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アイムキャット❕❕~猫王様の異世界観光~  作者: ma-no


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16 勇者誕生パーティーにゃ~


 わしが勇者の剣を簡単に持ち上げ、べティがブーブー文句を言っていたら、ハルトを抱き締めていたサトミがこちらに気付いた。


「その剣は勇者様の物です! 返してください!!」

「危ないから近付くにゃ~」


 するとわしのことを泥棒扱い。サトミが飛び掛かって来たのでわしはスルッと避けて、ハルトの隣に移動した。


「ほいっ。これ、他の人には持てないぐらい重いみたいにゃから、気を付けて扱うんにゃよ?」

「はあ。剣からその情報は教えてもらっていたのですが……シラタマさんはどうして持てるのですか?」

「へ~。剣がいろいろ教えてくれるんにゃ~。他ににゃにを教えてくれたか聞かせてにゃ~」

「僕としては、シラタマさんのことが知りたいのですが……」 

「ただの猫にゃ~」


 わしの情報を出して勇者の剣の秘密を聞き出す。皆も興味があるのか集まって来たので、テーブルと椅子を土魔法で作ってお茶しながら、ハルトの話を聞くのであった。


 この勇者の剣を装備できるのは勇者ただ一人。剣自体に意思があるらしく、わしに持ち上げられてめちゃくちゃ驚いているとのこと。

 使えるのも勇者ただ一人。ステータスが勇者用の物に置き換わり、強力なスキルも使えるようになる。わしにも使えるかも知れないので、もう持たないで欲しいとのこと。

 最後に、脅威が去ったあとは元の場所に戻して、次代の勇者に繋ぐことを約束させられたらしいけど、わしに持ち逃げされないように気を付けろとも言われたそうだ。


「にゃんでちょくちょくわしが出て来るんにゃ~」

「はあ……こんなことをされたの初めてで怖いみたいです。折られそうになったとも言ってますよ」

「わしは優しい猫さんにゃ~」

「自分から優しいとか言う者は怪しいと言ってます」

「もう通訳するにゃ~」


 剣は喋らないのにハルトがわざわざ教えてくれるので、なんだかよけい突き刺さる。わしが誘拐犯みたいなんじゃもん。サトミも睨んでるし……


「さってと……わし達の出番はここまでだにゃ。頑張って魔王を倒してくれにゃ~。みんにゃ~。行くにゃよ~?」

「待ってよ~」


 これにて、マジカルべティ&ノルンの魔法少女伝説は完。本物の勇者が伝説を築くことを期待し、わしは手を振りながら立ち去るのであった……


「にゃ?」

「修理費……」

「あ……支払いにゃす。でもその前に、さっきすんごい手が伸びてにゃかった?」


 しかしながら、鬼の形相で伸びる魔の手を持つシスター長に捕獲されて、わしは別室に拉致られるのであったとさ。



 別室で金貨を山積みにしてあげたら、シスター長は鬼の目にも涙。孤児院も運営していると聞いたので、修理費と同じ額を寄付したので感謝してくれた。

 この世界で稼いだお金はたぶん使い切れないと思うので、帰り際にはここで落とす予定だ。


「これで夢の金貨風呂ができる……」


 シスター長は銭ゲバっぽいので、やっぱやめようかな?


 渡した金貨では湯船にはまったく足りないと思いながら部屋を出ると、サトミ達が待ち構えていたので理由を聞いたら、足が無いとのこと……城まで送って欲しいそうだ。

 かっこつけて別れた手前、もう一度会うのは恥ずかしすぎる。ここは逃げてやろうかと思った矢先、サトミからパーティーをすると聞いたコリスに説得された。美味しい料理が山ほど食べれると聞いたっぽい。


 コリスが懐柔されてしまっては仕方がない。バスを出してサトミ達を城に送り届けるわしであった。


 勇者誕生パーティーは夜になると聞いたので、城の庭を借りて勝手にランチ。コリスは城に着いてすぐ食べれると思っていたらしく、超ガッカリしていたのでかわいそうだったからだ。

 ついでに超緊張しているハルトも誘ったら、サトミとアオイもついて来た。猫の国料理が食べたかったらしい。


「わしが勇者じゃにゃいと知った途端、手のひら返ししたクセににゃ……」

「その節は申し訳ありませ~ん!」

「お、王女様に土下座させてる……あわわわわ」


 わしだって嫌みのひとつも言いたい日がある。しかしそのせいでハルトに、わしが王女様に土下座させる極悪人に見られたので、快く料理を出して心証を良くするのであった。



 お腹いっぱいになったら、パーティーが始まるまでダラダラ。わしとコリスはバスに入ってウトウト。気付いたら全員モフモフに包まれて寝ていた。わしはサトミの胸に居たので、べティに浮気だなんだと言われたけど……

 べティに口止め料に何が欲しいのかを聞いていたら、サトミ達は着替えがあるからと言ってハルト達と共に離れる。べティに白ダイヤを奪い取られていたら使いの者が現れたので、念の為わし達も正装に着替えて会場に向かった。


「あっぶにゃ……」

「正装にしておいてよかったわね」


 会場に入ると、華やかな人達の集団。貴族と思われる老若男女が、きらびやかなドレスやタキシードで着飾っている。

 わし達は和装も考えたのだが、わしは燕尾服。べティはお子様ドレス。ノルンも何故か小さいドレス。コリスだけ、裸でティアラ。

 これで浮かないかと思っていたが、やっぱり浮いてる。貴族の中にはケモミミや尻尾がある人は居るのだが、猫やリスは居ないもん。でも、そこまで変な出席者ではないのか、わし達のことはスルーされている。


