姉弟
* * *
シーナ・ナユタ・ラングは、苛立たし気に途中まで編んだマフラーをほどいていた。
今年の冬こそ、彼氏に手編みのマフラーをプレゼントしたいと思っていたのだが……
いかんせん、編み物というものはなかなか高度なテクニックと器用さが必要らしい。
シーナとしては一目一目着実に編んでいたつもりなのに、気づけばあちこちに穴が空き、マフラーには程遠いものが出来上がっていた。
季節は夏。夏といえど寒い地域ではある。
寒い日にそっと彼に手編みのマフラーを掛けて上げる。
そんな光景に憧れを抱いていたが……
シーナは編み針と毛糸を見つからないように引き出しの奥へしまう。
その様子をドラム缶型の黒いずんぐりしたロボット、ファッティが見ていた。
「絶対にバラさないでね!」
こんなのが弟に見つかったら、バカにされるに決まってるからだ。
* * *
その弟はといえば――
威勢のいい売り子の声。人々が行き来する。
港町は活気があった。
シーザーはウキウキした気分で港町を歩いていた。久々にこの町に遊びに来たからだ。
シーザーの隣にはクスナ。シーザーの姉のシーナの彼氏でもある。
シーザーは、クスナをどこか兄のように思っていた。
クスナはコーヒーの入ったキャリーカートを引き、歩いていた。
コーヒー農家のクスナは、港町の馴染みの店ににコーヒーの納品に行くところだった。
そのついでにシーザーと一緒に海を見るという目的もあった。
「宿題やったか?」
クスナはシーザーにそんなことを聞いた。
一応は宿題が終わったら海につれてってやるという約束で遊びに来てたのだ。
「なんとかね」
うんざり気味にシーザーは答えた。
「ためちゃう僕が悪いのは承知だけど、宿題が多すぎる……!」
疲れたような表情のシーザーに、クスナは本当に宿題を終えたんだと驚いていた。