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パンツの心配

 ようやく査定が終わり報酬を手に入れることができた。

 まぁ査定というより突然やってきた商人が買い取っただけなんだけどな。

 商人とギルドの間で話が終わったみたいで、報酬を受け取ったのはその後だった。


 今回受け取った金額は金貨10枚ということになった。


「んじゃこれお前らの分な」

「え?」


 ラピスに2人分の金貨を手渡す。

 分け前としては俺が金貨6枚、ラピスには2人分の金貨4枚ということにした。


「な、なんであたしに渡すのよ?」

「だってパーティ組んでるわけだし、分けるのは当然だろ?」

「いやそうじゃなくて! どうしてゼストが討伐した分も含まれているのよ!?」

「俺が金貨6枚、お前らが1人2枚で計4枚でいいよな? 細かく分けるの面倒だからそれで納得してくれ。今日は疲れたんだよ」

「そうじゃなくて!!」


 ラピスがやけに突っかかってくるな。


「あたし達は何もしてないのよ? どうしてゼストが倒したのにあたし達の分もあるのかって聞いてるのよ!?」

「だから。パーティ組んでるんだから均等に分けるのは当然だろ」

「あーもーちがーう!!」


 何が不満なんだろうか。


「あの大きいやつを倒したのはゼスト1人じゃないの! だからあたしは受け取れないわよ!」

「私は何もお役に立てませんでしたし、お姉ちゃんの言う通りだと思います」

「んーつってもなー。お前らも倒したじゃんか。だから受け取っとけよ」

「一番小さいのしか倒してないわよ!?」

「それでも十分だろ。疲れてて面倒だからそれで納得してくれよ」

「納得できないわ! やっぱり受け取れないわよ!」

「どう考えても貰いすぎですよ!」

「えー」


 その後も受け取れないの一点張りで拒否し続ける2人。

 しばらくそのことで揉めたが、なんとか説得することに成功した。

 話し合いの結果、俺が金貨8枚、2人には金貨2枚を渡すことで決着がついた。


「……じゃあこれでいいよな? はいこの話はもうお終い。分かったな?」

「ほ、本当にいいのかしら……」


 2人の手元にはそれぞれ金貨が置かれている。


「あ、あたし金貨なんて初めて触ったわ……」

「私もだよぉ……」

「…………そういえば金貨って食べられるって聞いたことがあるわね」

「お姉ちゃん!? 何言ってるの!? 食べないでよね!?」

「じょ、冗談よ! そんなことするわけないじゃない! あっはっは!」

「もー……ビックリしたよぉ……」


 …………もしかしたら定期的に歯型が付いてないか確かめる必要があるかもしれない。


「で、でもどうしよう。こんな大金が手に入るなんて夢にも思わなかったわ……」

「あ、そうだ。ねぇねぇお姉ちゃん」

「ん?」


 何やらひそひそと話し合っている。


「……そうね。そうしましょうか」

「うん。これでみんなが少しでも楽になるといいよね」


 そういってからギルドの受付嬢の元へと移動していった。そこで何かを話し合ってから金貨を渡したのだ。

 受付嬢は金貨を受け取ってから奥に引っ込み、戻ってきた時にラピスに銀貨を数枚渡してきた。

 姉妹も何故か納得したみたいで、嬉しそうにして俺の元に戻ってきた。


「何かあったのか? 金貨渡しちゃったみたいだけど」

「実はね。孤児院に寄付してきたのよ」

「寄付? そんなことしたのか」

「うん。前々から考えていたことなんだけどね。冒険者になってある程度余裕ができたら寄付しようと思ってたのよ」

「お世話になったもんね。これでみんなも美味しいものが食べられるといいよね」


 なるほどな。孤児院に寄付かぁ。立派な行動じゃないか。

 そういえばあれから孤児院に何もしてないな。

 よし。なら俺も寄付してくるか。


 というわけでこの日以降、報酬の一部を孤児院に寄付することになった。




 次の日。

 俺達は宿を離れ街の外に行くために移動中である。今日も昨日行った森で狩りをする予定だ。

 しかし昨日は散々な目に遭ったな。まさかレアモンを狩ってきただけであんな騒動になるとはな。

 珍しいモンスターの素材だからか商人達はこぞって欲しがるんだな。

 気持ちは分からんでもないが、さすがに昨日みたいなのは御免だ。


 もしかしてこれから先もレアモンを持ってくる度にああいう騒動が起きるんだろうか……

 そう考えると気が滅入ってしまう。なんとかならないんだろうか。


 そんなことを考えているとラピスが近寄ってきた。


「ねぇねぇ。もしかして昨日行った森に行くの?」

「その予定だけど」

「や、やっぱり行くんだ……」

「?」


 なぜかテンションが下がるラピス。


「どうしたんだよ。いきなり落ち込んだりして」

「だ、だって……あんな大きいやつがまた出てくるかもしれないじゃない……」

「あれはなかなか遭遇しないから平気だって。出会えたらラッキーなんだぞ」

「でもぉ……」


 ふーむ。あまり行きたくないって感じだな。


「出来れば他の場所に行きませんか?」

「そうよ。やっぱりまだ不安だから別の所に行きたいわ」

「まだ慣れてませんし、このままだとまたパンツを洗うことになりますから……」

「は? パンツ?」

「ちょ……! フィーネ! それは内緒でしょ!」

「……あっ!」


 んん? 何でパンツの話が出てくるんだ?

 森とパンツに何の関係があるんだ?


「い、今の話は忘れなさい! 何でもないから!」

「そ、そうです! 何でもないんです! 何も洗ったりしてませんから!」

「…………」


 やけに必死だ。それに顔も少し赤くなっている気がする。

 何故パンツぐらいでそんなに否定したがるんだろう。


 たかがパンツを洗ったぐらいで……


 …………


 ……ああ。そういうことか。


「あー……うん。変異種を見るのは初めてだもんな。さすがにあのデカいサイズはビックリするもんな。ショックで色々(・・)出ちゃうこともあるよな……」

「な、何よその目は! 仕方ないじゃない! あんなのと遭遇するなんて聞いてなかったもん! それにあたしはちょびっとだけしか漏らしてないもん!」

「お、お姉ちゃん! それも言う必要ないよ!?」

「……あっ!」


 喋れば喋るほどボロが出てくるなこの姉妹。

 ラピスが顔を赤くして涙目になりながら睨んでくる。


「う~……わ、忘れなさい! 今聞いたこと全部忘れなさい!」

「分かった分かった。聞いた俺が悪かったよ。だから叩くな」


 ポカポカと叩いてくるラピスをいなしつつ町中を歩いて行った。

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