 特に喋り掛けて来る人も居ないので、わし達は軽食コーナーに陣取ってモグモグ。べティに「はしたない」と言われていたら、今日の主役が登場した。


 後方の扉から現れたのは、さっきまでとは比べ物にならないほど高そうな装備をつけた勇者ハルトと、ドレスアップしたサトミ。

 その後ろにはお供の、犬用の服みたいなのを着た白狼種のレオと、指輪をベルト代わりにした妖精のモカが続いている。

 ハルトは緊張しまくって手と足が同時に出て歩きにくそうにしているので、サトミが腕を引いているからエスコートする側がどう見ても逆。


「ガッチガチね」

「にゃはは。頑張れにゃ~」


 それでもわしとべティは、孫を見詰める老人の如く、優しく見守るのであった。魂年齢は老人で間違いないけど……



 ハルト達がわしの前を通り過ぎる時には写真を撮り、壇上で玉座に座って待つ武闘王シンゲンの前にてハルトとサトミが(ひざまず)いたら、もう一枚パシャリ。

 逆側から写真を撮りたいなとべティと喋っていたら、ドレス姿のアオイが現れて止められた。わし達の見張りで近くに隠れていたみたいだ。

 それでも「一枚だけ。一枚だけ」とお願いし、べティに気を引いてもらった瞬間に消えるように移動して、ハルト達の真横と正面からシャッターを切ってやった。


「どうにゃ? バレてにゃかった??」

「た、ぶん……いや、何人かざわざわしてるから、気付いたんじゃない?」


 シャッターを切る時にはさすがに一瞬止まったから、出席者に見られた模様。しかしそこまで騒ぎになっていないところを見ると、わしが見えた人はほんの数人だったのだろう。


「何したの!?」

「「シーッにゃ~」」

「あ……」


 それなのにアオイが叫ぶものだから、貴族達に一斉に睨まれるわし達であった。


 アオイが肩身の狭い感じになって反省していたら、シンゲンの激励の言葉のあとに大きな拍手が聞こえて来た。ハルトが勇者として受け入れられたのだろう。

 わし達も遅ればせながら拍手を送っていると、異を唱える大声が聞こえて来る。


「父上! このような平民に魔王討伐などできるはずがありません! どうかお考え直しを!!」


 大声でこんなことを言ったのは、どことなくゴツいシンゲンと似た雰囲気の青髪の男。腰に帯刀しているのを止められていないということは、そこそこ位の高い人物なのだろう。


「にゃかにゃか面白そうにゃイベントが起こったにゃ~」

「本当ね。ここじゃ聞こえないから、近くで見ようよ」

「何が面白そうなんですか~」


 わしとべティは見逃せないと鼻息荒くなっていたら、アオイに止められたけど引く気はない。頬袋がすんごい膨らんでいるコリスも連れて、わし達は貴族どもを押し退けるのであった。



 貴族に睨まれながら進み、最前列に躍り出たわし達。アオイはペコペコ謝っているけど、先行して話を聞きに行かせたノルンから報告を受けたわしとべティは、ニヤニヤしながら喋っている。


「にゃるほどにゃ~。あの人、王女様のお兄さんで、騎士団も従えているんにゃ」

「へ~。勇者じゃなくて、自分達で魔王を倒したいんだ。王族にしては、志はいいじゃない」

「たしかににゃ~……どっち応援しよっかにゃ?」

「あたしは断然、勇者君。あの、人の悪そうな顔が気に食わないわ」

「じゃあ、わしは王子様にしよっかにゃ~。にゃはは」


 ケンシン王子とサトミ王女が何か言い合いをしていたので、わし達もぺちゃくちゃ喋っていたら、辺りが静かになっていたことに気付くのが遅れた。


「お前達……誰が人の悪そうな顔だ……」


 そう。わし達がけっこう大きな声で喋っていたので、ケンシンに聞こえていたから怒って近付いて来たのだ。


「わしは言ってないにゃよ? べティにゃ~」

「ちょっ! あたし、王子派閥に入るって言ったじゃな~い」

「それもわしにゃ~。悪口言ったのはべティにゃんだから、わしの後ろに隠れるにゃよ~」


 べティは怒られたくないが為にケンシンの対応をわしに押し付けて来るが、揉めれば揉めるほどケンシンのボルテージが上がって行く。


「ここまで馬鹿にされては仕方がない……決闘だ!!」


 そして、なんか手袋を投げ付けて来たので、わしは素早く爪で引っ掻きまくってチリに変えてやった。


「ん? アレ? 手袋どこ行った??」


 わしの引っ掻きは誰にも見えていなかったので、ケンシンも手袋を見失って探している。


「にゃんかよくわからにゃいけど、決闘するの、わしでよかったにゃ? 魔王討伐を勇者と代わりたかったんにゃろ??」

「あ……そうだ! こんなことしてる場合ではなかった!!」


 わけのわからない展開になっていたので、わしがレールに戻したらケンシンはシンゲンに突っ掛かって行った。


「父上! 俺と勇者との決闘を認めてください! 完膚無きまでに打ちのめして、俺の強さを証明してみせます!!」


 ケンシンはハルトを指差して直訴すると、次はシンゲンのセリフ。


「あ~。ちょっと待て……シラタマ。そこで何をしてるんだ?」


 しかし、何故かケンシンへのアンサーではなく、わしへのクエスチョン。


「ちょっと記念に写真をにゃ。にゃかにゃか緊迫したシーンが撮れたと思うにゃ~」


 そう。わしは隠れることもせず、カメラでパシャパシャ撮っていたからシンゲンも困っているのだ。


「すまんが、いまは下がっていてくれないか?」

「にゃっ! これは失礼しましたにゃ~。わしに構わず、好きにやってくださいにゃ~」

「下がれと言っているんだ! 撮るな!!」


 わしが好き放題するので、シンゲンはキレたのであったとさ。


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