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【 嫌われ者 】

 先にワンタンスープを飲み終えると、

 太狼はスマホを使って、何かしていた。





「……何してるんですか?」

「スマホのゲームだ。今、イベント期間中でな」

「……ゲーム?」

「……あぁ」


「それって、面白いんですか?」

「お前、ゲームやったことないのか?」

「……はい」

「……そうか」


 すると、太狼は立ち上がって、一台のゲーム機を用意した。


「……これは?」

「ニンテンドゥスイッチだ、やってみないか?」

「これ、面白いんですか?」

「息抜きには、なかなかいいと思うぞ」


「な、なるほど……」

「飯にはまだ少し早い、暇つぶしにどうだ?」

「なら、あたしに教えてくれますか?」

「あぁ、いいよ。ほら……」


 そういって、太狼はコントローラーを渡した。


「おぉ、凄い。私の操作で動いてます」

「このボタンを押すと攻撃で、ここで移動……」

「なるほどなるほど。なら、このボタンは?」

「ここはガードだ。相手の攻撃を防ぐ時に使う」

「なるほど、分かりました。やってみますね」


「チーム戦にしとくから、自分なりにやってみろ」

「……チーム戦?」

「俺はお前の仲間だから、攻撃が当たらねぇんだよ」

「あぁ、なるほど。なんだろう、物凄く心強いですね」


 そこから二人は二時間ほど、ゲームに没頭していた。



























 ゲームを終えると、メリーさんは満足気に笑っていた。


「はぁ、楽しかったぁ〜っ!」

「そうか。そりゃ何よりだ……」

「太狼さん、強いですね。流石でした……」

「まぁ、俺はこれで食ってるからな」


「……え?」

「自分の戦いをネットに流すことで、収入を得てるんだよ」

「な、なるほど。そんな仕事があるんですね」

「まぁ、現代はネットワーク社会だからな」


 そういって、太狼はゲームを片付けていた。


「太狼さん、優しいですね」

「なんだよ、急に……」

「普通、見ず知らずの相手にこんなおもてなししませんよ」

「まぁ、普段は人とあまり話さないからな。俺は……」

「……そうなんですか?」


「何故か怖がられるせいで、人が寄り付かなくてな」

「太狼さん、めちゃくちゃ強そうですもんね」

「学校時代は、色んな不良とよく喧嘩もしてたし……」


( えぇっ!? やっぱり、太狼さんって…… )


「それはまた、なんでですか?」

「さぁ、なんか歩いてるだけで来るんだよ」

「……え?」

「俺は普通に過ごしたいんだが、勝手に悪い噂が流れててな」

「な、なるほど。それはまた……」


「そんなのを返り討ちにし続けてたから、友達の一人もいない」

「返り討ちにしてたんですか!?」

「しょうがないだろ、歩いてるだけで襲ってくるんだから」

「ま、まぁ。そりゃそうですけど……」


「そしたら、【 太陽をも喰らう影狼 】なんて呼ばれて始めてな」

「なんですか、その無茶苦茶強そうな異名は……」

「その噂がさらに不良を呼んで、最後にはみんな離れて行った」

「……太狼さん」


「だから、急に背後に何かが迫ると、過剰に反応しちまうんだよ」

(だから、あたしが近づいた時に、あんなに速く……)


「親は昔から居ねぇし、爺ちゃんたちも死んで、今は一人だ」

「なんかもう、人生の理不尽が極まってますね」

「まぁな。だから、俺も今日は楽しかったよ。ありがとな……」

「……ふふっ。いえっ! こちらこそですっ!」





 太狼の言葉に、メリーさんとを満面の笑みを返した。

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