待つ
ふと、ベッドの上に立ち、天井を確認してみる。
天井裏に誰か潜んでいる――なんてことはなさそうだ。
ベッドから降りて、窓の外を見る。外は真っ暗だった。
洞窟はかなり奥まで続いていて、おそらく誰か別の家に行けるようになってるんだろう。
しばらく、窓の外の真っ暗な空間を眺めていた。
そうして、ベッドに入る。
あの気配は何だったのか――
そんな疑問を抱きながら、ゼネバは眠っていた。
* * *
それから、一日経った。
ゼネバはまだ帰ってなかった。
カーラは研究所近くのバス停で、ゼネバが帰って来るのと今か今かと待っていた。
カイの話では、魔法使い同盟から魔導電話で、ゼネバは昨日の朝方下山したという。遅くとも昨日の夜には帰ってくるはずだった。
事故にでも遭ってるんじゃないか。カーラは心配していた。
そもそも、ゼネバの言ってたおかしな気配というものが、カーラにはわからないのだ。
得体の知れない何かに攫われでもしたんじゃないか、そんな心配もしていた。
バスが停まる。
だが、ゼネバはいない。
そんなことが昼から夜まで続き、いよいよ最終のバスが来た。
これにゼネバがいなかったら、カーラは自分の足で山に行こうと思っていた。
だが……
停まったバスから、ひょっこりゼネバが降りて来た。
カーラは思わず涙ぐむ。
だが、そんなカーラの思いはつゆ知らず、こんなことを言う。
「ただいま、山菜のお土産あるよ」
カーラは泣きそうになりながら、ゼネバを抱きしめる。
「遅い! 心配したんだから」
「あ、悪い」
ゼネバにしてみれば、そんなことを言われるのが予想外だった。
「私、ゼネバに言われた通り、浮気しないで待ってたんだから」
と、カーラに言われ、ゼネバは首を傾げる。
――そんなこと、言ったっけ? それじゃまるで恋人同士みたいだ。




