ガールズトーク
「前にも、弟は遠くからやってきた女の子を助けたことがあって」
シーナはそんなことを言い出した。
確かスティナも、今のカーラと同じようなことを言ってたのだ。
「じゃあ、きっと、弟さんは、女性を助ける使命でも与えられてるんじゃない?」
カーラは適当なことを言った。
「そうかしら?」
シーナが首を傾げる。
「どうかしら?」
カーラも首を傾げる。
その様子にシーナは笑い出した。
カーラが言い出したことなのに、なんで疑問形なのだろう。
笑顔のシーナに、これはイケると思ったカーラ。
だが、そこでゼネバの顔が浮かんだ。
カーラの中で、ゼネバの「浮気するな」の言葉が再生された。
――シーナを、口説くのは今は辞めておこう。
ギリギリ踏みとどまった。
実のところ、ゼネバは「セクハラするな」と言ったのだが、カーラの中ではなぜか「浮気するな」に変換されていた。
クスナは、カーラを見ていた。
さっき、密着するほどくっついてきたのはにおいをかいでいたのだろう?
そういえば、昨日、シーザーにキスしそうなくらい密着していたのも、本人曰く「懐かしいにおい」だとか。
このカーラという女性はにおいをかいで、魔法の気配を探ったりするのだろう。
じゃあ、やっぱりシーザーにやましい気持ちも当然ない――そうクスナは結論づけた。
その結論に至れば、クスナは昨日までのカーラへの警戒心がほぼなくなっていた。
* * *
ゼネバはベッドの中でぼんやりしていた。
はっきりと目が醒めない。
夢を見てるのか、現実なのか意識があやふやだ。
ふと、すぐ横に女がいるのに気づいた。
「起きた? 寒くない?」
女がゼネバの頬を触ってきた。
――この感触は?
目を凝らしてるつもりが、部屋は暗いのか。女の輪郭がぼんやりしている。
女がゼネバにキスをしていた。
こんなことをしてくるのはカーラしか考えられないが、声が違う。
手の感触もまったく違う。




