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【 贈り物 】

 メリーさんたちと買い物に行って数日後、

 太狼たちはいつも通りの日常を過ごしていた。





「お兄ちゃん、お姉ちゃん、見てっ!」

「うわぁ、とても綺麗なお花の絵ですね」

「本当だな、良く描けてる」

「えへへっ、お絵描きって楽しいね」

「あたしにも、これぐらいの画力があれば……」


「お前の画力も、他の奴には真似出来ないぞ?」

「それは、どういう意味ですか? 太狼さん……」

「あんな個性的なイラスト、俺は見たことないからな」

「いじわるを言う太狼さんは、晩御飯抜きですっ!」

「悪かったって、そう怒るなよ」

「ふ〜んだっ! ぷいっ!」


 一夜が不貞腐れながら、頬を膨らませそっぽを向く。


「それにしても、クレヨンでここまでかけるのも、もはや才能の域だな」

「太狼さん、なんで色鉛筆は買わなかったんですか?」

「お前らに色鉛筆なんか渡したら、次の日には全て赤一色に染まっちまうだろ」

「そんなことしませんよっ! 寝てる時ぐらいしか……」

「はぁ、説得力の欠片もねぇな」


 すると、ピンポーンッと、家のインターホンが鳴った。


「おや、誰か来ましたね」

「多分、配送業者だな。この間の布団だ」

「あぁ、なるほど……」

「ちょっと待ってな」


 そういって、太狼は玄関へと向かい、

 戻ってくると、大きな箱を二つ抱えていた。


「おおっ! 思ったより大きいですね。これ……」

「アイス食った後に、もう一回布団屋に寄っただろ?」

「あぁ、そういえば寄ってましたね。変更したいことがあるって……」

「あの時、一夜の意見も含めて、キングサイズにしたんだよ」

「そうなんですかっ!? やったぁ〜っ!」


「これだけでかけりゃ、多少、転がっても外には出ないからな」

「これで、新しいメリーさんが来ても大丈夫ですねっ!」

「だから、そういうことを口にするなよ。本当に来るから……」


 そして、もう一つの箱をメリーさん達が見つめる。


「太狼さん、こっちは?」

「にぃに、おふとん二つ?」

「こっちは布団じゃない、お前らへのプレゼントだ」

「……プレゼント?」

「あぁ、開けてみな……」


 メリーさん達が箱を開けると、箱の中から、

 店にあった、巨大なクマのぬいぐるみが出てきた。


「シェ、シェリーちゃん?」

「にぃに、これ……」

「お兄ちゃん、買ってくれたの?」

「あぁ。アイスの時の礼だ、大事にしてやってくれな」


 そういって、太狼がメリーさん達を見つめながら、小さく微笑んだ。


「えへへっ。にいに、大好きっ!」

「やったぁ〜っ! お兄ちゃん、ありがとうっ!」

「おう、どういたしまして……」


 二葉と三凪は、嬉しそうに巨大なぬいぐるみにに抱きついていた。


「よく買う勇気が出ましたね。太狼さん……」

「あぁ、まぁ、店員にはスゲェ目で見られたがな」

「やっぱり、見られたんですね」

「『 お前、こんなの趣味あるの? 』みたいな冷たい視線が、とても痛かった」

「生々しい感想はやめてくださいよ」

「それでも、こいつらがこうして笑ってくれるなら、それだけの価値はあるさ」


 喜ぶ二人を、太狼が嬉しそうに見つめる。


「嬉しそうですね、二人とも……」

「あぁ、そうだな」

「お布団、ありがとうございます。太狼さん……」

「おう、どういたしまして……」


「なんかもう今から、寝るのが楽しみです」

「結局は固まって寝ないと、また背中を狙われるんだけどな」

「えへへっ、そこは愛情表現だと思ってくださいっ!」

「表現の仕方が重いんだよ。お前ら……」

「こんなにスリルと興奮を味わえる愛情表現は、他にありませんよ?」

「愛情表現に、スリルは要らないと思うけどな」





 太狼は呆れながらも、一夜に笑顔を返していた。

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