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【 共に過ごす時間 】

 太狼はメリーさんを迎え入れた後、

 メリーさんの作った手料理を食べていた。





「……うん、美味いな」

「本当ですかっ!? やったっ!」

「あぁ。味噌汁なんか飲んだの、いつ以来だろう」

「えへへっ。これからは、毎日三食作ってあげますね」

「そう言われると、なんだか新婚生活みたいだな」

「……ふぇ?」


 メリーさんは、冷静に自分の発言を思い出し、

 今、自分が割と大胆な発言をしたことを理解した。


「……あっ!? いや、その。違くて……」

「……ん?」

「えっと、その……えへへっ、お節介……だったら、ごめんなさい」

「まぁ、さすがに毎日ってのはな」

「で、ですよね。すいません……調子に、乗りました……」


「ここに住むからって、変に責任感じなくてもいいんだぞ?」

「あっ。いえ、そういう訳では無いんですが。その……」


 太狼は料理を全て平らげて、そっと箸を置くと、

 大きく息を吐いて、メリーさんの目を見つめた。


「せっかく一緒に住むんだからよ」

「……?」

「どうせなら、俺にも料理を教えてくれないか?」

「……え?」



























      二人でやれば、一緒に過ごす時間も増えるだろ?



























 そういって、太狼はメリーさんに笑いかけた。


「……太狼さん」

「その方が、お前の負担も軽減できるだろうしな」


 そう告げる太狼の目を見て、

 メリーさんの胸は高まっていた。


「俺が一緒に居たら、邪魔か?」

「い、いえっ! 是非、お願いしますっ!」

「そうか。なら、良かった……」


 そう答えると、太狼は自分のお茶碗を持った。


「悪ぃんだが、オカワリ貰っていいか?」

「あっ、はい。任せてくださいっ! えへへっ……」


 メリーさんは横にあったお釜から、

 ウキウキしながらご飯をよそっていた。


 そんな楽しそうなメリーさんを見て、

 太狼も静かに、小さな笑みを浮かべていた。



























 ご飯を食べ終わると、二人で食器を洗っていた。


「なんかいいですね、こういう風に誰かと一緒にやるって……」

「そうだな。なんか、俺も止まった時間が動き出した気がするよ」

「そう言って貰えると、あたしも凄く嬉しいです」


「こういう何気ない時間に、『 幸せ 』があるんだな」

「『 幸せ 』かぁ、そんなの考えたこともなかったなぁ……」

「心は一人だと、ほとんど動かないからな」


「あたしなんて、誰かの心にトラウマを刻むだけの幽霊ですし……」

「それはさすがに物騒が過ぎんだろ。別れを告げられたメンヘラ彼女か」

「しょうがないじゃないですか、そういう幽霊なんですもん」

「なら、これからは『 トラウマ 』より、『 思い出 』を増やそうな」

「……思い出ですか?」


「誰かを幸せに出来るやつは、幸せを貰う資格があるんだってよ」

「……そうなんですか?」

「前に婆ちゃんが、よく俺に言ってた」

「でもそれ、トラウマを刻む幽霊は、普通にダメじゃないですか?」

「何言ってんだ。お前はもう、俺に幸せをくれたじゃねぇか」

「……え?」


 真っ直ぐ見つめる太狼の目は、優しい目をしていた。



























         手料理、美味かったぞ。


              ありがとな、メリー。



























    太狼の言葉に、メリーさんは目を見開くと、


          満面の笑みを浮かべて、太狼に言葉を返した。


























「……はいっ! どういたしましてです。えへへっ!」

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