ガサツな彼女
バスが止まり、まず降りてきたのはクスナだった。
次にシーザーが降りてきて、その次に目当ての人物が降りて来た。黒髪の美女と聞いていたがまさにその通りの女性だった。
ここのバス停で降りるのは三人だけだった。カーラが降りるとバスは出発した。
「お帰り、三人、知り合いなの?」
シムィンは、クスナに尋ねた。
シーザーとカーラが親しそうに見えたのだ。
「いや、別に。ただ会っただけ」
と、クスナは答えた。
「ふうん。研究所の客人なんだ。――カーラさんですね?」
と、シムィンはカーラに声をかけた。
「ザーグ研究所の?」
と聞くカーラは不思議そうな顔をしていた。
シムィンはその理由がなんとなくわかった。
「ゼネバさんがお待ちです。案内します」
シムィンはさり気なくカーラの荷物を持つ。
そんなシムィンをカーラはエスコート上手な青年ぐらいにしか思わず、そのままついて行く。
その後にファッティが続く。
シムィンは、去り際にクスナに「じゃあ」なんて言い残した。
カーラはシーザーに向かって小さく手を振った。
* * *
「クスナが兄ちゃんになるのかー」
帰りの道すがら、シーザーはそんなことをつぶやいた。
「あ、うん、まぁ……」
とはいえ、具体的なことはまだ未定なままだ。
「一応はサプライズでしたいから、まだシーナには内緒な」
「うん」
頷くシーザーだが、一つ懸念してることがあった。
「でも、いいの? シーナって案外ガサツだよ」
「知ってる」
「えー!」
シーザーは絶句した。
「……なんだよ?」
クスナには、シーザーのリアクションが意外すぎた。
「知らないわけないだろ」
「そっか、知ってたんだ」
シーザーは妙に安心した。
「じゃあ、改めてよろしくな。アニキ!」
照れくさそうなシーザーの笑顔に、クスナは感動していた。
「お、おう!」
二人は肩を組んで歩き出す。
近い未来に義理の兄弟になると思っていた二人だが、実際はそうはならなかった――