそれを確認したら、小走りに追いかける。


「すっごいわね。阿蘇山も真っ青よ」


 その道中、下を見たべティはマグマの海に驚いていたので、わしも覗き見る。


「こんにゃ活発な火山活動の場所にゃんて、日本には無いにゃろ。てか、こんにゃとこあったら、絶対に立ち入り禁止にゃ~」

「そりゃそうか。異世界ならではの醍醐味なのね……あ、そうだ。竜の山では忘れていたけど、マグマをバックに撮って~。あと、魔王城もね」

「交代だからにゃ~?」


 異世界観光が楽しいわし達は満喫。カメラを回して写真を撮り合ったり、カメラのタイマー機能を使って集合写真を撮るのであった。


「あの……遊んでいるうちに、勇者様が倒した魔物が復活したんですけど……」

「アオイさんもノリノリだったにゃ~」


 本当に遊んでいたからアオイの言葉に反論はできないが、アオイも忍者っぽいポーズを決めて撮れと言ってたから同罪だ。

 しかしながら橋の中央で遊んでいたから、前も後ろも魔物に塞がれてしまっているので対応せざるを得ない。


「その丸っこいのだけはわしが処理するから、残りは任せたにゃ~」

「「「「にゃっ!」」」」


 簡単な指示を出したらアオイまで変な掛け声を出していたので、わし達に染まりつつある模様。


「アオイさんは別に『にゃっ!』って言わなくてもよかったんにゃけど……」

「へ? あ……行かなきゃ!!」


 なので注意してみたけど、それよりも戦いたいみたいなので、べティ達に乗り遅れないように走り出したアオイであった。



 この橋に群がる魔物は、岩っぽい魔物のオンパレード。トカゲにカメにゴーレム、ガーゴイルみたいな物が飛んで来たりしていて、その全てが岩肌なので防御力に優れていると思われる。


 そんな魔物でも、コリスならワンパン。

 べティはザコならナイフでひと突き。大物でも数回斬ったらチリとなる。

 ノルンの武器は針だから接近戦は無理かと思ったが、岩肌をチクチク刺して倒していたから不思議。

 アオイだけは苦戦気味。クナイでは攻撃力が低いらしく、レベル差があっても倒すのに時間を取られている。


 そんな皆の戦闘をスルスル抜ける影の正体は、このわし。丸い岩に刀を突き刺して次々とチリに変えて行く。

 この丸い岩の正体は、爆発する魔物。勇者パーティのフェンリルのレオが倒し損ねて爆発したところをハルトが庇っていたのを激写していたので、いちおう気を付けている。

 ちなみにハルトもそこまでのダメージは受けていなかったから、のん気に撮影を続けていたわけだ。

 丸い岩だけでなく、空からの敵もわしの担当。風魔法【鎌鼬】でガーゴイルは斬り裂けるので楽勝だ。


 そんなこんなで散り散りに動いていたら魔物は一掃できたので、ドロップアイテムだけ手分けして集めて、わし達も魔王城に足を踏み入れるのであった。



 ドデカイ扉をムリヤリ開け、皆を広いエントランスのような場所に通して手を離してたら、扉は「ドーン」と大きな音を出して閉まった。


「勇者君の時って、こんな音鳴ってたっけ?」

「遠かったからにゃ~……たぶん鳴ってたんじゃにゃい?」

「そっか~……シラタマ君が開けた時より、大きく開いていたように見えたんだけどね~。それより、勇者君はどの道通ったんだろ?」


 べティとのん気に喋っていても勇者パーティを見失っているのは変わらないので、わしはハルトのポケットに忍ばせておいた宝石魔道具の反応を探る。


「あっちのほうに反応があるんだけどにゃ~。反応が上にゃから、上の階を歩いてるみたいにゃ」

「広そうなのに、もう階段を見付けたんだ~。てか、階層違ってても追えるの?」

「それは……クンクン……あ、王女様の使っていた香水が残ってるから楽勝にゃ」

「やっぱりシラタマ君って犬みたいね」

「猫だにゃ~。行くにゃ~」


 サトミの香水は日が経つに連れて強くなっていたから、人間だってあるいは嗅ぎ分けられるはず。おそらくわし達と違って洗濯もしていないから、服についたにおいを香水で誤魔化しているのだろう。


 だからべティさんはわしのことをにおいフェチの変態とか言わないでください。アオイさんも信じてクナイを向けないでください。


 何やら茶化すべティと何やら疑うアオイとわいわいやりながら進んでいたら、階段に到着。勇者パーティを追おうと皆で上っていたが、わしは慌てて指示を出す。


「コリス! アオイさんを連れていますぐ下りろにゃ! ノルンちゃん、撤退にゃ~!」

「うん!」

「うんだよ~」


 コリスがアオイを抱いてわしはべティを肩に担ぐと、すたこらさっさ。階段を下り切り、身を隠せるスペースに入って土魔法でカモフラージュしたら、階段を使う者達の会話に耳を澄ませる。


