保護
「ん? こっちは空だ」
ワイヤを収納しているケースが片方は空だった。なので、ジーラはこんな結論を立てた。
「こいつ泥棒に違いない」
尻尾をつかんでやると、と言わんばかりに身体検査をしはじめる。
「ジーラ」
シムゥンは非難げに声を上げるが止めることはなかった。
本当に怪しい人物かもしれない。
ふと、ジーラの手が止まった。
「……女だ」
「!?」
シムゥンは山菜採りの顔を見た。よく見れば女性の顔だ。
中性的な顔つきで、シムゥンもジーラも小柄な男だと思い込んでいたのだ。
「どうすんの?」
シムゥンは焦った。
男二人で、眠ってる女性を家の中に運び入れ、外套を脱がせ、身体検査…… いかがわしい以外の何物でもない。
「………」
ジーラは考えていた。
そして、こんな結論に達した。
「いいか? シムゥン。我々は遭難した女性を保護したんだ。決してやましいことはしてない。いいな?」
ジーラは、シムゥンに言い聞かせるように話した。
シムゥンはこくこくと頷く。
ジーラとシムゥンは、奥のベッドへと女性を運ぶ。
失礼のないように取り扱わなければ、と先ほどより慎重になっていた。
一息つくと、シムゥンは出掛ける準備をする。
「僕、山菜を採りに行ってくる……」
「なぜ?」
「その人、山菜採りに来たんでしょ。かわりに何か採って来る」
シムゥンは出掛けた。
その姿を見送って、ジーラは、それもいいかもしれないと思っていた。
* * *
「今、魔法の気配がしたが……?」
と、部屋に入って来たのはジーラだ。
「うん、確かにした」
ジーラの後に、山菜を採ってきたシムゥンも続く。
二人は、保護した山菜採りが起きたのかと思っていた。
だが彼女は眠っていた。
ふと、シムゥンは窓が開いてるのに気づいた。
「ジーラ、窓開けた?」
「あぁ、空気の入れ替えをした。客人に失礼があってはいけないから」
ジーラの言葉に、シムゥンは納得した。
「しかし、この人、よく眠ってるね」




