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子供の作り方

 ゴブリン退治が終わってから俺達は家へと向かっていた。

 後から知ったことなんだが、討伐数は俺達のパーティが一番だったらしい。

 他の冒険者達はサボっていたわけじゃないが、倒すのに時間が掛かっていたり、そもそもあまり湧かなかったりで効率が悪かったようだ。

 その分報酬も上乗せされたみたいで、他と比べて何十倍も多く受け取ることが出来た。

 たかがゴブリン程度でここまで貰えるのは嬉しい誤算だ。しばらくは金に困ることは無さそうだ。


 そして依頼を達成したことによりランクアップ。これで俺はDランクになった。

 パーティ全体の貢献と認められたらしく全員が評価されたとのこと。なので全員がDランクにランクアップすることができた。


 そんなこんなで家に到着。

 皆は家に入ると、ドッと疲れたようにソファーに座った。


「さすがに疲れたわね……。今日はもう動きたくないわ……」

「あんなに倒したのは初めてだもんね。私も疲れちゃった……」

「アタシはまだいけるぞ」


 さすがリリィ。体力は人一倍あるようだ。

 まぁ俺も少し疲れたかな。さっさと風呂入って寝たい。


「でもさ。あんな強い奴倒しちゃうなんてすげーよな!」

「どうしたいきなり」


 リリィが目を輝かせながら話しかけてくる。本当にいきなりだ。


「どうやったらそんなに強くなれるんだ?」

「ひたすら経験を積むしかないんじゃないか。というかリリィだって十分強いだろ」

「でもゼストと比べたらまだまだ弱いし……」

「まぁ俺は少し特別だからな」


 俺は転生特典があるし、他の人に比べて優遇されているのは仕方ないだろう。

 比較対象が悪かっただけだ。


「うーん……もしかして……ゼストとなら……もっと強く……」


 何やらブツブツと考え込んでしまうリリィ。

 なんか珍しい光景な気がする。深く考えるようなタイプじゃないもんな。

 まぁいいか。放っておこう。


 風呂の準備でもしようかと思っていた時、リリィが立ち上がって俺に近づいてきた。


 そしてとんでもないことを言ってたのだ。


「なぁゼスト! アタシと子供を作らないか!」


 ………………


 ………………は?


 こいつ……今なんて言った?


 子供と作るとか言ったような……聞き間違えか?


