私と貴方とその間
とっぷりと暗くなった空、そこに浮かぶのは満天の星...とは行かない。
気分は晴れていても、まるで物語で親友でも亡くなったみてーに空は雨を降らす。この街の何処かで葬式でも在るのだろうか。
「なんて、流石に馬鹿らしいな。天気が高々一人の人間の気分に、上手いこと演出なんざ加えないわな。」
現実の非常って物だ。面白み、ユーモアに欠けている。まぁ、浮いて沈んで面白可笑しくなんざ、自分の人生では御免だが。程々に平坦でいい。
そんなセンチメンタル(自分で言う物でも無いな?)な事を考えれば、俺の耳に電子音が届く。これで誰かが口で行ってたら、指先から血の滴を垂らさないと。いや、二重人格者は近くに居ないか。
『おっ、やっと出たな。突然の電話に照れちゃった?』
「そんな訳無いだろ。いつでも心の準備万端だろうさ。」
少し呆れながら言葉が出る。
距離を音声で取り持つ機械は、そのスピーカーから作り直された声を俺に届けている。
『少し辛辣じゃないか。それじゃ、本題といこうか?』
「何の用か、何となく分かるけどな...。」
『実を言うと、体調が優れなくてね。しかし、予定には無いだろう?そんな事は。』
読めた。おそらくは買い出しだな。ストックなんざ考えねー奴だ、食いっぱぐれたな。
『察してくれたようで助かるよ。実は二~三日水だけなんだが、限界なんだ。』
「二~三日!?度を越えてる!」
『わっ!なんだ、急に叫ぶな...。』
びっくりした。だが叫ぶだろ、フツー。外にも出れねー様な奴が、栄養も取らないとかあるか?
まぁ、早めに治るとか考えたんだろうが。しょっちゅう呼び出されると、疲れるだろうからな。
『それで出来れば簡単に食べれる物でも、買ってきてくれないかな、と。勿論、お代は払うよ。』
(家に向かうか...?)
『えっ?風邪が移るよ?』
何を言っているのやら。その状態で食えるものを、あちこち探す方が大変だ。
お粥ならば、タッパー飯を持っていけば事足りる。白米に梅干し位は載せた奴だろうが。
「さて、今から行くかな。」
『有難いけど...見返りは無いぞ?』
「あるよ?僕が嬉しい。じゃあ、後で。」
冷蔵庫の扉を開ける。中には作り置きした野菜炒めや、タッパーにいれた米でいっぱいだ。
ささっと鞄に摘めて、扉を開け外に出ていく。...が、傘を忘れた。すぐに戻り、玄関から傘を取る。雨音は煩く、傘を叩く音でもかき消せない程だ。
『嬉しくはあるんだがなぁ...。あまり弱った姿は見せたく無いのに。』
耳を刺激する機械音。邪魔をするように扉を閉める音が聞こえ、俺は前進を再開した。
暇。それは、日頃騒ぐ奴の言葉である。俺の様な休みを日がな一日転がる奴は、暇とは無縁だ。それは、日常という。
まぁ隣に突貫出来ないのはつらい。パンデミックとありゃ、しょうがないが。休みくれ。
「ん?今なんか聞こえたか?」
さっき出たと思ったけど、お隣さんからだな。そういや、この前は野菜炒めくれたな。今時珍しい近所付き合い、俺は嫌いじゃない。
「ま、野郎じゃ無いならもっと...止めよ、虚しいわ。」
ツッコミ無しでボケてもなぁ。
「そだ、何か巻き込んでやろ。ボードゲームかなんか、あったかな?」
割とお人好しだし、無下にはされんだろ。リア充らしいし、邪魔してやろう。同棲してねぇから、気まずい展開も無いしな。
今回はネタバレ無しです。恐らく、既にわかっておられるでしょうし。
それと少し体調を崩した所為で少しやっつけ感のある物に...2時間でネタから考えるのはしんどい...。
まぁ、不定期と言いましたから、間に合わせる必用は無かったかも?とはいえ、十二作品、仕上がりました。もし、機会があったなら、再び...。