潜む者
* * *
洞窟の中はところどころ明かりがある。
シャンディはなるべく明かりのないところに潜んでいた。
ぼんやりしていたシャンディは、ふと胸に手を当てた。
懐かしいにおいがする。
嬉しいような気持ち。
この気持ちはなんだろう?
この近くに彼女の大事な人がいる。そんな予感がした。
シャンディは、シミュレーションドールと呼ばれる種類のアンドロイド。
今まで何をしていたか記憶が定かではないが、彼女は魔法使い同盟の洞窟に潜り込んでいた。
かつてのシャンディは再起不能な状態にまで追い込まれていた。
偶然なのか、彼女は洞窟の中に潜り込むことに成功していた。
魔法使い同盟は山の中に洞窟を作り、その中に住居を構えていた。
シャンディは洞窟の奥深くで、こっそり自分を修理しながら暮らしていた。
魔法使い同盟たちはあまり連絡を取り合わないのか、同じ繋がった洞窟に暮らしていても、誰も彼女に気づいていなかった。
そんな時、なぜかすごく懐かしい気配を感じた。
とても近い場所から――
洞窟の中にある一軒家。
確か、老人と子どもが住んでる家だ。
部屋の窓が開いていた。
普段はあまりそんなことはしないシャンディだが、窓からそっと中に入る。
洞窟の中の家だけあって、電気がついてなければ本当に真っ暗な空間。
だが、シャンディの目には部屋の様子が見えていた。
ベッドの中に女性が寝ていた。
シャンディは女性の寝顔をしばらく見ていた。
――すごく懐かしく感じるのは何故だろう?
そうして、気づいた。
この女性はドワーフだ。
そして思い出す。
かつてのシャンディはこことは違う洞窟で、ドワーフたちと暮らしていた。
シャンディにとってドワーフたちはとても大切な存在だった。
眠っている女性が目を開けた。
ぼんやり、シャンディを見ていたその瞳。
どうもおかしいと思ったら、邪眼にかけられている。