非人道的
「こっちのは、くれてやった」
ゼネバは右腕の方のケースをテーブルに置いた。
中身は空だった。
「利き腕が軽くなった分動きやすい。でも二つに慣れてたからやはり二つ持っておこうと思って」
ゼネバは左腕の方のケースをテーブルに置く。
すると、中のワイヤが微妙に振動しはじめた。
それを見て、ゼネバは神妙な顔になる。
カイはこのワイヤの変化には気づいていないだろうから、説明する。
「この近くにアンドロイドがいる」
その言葉だけでカイは察した。
ゼネバは魔法は使えないし気配を探るのが得意ではないが、この魔導機械のワイヤが何かを感じゼネバに教えたのだろう。
これはその魔導機械の持ち主特有の感覚のようだ。
「この近くに? それはシームァのことじゃないか?」
「その娘ではない」
ゼネバは、シームァの体の一部が機械であることは知っていた。
前に会ったこともあるが、その時はワイヤはこんな反応はしなかった。
「だとしたら、少し前にゲートが開いて機械の少年が来たんだ。私は見てないが。それじゃないか?」
「………ゲートが開いた?」
思わず聞き返す。
「エルフの少女に、機械の少年。その後はシームァがゲートを使ってエルフの世界に行った」
「………」
ゼネバはじっと話を聞いていた。
「そうそう。その機械の少年はシーザーと瓜二つだそうだ」
「シーザー?」
ゼネバはその名前を聞いても、誰かピンと来ていなかった。
「魔法使い同盟の……?」
「その子はシムゥン。シーザーはシーナと一緒に一般家庭に引き取られた子だ」
「あぁ。たぶん、その子とは面識ない」
「そうだったか」
この研究所にいるカイはここで生まれた者に関してはよく知っている。
つい、そのつもりでゼネバに話していた。
「シーザーに会ってみるか?」
カイの問いに、ゼネバは少し考えた。
「いや、いい。たぶん、似た顔なのは似たような……」
ゼネバは口をつぐんだ。
非人道的な発言になりかねないと思ったのだ。
「この辺にいそうなアンドロイドに心当たりはないか?」
ゼネバは話題を戻す。
「この研究所でもアンドロイドの研究はしているが…… それではないか? 研究所内を散歩がてら見てみるか?」
カイの提案にゼネバは頷いた。