「行き止まりでしたね」

「ひょっとしたらこの城、迷路になってるのかもです。マッピングしながら進みましょう」


 これはサトミとハルトのセリフだ。どうやら勇者パーティは二階に上がって探索していたら、行き止まりだったので引き返して来たみたいだ。


「さっき大きな音がしたから、一階は早く抜けたいですね」

「はい。それに人の声みたいなのもしましたし、出るのかもしれません……」

「で、出るってオバケですか!?」

「あはは。魔物ですよ。王女様は怖がりですね~」

「もう! 変な言い方しないでくださいよ~」


 サトミとハルトがそんなことを言いながら離れて行くと、わし達は隙間から出て話し合う。


「迷路だってにゃ。こりゃ、時間が掛かりそうだにゃ~」

「それより王女様が大きな音とか言ってたけど、やっぱりあの扉って、音を立てずに閉まるんじゃない? きっと開け方とかあったのよ」

「もう入ってしまったんにゃから、その話はよくなくにゃい?」

「バレる心配をしてるのよ! ここからは、さらに注意して行くわよ!!」

「「「にゃっ!」」」

「にゃ~にゃ~」

「そこ! へ~へ~とか言わない!! ムグッ」


 わしが面倒くさそうに答えたら怒られたけど、慌ててベティの口を塞ぐ。勇者パーティにバレないようにしろと言ってる者が大声を出していたのだから当然だ。

 それからしばらくここで待機していたら、二度ほど勇者パーティが通り過ぎて行ったので、その都度、土魔法で作った壁に隠れてやり過ごしていた。


「これって……迷ってない??」

「うんにゃ……また来たにゃ!?」


 べティはわしと同じ考えをしていたので、また勇者パーティをやり過ごしてから覗き見る。


「ヤバイにゃ……王女様が地図持ってるにゃ……」

「あの子、西も東もわからなかった子よね? このままじゃ、一階すらクリアできないんじゃ……」


 方向音痴のサトミ主導で動いていては、クリアできる物もクリアできない。なので、わし達は「にゃ~にゃ~」会議とランチ。

 その結論が出た頃に勇者パーティはここの階段から二階に上がって行ったので、わしは行動に移す。


「じゃ、行って来るにゃ~」

「見付からないように気を付けてね~」


 もうここは、わしが先行して進むしかない。わしはベティ達が見付からないように壁の処理をしてから、ノルンを連れて魔王城を走り回るのであった。



 この程度の迷路は、以前、時のダンジョンという場所でわしは経験済み。かといって、一階では裏技を使えないので、目にも留まらぬ速度で走り回り、見付けた階段から一気に二階へ。

 ここでわしはズル発動。鼓膜を痛める危険のある大きな声と魔力を乗せた探知魔法でフロアの形状を把握し、一筆書きの地図を作成する。


「つつつ……そんじゃあ、分かれ道が来たら教えてにゃ~」

「うんだよ~」


 その地図をわしが持って、ノルンが見ながら走れば、上の階に進むのはあっという間。もしもその階段の先が行き止まりでも、上がった先で強く探知魔法を使えば無駄に進む必要はない。

 二階からは魔物が出るようになっていて見た目から強そうに見えるけど、わしに掛かれば銅像のようなモノ。一瞬で斬り殺し、ドロップアイテムを拾って先に進む。


 たまに罠はあるが、落とし穴はわしの速度では落とすことはできず。壁から槍や炎が出て来てもすでに通り過ぎている。床に電気が走る罠もあったが、ピリッと来ただけでわしの防御力では意味をなさない。

 ただし、新しい道を作るギミックには苦戦。ノルンと「にゃ~にゃ~」相談しながら楽しく越えて行く。試行錯誤されたギミックの謎解きはけっこう楽しいのだ。


 そうこうしていたら、30階もあった迷路も完全攻略。というか、これ以上進むと勇者パーティの出番を奪いそうなので引き返したと言うほうが正しい。

 わし達は地図を見つつ、勇者パーティと出会わないように気を付けながら、一階で待機していたべティ達と合流するのであった。


「にゃあにゃあ? あいつらまだ一階に居るんにゃけど……」

「そうなのよ……どうなってるのよ……」


 わしが戻ってげんなりしながら質問すると、べティも似たような顔で返すのであったとさ。



 このフロアは魔物の一匹も遭遇しなかったから、勇者パーティは小部屋で夜営の準備をしていたので、わし達も適当な部屋を土魔法で塞いで夜営の開始。今日も出来合いの物をお腹いっぱい食べてお風呂は忘れない。

 それからわしは一仕事。地図を書いたノートに、見やすく壁を書き足したりヒントを書いたり日課の日記を書いたり。外に出て軽く細工をしてから眠りに就くのであった。



 翌日……


 わし達は準備を済ませたら二階に上がり、階段近くに土魔法で作った壁の裏に隠れてドキドキしていた。


「勇者君達、迷わず来てくれるかしら?」

「あれだけ目立つ矢印を書いておいたんにゃから、大丈夫じゃないかにゃ~?」

「罠だと思う可能性もあるでしょ」

「あ……ホンマにゃ……もうここは、罠でもすがることを祈るしかないにゃ」


 昨夜、勇者パーティが寝ている部屋から二階に上がる道順を、土魔法を使って一直線の矢印を書いてみたが、わしとべティは超心配。祈るように待っていたら、意外と早くサトミとハルトの喋り声が聞こえて来た。


「あの矢印はなんだったのでしょうね」

「道順だと思いますが……すでに一階はクリアしてたから必要なかったんですけどね」


 どうやら勇者パーティは、昨日ここまで来ていたようだ。しかし夜になっていたから戻って夜営をしたっぽい。


「なんとなく迷路の傾向も見えて来ましたし、今日も私に任せてください!」

「いや、その……」

「行きますよ~!」


 ハルトは王女様であるサトミに逆らえないらしく、止めようがない。何か言い掛けたが、口を閉じて歩き出したのであった。


 その現場を覗き見ていたわしとベティはと言うと……


「王女様、まだあんなこと言ってたわよ? これ、どうすんのよ??」

「ハルト君が怒れば解決するのににゃ~……攻略本に一筆付け足すにゃ」

「なになに?? あ~。なるほどね」


 こうしてわしの「王女サトミ追放計画」が始まるのであった。


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