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【 噂の狼 】

 太狼とメリーさんは、服を色々と買った後、

 そのままの足で、他のお店も見て回っていた。





「ね、猫がいますよっ! 太狼さん……」

「あぁ、あそこペットショップだからな」

「あんなのも、売ってるんですね」

「なんだ、猫が苦手なのか?」

「だって、あたし達をボロボロにするんですよ?」

「あぁ、そういう意味か。人形には猫も獣なのな」


 メリーさんは、小さな子猫を見て一人怯えていた。


「太狼さん、あれはなんですか?」

「……ん? チョコレートだろ」

「後ろにあたしの名前が書いてあるんですけど……」

「いや、メリーチョコレィトって店の名前なだけな」

「なるほど、そういう事ですか」


「この世には、お前以外にも『 メリー 』は居るからな」

「でもなんか、自分の名前が書いてあると嬉しいですね」

「なら、チョコ買ってくか?」

「いいんですかっ!? あたし、食べてみたいです」

「別に構わねぇよ、お前の好きなの選びな」

「やったっ! えへへ、どれにしよっかなぁ……」


 メリーさんは、嬉しそうにチョコを選んでいた。



























 一通り見て楽しむと、荷物がパンパンになっていた。


「女性って、予想以上に生活用品多いんだな」

「なんか、たくさん買って貰っちゃってすいません」

「別にいいよ、その為に来たんだしな」


 メリーさんは、大きな抱き枕を持っていた。


「それがあれば、夜はグサッと来なさそうか?」

「多分大丈夫です。これ、とても抱き心地がいいので……」

「そうか、そりゃ俺も一安心だ……」


 幸せそうなメリーさんを見て、太狼も笑みを浮かべていた。


「少し御手洗に行ってくる、荷物見ててくれるか?」

「分かりました、ここで待ってますね」

「あぁ、すぐ戻る……」


 そういって、太狼は傍を離れていった。


 メリーさんは、自分の買ったものを見ながら、

 新しい生活の始まりに、心からワクワクしていた。


 すると、そこに数人の見知らぬ男たちがやってきた。


「ねぇねぇ。君、可愛いね。今、一人?」

「……え?」

「俺らと一緒に遊ばない? カラオケ行こうよ」

「……あっ、いや。その……えっと、人を待ってて……」

「大丈夫、大丈夫っ! 俺らといる方が楽しいよっ!」

「……あの、『 待ってて 』って……言われてるので、その……」

「いいじゃんっ! 大丈夫だから、ほらっ!」

「いこいこっ! 絶対来たら楽しいってっ!」

「や、やめてください。あたしは……」

「いいからいいから、ほら……」


( ……た、太狼さん。助けて…… )


 男たちは嫌がるメリーさんに迫って、数人で無理やり手を掴んだ。



























              その瞬間……



























    メリーさんの体を、後ろから太い腕が抱き寄せた。



























         てめぇら、俺の連れに何か用か?



























 後ろから突然現れた目つきの悪い男に、

 数人の男たちが、一斉に体を震えさせた。


「な、なんだこいつ……」

「こ、こいつ……あの、〇〇高校の狼じゃねぇか?」

「まさか、あの一昨年までいた、歴代最強の裏番っていう……」

「ヤクザの組織すら、たった一人で潰した一匹狼か!?」


「俺の連れに、何か用かと聞いてるんだが?」


「お、おいっ! 逃げるぞっ!」

「す、すすすいませんでしたっ!」

「待てよ、お前らっ! 置いてくなってっ!」


 男たちは太狼を見た途端、走って逃げていった。


「た、太狼さん……」

「はぁ。まだ残ってんのかよ、あの噂……」


 逃げた男たちを見て、太狼は呆れていた。


「大丈夫か? メリー……」

「太狼さん、来てくれたんですね」

「そりゃ、トイレ行ってただけだかr……っ!?」


 メリーさんは目を潤ませながら、太狼に勢いよく抱きついた。


「お、おい。どうした?」

「……太狼、さん……太狼さん……」


「…………」

「……良かった、来てくれた……来て、くれました……」


 怯えて震えるメリーさんを、太郎は優しく包み込んだ。


「悪かったな、遅くなって……」

「怖かったです、太狼さん……」

「もう大丈夫だ、俺がそばに居るからな」


 そういって太狼は、涙ぐむメリーさんをそっと撫でていた。


「太狼さん……」

「無事でよかった、メリー……」





 メリーさんは、太狼を強く抱き締めていた。

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