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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
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羽のもげた(自称)怪しくない(自称)天使(自称)がやって来たら、あなたならどうしますか?拾いますか?捨てますか?《改訂版》

作者: ま¥
掲載日:2021/10/02

「はじめまして♡だーりんっ♡」



これは一体どういうことなんだろう。

目の前に、ボクのことをダーリンと呼ぶ少女が立っている。


軽くウェーブのかかった長い髪。

黄金色の髪は、光に透かせば透き通るような透明感と、雑踏の中でも見つけることのできる絢爛さの両方を持っている。


身長は140cm代後半だろうか?150cmは無さそうだ。

色白の肌に、華奢な体に純白のロングワンピース。


幼さの残る大きく潤んだ瞳は、人の持つ庇護欲を駆り立てる。

誰がどう見ても、彼女の事をかわいいと評するに違いない。



けど、今のボクの脳内はそれ以外の事が占めていた。

それは純粋な疑問がある。



(ここってボクの家なんだよね。

どうしてボクが外にいて、彼女が中にいるんだろう)



ちゃんと鍵……閉めてたよね……?


ちょっと心配になる。

それは後で考えるとして、今解決するべき問題はーー



「えっと、君は誰?どうしてボクの家に入れたのかな…?」


「愛の力です♡」



愛の力ってすごいんだなぁ。

ボクにはちょっと分からないけど。

望んでいた回答とはズレていて、うまく処理ができない。



「だーりんだーりん、ご飯作っているので食べましょ♡」


「いやいや、ご飯って……それにボクはダーーー」


「ほらほらはやく〜♪」


「ちょ、ちょっとまって!靴を脱ぐから引っ張らないで!!」



強引すぎる。

落ち着いて靴も脱がせてくれない。



「あっ、それなら私ご飯温めておきますね〜♪」


「…………」


パタパタと去っていった。

通報しようかと、ポケットから携帯を取り出す。


うーん。


なんだろう。

ここまで堂々とされると逆に怪しくなく感じてしまう。

むしろこの流れについていけないボクがおかしいような。



(姉さんから何か連絡来てたかな……?)



これまでの経験上、トラブルの時は姉さんを疑う。

あの人はトラブルの権化だ。

彼女の事も姉さんが関係しているなら納得がいく。



(……なんも来てないな)



メールボックスには何も届いてなかった。

もちろん報告をしてないだけの可能性もあるけど、少なくとも彼女についての情報が増えることはなかった。

電話をかけようと思ったけど、あの人のことだ。出ないだろう。



「だーりんー、まだですか〜?」


「あー、はいはい。今行くよー。」



普通に返事をしてしまったな。

彼女は一体何者なんだろうか。




○○○○○○○○○○




結局その後、ボクと彼女は普通に食卓を挟んで夕飯を食べた。

実は家に初対面の人がいるのはこれが初めてじゃない。

学生時代から放浪癖のある姉さんは、事ある毎に世界各地の友人を家に招待している。そしてそこに姉さんが同伴しない事も少なく無い。


だからボクは、この現状を受け止めることが出来てるのだ。

まぁきちんと話しておかないといけない事に変わりはないだろう。

そこで改めて事情を聞く事にした。



「ではこれから質問をしていきます。」


「なんでも聞いてください♡」


「君は誰なんですか?」


「元天使で、今からはだーりんのお嫁さんですっ♡」



初手から重い。

全てのワードに突っ込みたくなってしまう。

ダーリン?お嫁さん?元天使?

