表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/36

思い出

 カーラは双眼鏡を覗いてみた。


 遠くの海がはっきり見えた。波の揺れもはっきりわかるほどに。

 だが、肝心のイルカは……?


 イルカのいる辺りを肉眼で確認して、また双眼鏡を覗いてみた。



「はっきり見えるー」


 双眼鏡で見た景色は、すぐ手の届きそうなくらいだった。

 波の動きもその間を泳ぐイルカもしっかり見える。



「こうやって見るのもいいわね」

 カーラは、かつての砂漠の地でのことを思い出していた。

「昔はね、よく水中散歩したものよ。水をきれいにする仕事してたんだから」

 ついそんな思い出を口にしていた。


 その時だった。


「あ! 潮吹いた!」

 カーラは興奮していた。

 思わず、少年の肩をつかんで揺さぶっていた。


「すごいわ! イルカも潮吹きするのね」


 その言葉に、少年は噴き出した。

「……違うって。クジラだよ」



「そうなの?」

 カーラにとっては、イルカでもクジラでもどっちでもよかった。

 人生初めての海の生物にしばらく感動が収まらなかった。




     *


 ふとカーラは自分が双眼鏡を独占してしまっている事に気づいた。


 この少年もさっき嬉しそうにクジラを見ていたのに。

 申し訳ない気持ちで少年に目をやると、少年はにこにこカーラを見ていた。


「あなたも見る?」

「僕はいいよ。いつでも見れるし」


 それを聞いて、カーラは感心した。――なんて心の広い少年!

「優しいのね」



 でもカーラには一点だけ気になることがあった。

「あなた、その僕っていう一人称、辞めたほうがいいわよ」


「どうして?」

「ドSのロクでもない大人になっちゃうから」


「……へえ?」

 少年はきょとん顔だった。

 この優しい少年にはまっとうな大人に育ってほしい、なんてカーラは願っていた。



「名前、聞いてもいい? 私はカーラ」

 ひょっとしたら、この少年の名前があの嫌いなドSと同じ名前だったりしたら…… なんて不安がカーラの脳裏をよぎった。



「僕……、お、オレ、レイ」

「え!?」

 カーラは驚く。

 かつての恋人と同じ名前かと焦ったのだ。


「レン?」

「いや……」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