浄化
見ると確かに木があって、その中に昨日会ったクスナがいた。
好奇心が湧いたカーラは、しばらく中を見ていた。
クスナは木に対して回復魔法をかけているようだ。
でも、どうもそれだけじゃないようだ。
それはどういう魔法なのか?
思わずカーラはビニールハウスの中に入っていた。
もっと近くで見たくなった。
普通なら、誰かが入って来たら、すぐ気づくだろうに。
クスナはまったく気づいてなかった。
カーラは足音を立てないように、クスナの背後に忍び寄る。
ふと、においをかいでみる。
これは、水のにおい?
澄んだ水のにおいがする。
しばらくにおいを感じていた。
これはかなり特殊な魔法。
どうすれば、こんなことが出来るのか。
クスナは水を操っている。
木が土から吸い上げる水を多くしている……?
ただ水だけじゃなく、木に必要な養分なんかも木に行きわたるように。
澄んだ水の流れを感じるのは心地よかった。
クスナが魔法を終えた時、思わず声を掛けた。
「やるじゃない」
*
「うわ!」
クスナは情けない声を上げた。
自分に密着するぐらい近くに女が立っていた。
ビニールハウスの中には誰にもいないはずだった。
いつの間にか、黒髪の妖艶な女が立っていたのだ。
美人ではあるのだが、幽霊か亡霊の類いに思えてしまった。
「お化け!! あ、……昨日の?」
よく見ると、昨日、港町でシーザーと一緒にいた女だった。
「お化けじゃないわ。カーラよ。私をお化けに見間違えた人、あなたで二人目」
「……?」
そこでクスナはカーラの魔力が消えたことに気づいた。
消えた? というより隠してる?
「それにしても、すごいわね。水を浄化させて植物に吸収しやすくしてるのね。かなり特殊な魔法ね」
「……?」
クスナは、カーラの魔力を探っていた。
特殊といえば、このカーラという女こそ特殊だ。
あれだけ強大なの魔力をこうも上手く隠し通せるのだろうか。