なんですか、天使って。



「えっと、天使って……あの天使……?」


「想像しているものであっていると思いますよ〜♪」


「あの羽が生えてる、輪っかのある天使……?」


「はいっ!それです〜♪」



ボクの考える天使で間違いはないようだ。

確かにそれなら、一つの疑問は解消されるんだよね。


出会った時からずっと輝いている頭上の輪っか。

聞くか聞くまいか迷っていたけどーーーーー



「例えば……その輪っかも天使のものなのかな…?」


「はいっ!そうですよ!!これです♡」



どうやらそうだったらしい。

いや、まだコスプレっていう線も残っているはず。

それだったらかなり痛い子になっちゃうんだけど。



「あっ、眩しかったですか?消しますね〜」



カチャという音と同時に彼女の輪っかが消えた。


今絶対に紐を引いていた。

ボクは見逃さなかった。


しかも見つけやすくするためなのか、引くやすくする為なのか分からないけど、キーホルダー的なものがついているタイプだった。



「いや!それ丸型の蛍光灯じゃないの!?」


「ふぇ!?」



つい大きな声で突っ込んでしまった。

心のどこかで「もしかしたら本当に天使かも!!」なんて期待をしていたからなのかもしれない。恥ずかしい。



「い、いやごめんね。大声出しちゃった。」


「いえいえ、少し驚いただけなので大丈夫です♪」



正体が怪しい事をのぞけば、すごくいい子だ。

ご飯も美味しかった。

部屋も綺麗になっているし、掃除もしてくれたんだろう。

言葉遣いも丁寧だし、立ち振る舞いもしっかりとしている。


こんなにしっかりしていて(不法侵入は除く)見た目もかわいい子がいれば、男子は絶対に放っておかないだろう。



「そういえば、天使なら羽とかは無いの?」



天使の輪っか(仮)があったのなら羽とかもあるんじゃ無いだろうか。

羽でもあればもう少し彼女の話に信憑性も出そうな気がする。



「羽はもう無いんですよね……」


「ん?もうってことは前はあったの?」


「はい……」



悲しそうな顔になる。

前はあったってどういうことだろう。

家に忘れたとか……?



「で、でも!私はだーりんに出会えたので、羽がなくなったことを後悔はしてないですよ!!」


「え、ボクが何か関係してるの!?」



何かしちゃったのかな。

それなら謝るべきだよね?



「いえ、だーりんが直接って訳ではないんですけど……」



直接ではない?どういうことなんだろう。

なんて事を考えていると、顔を少し赤くした彼女がもじもじしながら上目遣いで見てくる。かわいいね、君。



「わ、笑わないで聞いてくれますか?」


「うん、聞くよ」


「あのですね、私……だーりんに一目惚れしちゃったんです。それで羽がなくなっちゃって…」



ん〜〜〜〜〜?ちょっとまって〜〜〜〜〜?

流れがうまく掴めない。

一目惚れしたって?



「ど、どういう事?一目惚れってどういうこと?関係あるの?」


「えっと……天界の掟で天使は人間に恋をしたらいけないんです……」


「ほ、ほうほう……続けて」


「でもですね、恋心を抱き続ける方法もひとつだけあるんです!」


「な、なるほど……」


「それが転生なんです……っ!!!」



んーーーーー、ナンダッテーーーーー!!!

転生って本当に実在するものなんだね。

漫画の世界のものだと思ってたよ。


って、嘘でしょ?

正直まだ疑っている。



「ただ、転生するには条件があるんです」


「お金とか……?」



彼女が首をふるふるとふる。



「お金とかではないんです。私たちが対価にするものは自分たちの天使としての力なんです」


「なるほど……あれ?でも人間に転生するんだったら天使の力って無くなっちゃうのが普通じゃないの?違うのかな?」


「違わないんですけど、それだと天使に戻れる可能性がまだ残っちゃうんです」



彼女が言うには、人間や動植物が転生して天使になる事もあるらしい。力が少しでも残ってたら天使に転生しやすくなるとか?だから公平性のために力を差し出すのかな?



「天使が人に恋する事は重罪なんです。だから私たちは力を差し出し、罰として人に転生させられるんですよね」



罪とか罰とか、一気に話が重くなった。

それに彼女の表情はすごく真剣で、一切の偽りが無いように感じてしまう。



「そして天使の力をほんの少しだけ残されるんです。罪の証として。この証がある者は、もう二度と天使に戻れないんです」



私の場合はこの輪っかが罪の証ですね。

と彼女は明るく語るが、正直ボクはそんな明るい気分では聞けない。だってこれが本当だったなら、彼女はすごい覚悟で転生をしたってことでしょ……?



