元ストーカー
ふと、ゼネバはカーラと初めて会った時を思い出す。
二人が出会ったのは砂漠の地。
ゼネバがアンドロイドと戦っている時、何もない空間からカーラが突然現れたのだ。
この時、ゼネバはカーラをお化けだと思った。情けなくも腰を抜かし逃げ出したのだ。
どういうわけか、カーラはそんなゼネバに『惚れた』らしい。
それから、カーラはついてくるようになった。
これが健康な男なら心ときめくのかもしれないが、いかんせんゼネバは健康な女。
今のところ、そういう趣味もない。
第一印象お化けだと思ってただけになかなか気色悪いと思ってたのも事実だ。
撒いても撒いてもついてくるカーラ。
ついてくるだけで大した害もなくいつしか二人でいることも気にならなくなった。
聞けば、カーラが前に付き合っていたのは絶世の美女ともいえるほどの相手だそうで。それほどの相手と付き合っていたのなら、ゼネバのことなんてそのうち飽きて帰って行くだろうと思っていた。
それまで二人の旅も悪くないかと、近頃は思うようになった。
それにしても、目の前で食事するカーラは本当に画になる。
いい生まれなのだろう。
食事作法もきれいで気品がある。それでいて妖艶さも兼ね備えている。
「あっ」
揺れる船の中、カーラはコーヒーをこぼした。
こぼれたコーヒーは彼女の手にかかった。幸いコーヒーは冷めていたので火傷するほどではなかった。
おしぼりを取ろうとしたカーラに、おしぼりが差し出された。
「あら、ありがとう」
カーラはてっきり店員がおしぼりを持ってきてくれたのかと思った。
だが、店員ではなさそうだ。
たまたま乗り合わせた男が美人のカーラに近づきたくて、ずっとこちらのを様子を見ていたらしい。
そこでようやくゼネバは結構な人数に注目されているのに気づいた。
それも男ばかり。
男たちの目当てはカーラのようだ。
「よかったら、今日の夕食を一緒に……」
と男が言うと、カーラはにっこりと微笑む。
「いいわね。でも私たち次の島で降りるの。また会えたらその時は一緒に食事しましょう」
カーラはあっさりと男の誘いを断る。
こういう社交的なところは見習わなきゃいけないと思ったと同時に、注目されて何か面倒なことに巻き込まれなきゃいいと思ったゼネバだった。