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【 温もり 】

 太狼は、メリーさん家の前でと出会った後、

 寒いからという理由で、家の中へと上げていた。





( えっと、あたしはどうしてシャワーを浴びてるんだっけ? )


 メリーさんは、当たり前のように困惑していた。

 家は古い一軒家で、一人暮らしには広いくらいだった。




 そして何故か、メリーさんはシャワーを浴びていた。

 シャワーを浴び終えたメリーさんは、そっと脱衣場の扉を開けた。


「あ、あのぉ……」

「……あ?」

「この格好は、流石に……」


 メリーさんは、ワイシャツ一着羽織って出てきた。


「バカヤロウ、それは俺のワイシャツだっ!」

「……えっ? これを着させようとしたんじゃ……」

「それは乾かしてんだよっ! お前のは洗濯機の上のジャージだっ!」

「ごっ、ごめんなさいっ! いいいま、着替えてきますっ!」


 そして、扉が閉じると、再びゆっくり扉が開いた。


「あ、あのぉ……」

「……あ?」

「し、下着とかって、ありませんか?」

「……は?」


「……えっと、その……下着が、無くて……」

「てめぇ、俺が女性もんの下着を持ってる変態だと思ってんのか?」

「……ひぇっ!? いや、その。違くて……」

「お前の履いてきたやつ洗って、乾いたら履けよ」

「……そ、そのぉ……」

「……あ?」

「あたし、最初っから履いてなくて……」



























              ……は?



























「じゃあお前、ここまでノーパンで来たのかっ!?」

「しょうがないじゃないですかっ! 元からなかったんですからっ!」

「元ってなんだよっ! 家を出る時に履いてこいよッ!」

「【 ゴミ捨て場 (出発地点)】にそんなものありませんよッ!」

「【 家 (出発地点)】にねぇとか、てめぇの家族は裸族かッ!」

「あたしの家族は……」


 その言葉は続かず、メリーさんはそっと俯いた。


「あっ、そうだ……」

「……え?」


 そういうと、太狼は物置部屋に入って、

 何かを探して手に入れると、再び戻ってきた。


「ほら、これならどうだ?」

「……な、なんですか? これ……」

「大人用の紙オムツだ、爺ちゃんが昔使ってたヤツの残りだ」

「こ、これを履けと?」

「何もねぇよりマシだろ。これ以上のもんはねぇよ」

「わ、分かりました……」


 メリーさんはそれを履き、ジャージを着て、

 全ての装備を整えてから、リビングに戻ってきた。


「あ、あの……」

「……ん?」

「あたしのこと、怖くないんですか?」

「……なんでだ?」

「あっ、いや……普通、怖がるものかと……」

「そうなのか? 俺は別に……」

「あ、そうですか……」


「お前こそ、俺のこと怖くないのか?」

「……え?」

「いや、俺の顔を見ても逃げなかったからよ」

「……えっ!? あ、いや。その、別に……」

「……そうか」


( どうしよう、怖すぎて体が動かなかったなんて言えない )


 冷や汗をダラダラとかきながらも、

 メリーさんは、じーっと座っていた。


「えっと、お兄さんは……」

「俺は多助(たすけ) 太狼(たろう)だ。太狼でいい」

「じゃあその。太狼さんは、あたしをどうするつもりですか?」

「いや、むしろ俺が聞きたいんだけど……」


「……え?」


「お前、何しに俺に会いに来たんだ?」

「……えっ!? それはその、後ろを取ろうと……」

「後ろをとって、どうすんだよ……」

「それは、そのぉ……」


 じーっと見つめる太郎の鋭い眼差しに、

 メリーさんは、ナイフを隠して固まった。


「俺が家に居なかったら、どうする気だったんだ?」

「そしたら、中で待ってると思いますけど……」

「普通に不法侵入だろ、それ……」

「……え? だって、外寒いですし……」

「それで許されんなら、警察は要らねぇんだよ」


 そういって、太狼がワンタンスープの蓋を開けた。


「おっ、いい具合だ。ほら……」

「……え?」


 そういって、太狼はメリーさんにワンタンスープを渡した。


「あたし、これ食べていいんですか?」

「要らねぇなら、俺が食うが?」

「あっ、いや。その、いただきます……」


 そういって、メリーさんはワンタンスープを一口飲んだ。


( ……凄く、暖かい )


 それを見て、太狼は静かに笑みを浮かべると、

 自分のワンタンスープを開けて、ゆっくり啜った。


「はぁ〜、暖まるな……」

「はい、ですねぇ……」


 二人はワンタンスープをゆっくり飲みながら、

 ホッと息を着くと、芯から温もりを味わっていた。


 メリーさんは困惑しながらも、太狼の優しさに触れ、

 悪い人じゃないことを知り、静かに笑みを浮かべていた。


( ……ふふっ、おかしな人だなぁ )





 そんな温もりの時間が、しばらく続いていた。

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