「あっ!天使だった証拠です!!光ります!!」



重くなってしまった空気を明るくしようと、彼女が物理的に明るくなった。全身が金色に光っている。

頭部も輝いているので、詳しい表情は読み取れないが、どうですか!と言わんばかりにドヤ顔しているのがなんとなく分かる。



「ーープっ」


「ど、どうして笑うんですか!?」



彼女が今度は恥ずかしそうに訴えかけてくる。



「かわいいなって思って。」


「え、えへへぇ〜〜〜そうですかぁ〜〜?」



光が少し赤くなった。感情とリンクしているんだろうか。

少し面白い。


彼女もすごく楽しそうだ。

だけど、きちんと話さないといけない事がある。



「少し話を聞いてくれるかな?」


「はいっ♡なんでもどうぞっ♡」


「ここまでの話は本当なんですか?」


「神に誓って♡」



そうか、冗談であってくれた方がうれしかったんだけどな。



「あのね、今から大事な話をするよ?」


「わかりました!」


「君はボクのことをダーリンって言ってるけど、ボクはーー」



少しだけ言葉に詰まる。息が苦しくなる。

だけど、きちんと言わないといけない。



「ボクはね、ダーリンにはなれないんだ」



途端彼女の表情が曇る。

そうだよね。

一目惚れして、転生までしてボクの元まで来てくれたんだもんね。

けど。

だからこそ、ここではっきりしておかないとダメなんだ。



「君をボクのお嫁さんにする事もできない」



彼女は出会った時からボクのことを、ダーリンって言ったり、自分のことをお嫁さんって言ったりしていた。

そんな彼女にとってこの話は、とても酷だろう。

それでもボクは続ける。



「君は、ボクをダーリンって言ってるけど、ボクはーーー」



彼女の顔が青ざめていく。

その表情を間近で見ているボクも……苦しくなる。

だけど、言わないといけないんだ。

今この瞬間に。



「ボクはねーーーー男じゃないんだ。こんな見た目だし、こんな喋り方だから誤解してしまったのかもしれないけど、ボクは女なんだよ」



彼女からのリアクションは無い。

ボクもなんて声をかけたらいいのかが分からない。

沈黙が続く。

その沈黙が10秒だったのか、1分だったのか、10分だったのか。はたまた数秒しか続かなかったのか。

ボクには分からなかった。



沈黙を破ったのは彼女だった。



「………………ね。」



これだけの静寂でありながら、その声は聞こえない。

あまりにも小さく、か細く。

彼女の心象が大きく反映されているのだろう。



「そ……だっ……ね。」



怒っているんだろうか、悲しんでいるんだろうか。

絶望しているのだろうか、苦しんでいるのだろうか。

分からない。この雰囲気が、苦しい。



「…そ…だった…んですね。」



声のトーンとその言葉から、彼女の悲壮感が伝わる。

ごめん、そう口を開こうとした時だった。




「なーーんだ、そんなことだったんですね!!!」




暗く、重たい空気に満たされていた部屋に彼女の明るい声が部屋に響き渡った。先ほどの悲壮感からは全く想像もつかない声だった。


無理に明るく振る舞っているのだろう。

その優しさが私の胸を苦しくさせる。



「ごめん……そんなに無理しなくていいからっ!!」


「無理なんてして無いですよ〜♡」


「嘘だ!!」


「嘘じゃ無いですってば〜♡」

「だって私、だーりんが女性だって知ってましたし〜♡」



…………へ?どういうこと?



「私、天使だった頃は男鹿さんと早乙女さんのキューピッドになる事が仕事だったんですよ〜」


「さ、早乙女君とボクの!?」



早乙女光輝ーー同じ高校に通う男子で、密かに恋心を抱いている人物の名前だ。彼女の口から彼の名前が出るとは思わなかった。



「はい!でも、お仕事でお二人を見ているうちに、男鹿さんのことが好きになってしまって///」


「ちょ、ちょっとまってよ!普通早乙女君のことを好きになるものじゃ無いの!?彼だって美形だし、優しいし、何より君女の子でしょ!!??」


「確かに、早乙女さんもすごく素敵な方だと思いますよ?優しいですし、スタイルもいいし。でもーーー」



でも?



「今は恋敵です!!男鹿さんは渡しません!!」



細腕を胸の前に持ってきて、力強く宣言してきた。

ふんす!!と言わんばかりのドヤ顔で。



「それにですね、男鹿さん」


「な、何かな……?」


「私は天使と人間という異種属間での恋心を抱いてしまったんです!!これが何を意味するのかわかりますか!!」


「ごめん、ちょっと分からないかも…」


「ふふふ、すでに種族を超えてしまった恋愛をしているんです!そうなればです!男女の違いなど些細な違いにしかならないと私は思うんですよ!!どうでしょうか!!」


「あると思うよ!?関係あると思う!!」



さっきから急に押しが強くなった。

これが素のテンションなのかな?



「大丈夫です!!私が幸せにしますから!!」


「いやいや、大丈夫だから!!」


「お背中だって流しますよ!遠慮しなくても!!」


「しなくていいから!遠慮なんてしてないから!!」



め、目が怖い。狩人の目になってる。

あ、あれ?キューピッドって弓矢使うよね?

ってことは本当に狩人なのでは?



「じ、ジリジリと近づいてこないで!!」


「優しくしますからぁ〜♡」



完全に吹っ切れてる。

いや、本当に怖いよ!?


かくなるうえはーーーー



「嫌いになっちゃうよ!?喋ってあげないよ!?いいの!?」



動きがピタッと止まる。

お、これは効果的だったのかな?