「すまん……もう一回言ってくれないか。よく聞こえなかった」

「だから! アタシと子作りしようよ! 頑張って育てるからさ!」

「…………」


 どうやら聞き間違えじゃなかったようだ……

 間違いであってほしかった……

 脳が理解することを拒否しているせいで思考が追い付かない。


「な、何でそうなるんだよ!? 自分が何を言っているのか分かってるのか!?」

「だってアタシは十分強いんだろ? ならアタシとゼストの子供はもっと強いはずだぞ!」

「そんな足し算みたいに上手くいくわけ無いだろ……」


 こいつの考えが分からん……

 竜人族がこういう性格なのか、それともリリィが特別なのか……


「きっと強いやつが生まれてくるはずさ! だってアタシより強いゼストとの子供だぞ? どんな奴にも負けない最強になるに決まってるじゃん! すごくないか?」

「そうなるとは限らんだろうが! そんなアホなことで俺を巻き込むんじゃねぇ!」

「なぁいいだろ? ゼストとの子が欲しいんだ。1人前になるまで育てるからさ」

「ちょ……近い近い」


 目の前まで近寄ってきた。

 キスしそうなぐらい顔が近い。そのせいで胸が押し付けられている。

 なんとか近づけまいと抵抗しているが、徐々に距離が縮まってくる。


 やばいやばい。

 このままだとマジでリリィに襲われる。


「あわわわわ……」


 フィーネは手で顔を隠しているつもりだろうが、指の隙間からバッチリ見てやがる。

 というか顔赤くしてないで助けてくれ。


 どうしよう……マジでどうしよう……


 こいつ脳筋のくせに見た目だけはいいもんな。お世辞抜きでも相当な美人の部類に入ると思う。

 それにおっぱいも大きいし。

 おっぱいも大きいし。

 押し付けられているせいでめっちゃ柔らかい感触が伝わってくる。

 これで中身さえまともだったらなぁ……


 遠ざけようと必死に押し返しているが、それ以上の力で近寄ろうとしてきやがる。

 今の俺では竜人族のパワーに勝ち目は無い。女とは思えん力だ。


 どうするどうする……このままだと本当に……


 …………そうだ。


「ち、ちなみに聞くけどさ。子供はどうやったら出来るのか知っているのか?」

「バカにすんな! それぐらい知ってるぞ!」


 さすがにリリィでも知っているか……

 これでは誤魔化しようがない。


 そこまで馬鹿じゃなかった――


「チューすればいいんだろ? 知ってるもんね!」


 ……………………ん?


「あの……一つ聞くが、そのチューってのはキスのことか?」

「そうだぞ! チューすれば子供は出来るんだろ? これくらい常識だぞ!」


 ああ……うん。なるほどね。そういうことね。

 性知識は小学生レベルだったか。なんというかリリィらしいな。

 ある意味安心した。


「だから早くチューしようぜ!」

「ちょ……顔を近づけるな!」


 って全然安心できねぇ!

 これはこれでめんどくせぇ!


 キスしようと顔を近づけてくるが、必死に抵抗してギリギリ食い止める。

 だが時間の問題だ。力は向こうの方が上だからな。


 このままだと本当に……


「ちょっと待った! 違うわよ!」

「え?」

「キスでは子供は出来ないわよ!」


 立ち上がって声を出したのはラピスだった。

 お陰でリリィの力が弱まった。


「キスぐらいで子供が出来るはずがないじゃない! 知らないの?」

「そ、そうなのか? ならどうやったら出来るんだ?」

「ふふん。なら教えてあげるわ!」


 おい待て。やめろ。

 リリィに余計な知識を付けようとするんじゃない。

 ただでさえ面倒なのにこれ以上ややこしくするんじゃねぇ!


「いい? よく聞きなさい? 子供ってのはね……」

「ごくり……」


 リリィも耳を傾けて聞こうとしている。

 やばいやばい。今度こそ正真正銘のピンチだ。


 今からでも耳を塞げば……いやもう遅い。


 くそ……ここまでか……


 …………


「子供ってのはね……鳥さんが運んできてくれるのよ!」

「そ、そうなのか!?」


 ……んんんんんんん??????


「いい? 夫婦が仲良くしていると、大きな鳥さんが赤ちゃんを運んできてくれるのよ!」

「ほ、本当にそうなのか?」

「だってそう聞いたんだから間違いないわよ! あたしを信じなさい!」

「し、知らなかった……。アタシが間違っていたのか……」

「ふふん!」


 …………まさか幼稚園児レベルの子がいるとはな。


「いやいやいや。お前は妊婦を見たことがないのか? お腹が大きくなった母親とか居るだろうが」


 やべ。思わずツッコミを入れてしまった。


「そういえばそうね……あっ、そうだわ! きっと鳥さんがお腹に入れてくれたのよ!」


 急にスプラッタになったぞおい。

 その鳥はエイリアンか何かか?


 てっきり俺を助けてくれるための嘘かと思ったが、あの目は本気だ。

 本気で鳥が運んできてくれるものだと思ってやがるな。


「お姉ちゃん……」

「な、何よその目は!? 間違っているとでも言うの!?」

「…………」


 ラピスをすごく残念な人を見るような目で見つめるフィーネ。

 どうやら妹の方は正しい知識があるようだ。

 よかったと言うべきなんだろうか。


「じゃあさ! アタシとゼストが一緒に居れば、鳥が赤ちゃんを運んできてくれるのか!?」

「………………ソウダヨ」

「そっか! じゃあそれまで待つことにする! 楽しみだなー! 早く来ないかなー!」

「来るといいね……」


 もはや何も言うまい。

 納得してくれたのか、リリィはようやく離れてくれた。

 色々とツッコミどころがあったが、助かったので余計なことは言わないでおくことにした。

 とりあえず後でフィーネにも口止めをお願いしよう。


 ゴブリン退治より疲れた……

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