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【 脅かす理由 】

 メリーさん(少女)が料理をしている間に、

 太狼はメリーさん(幼女)に、質問を始めた。





「お前は、この後どうするんだ?」

「また、次の人を脅かしに行くと思う」

「……そうか」


 それを聞いて、太狼がメリーさん(少女)に問いかける。


「なぁ、メリーっ!」

「……はい? あたしの方ですか?」

「あぁ、ちょっと聞きたいんだが……」

「……何でしょうか?」


「メリーさんって、脅かさねぇと何かあんのか?」

「いえ、特に問題は無いですけど……」

「なら、なんで脅かして回ってるんだ?」

「…………」


 すると、メリーさんは静かに答えた。



























      誰かに、自分を覚えておいて欲しいからです。



























 その言葉に、太狼は目を見開いた。


「覚えておいて欲しい?」

「ほら、【 恐怖 】って記憶に刻まれるじゃないですか」

「あぁ。まぁ、確かに……」

「だから、あたしは覚えておいて欲しくて、脅かしてました」


 それを聞いて、初日の夜にメリーさん(少女)が、

 寝言を言いながら泣いていたのを、太狼は思い出していた。


「ネットだと、【 背後から刺して殺す 】ってあったんだが……」

「刺しても殺しませんよ。覚えて貰えなかったら意味ないですし……」

「っつぅことは、お前も俺に似たようなことしてたんだな?」

「……あっ、いや。その……」


 太狼の不意打ちに、メリーさん(少女)は冷や汗をかいていた。


「まぁ、それはいいとして。どんなメリーさんも目的は共通なのか?」

「他のメリーさんに会ったのは初めてですが、多分そうだと思いますよ」

「……そうか」


 それを聞いて納得すると、太狼はメリーさん(幼女)の方を見た。


「お前も誰かに、覚えていて欲しかったのか?」

「……うん」

「……そうか」

「…………」


 メリーさん(幼女)が、寂しそうな顔をして答える。


「外、寒かっただろ」

「あのね、あたしね……」

「……ん?」

「凄く寒くてね、寂しかったの……」

「……そうか」

「凄く、怖くてね。寒くて……寂しかったの……」


「…………」

「…………」

「……そっか」

「……うん」


 言葉を一言告げる度に、少しずつ幼女の瞳から涙が溢れた。

 そんな冷たい涙を拭いながら、太狼はそっと自分に抱き寄せた。


「なぁ、メリー……」

「……?」

「それなら……」



























     忘れられないくらい、沢山の思い出を、


          これから俺と一緒に、作っていかないか?



























 その言葉に、メリー(幼女)の目が見開いた。


「……お兄ちゃん?」

「外に出るのが怖いなら、ここにずっと居ればいい」

「……いいの?」

「あぁ。俺なんかで、お前の寂しさを埋められるか分からないが……」

「でも、あたし……怖い、幽霊さん……だよ?」

「どんな幽霊だって同じさ。寂しい時に、一人は辛いだろ?」

「……うん」


「俺もなんだ。俺も一人は、寂しかったんだ……」

「……そうなの?」

「あぁ。俺にはもう、家族と呼べる人がいなったから」

「……お兄ちゃん」

「今はメリー(少女)が居るが、それまで俺は、一人だったんだよ」

「……そっか」


 その会話を聞いて、メリー(少女)は静かに笑みを浮かべていた。


「だから、もし良かったら、俺と一緒に居てくれないか?」

「……いいの?」

「もちろんだ。俺はお前の、お兄ちゃんだからな」


 その一言で、メリー(幼女)の顔に笑顔が戻った。


「えへへっ。ありがと、お兄ちゃんっ!」

「あぁ。よく、ここまで来たな。メリー……」

「……うんっ! えへへっ!」


 幼女は笑みを浮かべると、太狼に勢いよく抱きついた。



























 あたしメリー。今、とっても優しいお兄ちゃんが出来たのっ!

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