「そ、そんな……」



カミングアウトの時よりも、よっぽどひどい顔になってる。

真っ青になってるし、涙腺崩壊2秒前って感じだ。



「男鹿さんに嫌われっちゃった……?」



目から光が無くなっていく。

さっきまでの元気はどこへ行ったのか。

もうその体には、1ミリの活力も無い。



「え…と…大丈夫…?」


「もうダメだ……男鹿さんに嫌われちゃった人生なんて……意味が……ない。どうしましょう……」



あ、これはやばい。

涙がポロポロとこぼれ始めてる。



「さ、さっきのは勢いで言っただけだから!!」


「もう……死ぬしかない……」



声が届いてない。

これは嫌いって言葉を超えるインパクトが必要になるのでは?でもそれを超えるものって何!?


ボ、ボクのことが好きなんだよね?

だったら……好き……とか?

いやいや、それは流石に恥ずかしい!!

誰にも言ったこと無いし!!



「男鹿さん……短い間でしたが……お邪魔しました」



だ、だめだこのまま彼女を放って置いたら本当に死んじゃいそう。

うーーーん、こうなったら仕方がない!!

好きとか言うのは無理だけど、これくらいなら友達とだって!!



ギュッ



今にも死んでしまいそうな様子で、玄関へと向かっていく少女を後ろから抱きしめる。なんかすごく恥ずかしい。


腕に包まれた状態で、彼女が私の顔を見上げる。



「お…おが…さん…?」


「ごめんね。ボクのことが好きで会いにきて来てくれたのに。ひどいこと言っちゃったよね。」



今にも折れてしまいそうな、その華奢な体を優しく抱きしめながら優しく声をかける。こんな時になんて言うのが正しいのか、ボクには分からない。

できるのは本心で謝り、思いをきちんと伝える事だろう。



「少しボクも驚いちゃって」


「い、いえ……男鹿さんの気持ちを無視したのは私なので…」


「好きって言ってくれたのは、うれしかったよ」


「えっ……」


「だけど、ボクもすぐには答えることができない」


「そう……ですよね……分かってます……」


「だから、友達から始めることはできないかな?」


「お友達ですか……?」


「うん、ボクはまだ君のことをあまり知らないから。だから、君のことをもっと教えて欲しい。好きな物とか、好きな事とか、行きたい場所とかさ」


「はっ、はいっ!!なんでもお教えします!!言う事も聞きますっ!!なので、私とお友達になってください!!」


「ありがとう。それじゃ一回部屋に戻ろっか」



落ち着いたようなので、一旦抱きしめていた腕を解く。

少し残念そうな顔をした少女だったが、その表情はさっきの彼女からは想像もつかないほど清々しく、嬉しそうだった。


さて、恥ずかしい事を口走ってしまったせいで、照れてしまっていそうな顔を隠すためにも洗面所に行こうと踵を返した時、軽い衝撃を受けバランスが崩れる。


体の上には彼女の体があった。

転んでしまったのだろう。

安心したせいで、一気に体に力が入らなくなったんだと思う。

それにしてもすごく軽い。

羨ましい限りだ。



「大丈夫?怪我とかしなかーー」



『た』の発言はできなかった。

目の前には、頬を赤く染めた潤んだ瞳の少女の顔。



「男鹿さん……私知ってます。人間の方は、スキンシップでキスをするんですよね?感謝の気持ちをスキンシップで伝えるんですよね?」



えっと、ちょっと待って欲しい。



「わ、私キスをするのは初めてなので、どこかおかしな部分があるかも知れませんが、一生懸命に頑張りますので」


「ちょっと待って!?」


「男鹿さん……」



接近する少女の顔。

その距離はグングン縮まり、もう数センチで唇と唇が重なり合う所まできてしまった。これはやばい。



「ストップ!!」


「ど、どうしたんですか?おかしな所ありましたか?」



驚きつつも、自分が失敗したと思っている表情。

うん。いろいろおかしいんだ。



「えっとね、日本はスキンシップでキスしないんだ」


「そうなんですか!?」


「うん」



そっか、彼女はキューピッドって言ってたし、いろいろな人の恋愛を見て来たのかも知れない。その中には世界各地の人もいたはずだ。



「ど、どどどどうしましょう!!私失敗しました!!」



ものすごくあたふたしている。

すごくかわいい。



こうしてボクとサシャは出会い、物語は始まった。

人と異種属の物語が。




○○○○○○○○○○




サシャ 

天界から人間界に転生してきた天使。

細身の体に、緩いウェーブのかかった金色のロングヘア。

千雪のことが大好き。家に住ませてもらってる。

丸型蛍光灯のような天使の輪っかと、体を発光させる能力が残っている。




男鹿 千雪(おが ちゆき) 

両親が海外にいるため、姉と2人で暮らしている。

姉に放浪癖があるためほとんど一人暮らし。

スレンダーな体つきや、口調、中性的な顔つきなどの影響で、性別を間違われる事もあるが、可愛いものが好きな女の子。

髪型は、黒髪のショートカット。女子にモテる。

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