邪眼
* * *
シムゥンの家は洞窟だった。
魔法使い同盟の所有する山の中の洞窟。洞窟といっても中は普通の家とさほど変わらない。洞窟の中に家を建ててるような造りなのだ。
そこでジーラと暮らしていた。
今朝のシムゥンは早起きだった。
朝になっても、基本、洞窟だから朝の光が差し込むということはない。
朝陽を浴びて外の空気でも味わおうと散歩に出かけることにした。
洞窟の外へと歩き出すと、入り口辺りに塊が見えた。
――何か布の塊?
もしや、と思い急いで近づく。
それは人だった。
遭難したのだろうか。
まさか死んでる……?
慌てて、声をかける。
「もしもし? もしもし、聞こえますか? 起きてください!」
だが、シムゥンの取り越し苦労だった。
その人物は、欠伸混じりにむっくり起き上がった。
「……?」
その人物はシムゥンを見て、気まずそうな顔になった。
「ちょっと、山菜採りに……」
それを聞いて、シムゥンはきょとんとなった。
騒ぎを聞きつけて、奥からジーラが来た。
「どうした?」
「山菜採りが遭難してた」
「はあ?」
シムゥンの言葉に、ジーラもきょとんとなった。
*
ゼネバは気まずそうに立ち上がる。
「いえ、寝てただけなんで。帰ります」
立ち上がったゼネバはぶるりと震えが来た。
夜通し、山の中を歩き、洞窟を見つけた。
ワイヤの反応が消えて、そのまま気が抜けてしまった。
そこで座り込み寝てしまっていたのだ。
体は相当冷えていた。
「そんな体で下山は無理だ。少し休んでいきなさい」
というジーラの瞳が赤く光っていた。
邪眼だった。
完全に油断していた。
栗色の髪に青い瞳。その特徴でシミュレーションロイドというのはわかっていた。
シミューションロイドの子どもと老人。
以前、ザーグ研究所から養子に行った者もいるというのを聞いた記憶のどこかにあった。
あまり敵視していなかったといいうのが大きな要因だったかもしれない。
冷えと疲れもあり、ゼネバはすとんと眠ってしまった。




