ワイヤ
ワイヤ。
その形状はぐるぐる巻き細い針金。しなやかでムチのようでもある。
対アンドロイド用の武器で、獲物に投げつけ、巻き付け、その動きを奪う。
元々はドワーフが愛用していたもので、アンドロイドをしつけるためのものだったようだ。
それが今では改良され、アンドロイドを退治始末するための武器となっている。
揺れる船室の中。
カーラは、ワイヤの点検をしていた。
上達すれば己の魔力でその動きを自在に操れるようになるのだが、カーラはまだそのレベルではなかった。
やれやれとため息をつく。
その時、扉が開いた。
「熱心だな」
声をかけられ、カーラは顔を上げた。
「そろそろ目的地だ。その前に少し早いが昼にしよう」
それを聞いて、カーラはぽかーんとなった。
寡黙で朴訥なその人物がこんなことを言うなんて。
その言葉を自分の中で噛みしめ、感動していた。
「……私に興味ないと思ったら、心配してくれてるのね」
「大袈裟」
とだけ言うと、その人物は部屋から出て行った。
「あ、待ってよ、ゼネバ」
カーラはワイヤをしまい、すぐさま、後について行った。
* * *
たまたま乗り込んだ船での食事。
ゼネバにとっては慣れた出来事なのだが、目の前のはカーラは違ったようだ。
船は揺れる。
その中での食事は、彼女にとっては人生初めての経験のようだ。
ハンバーガーにかぶりつくが、間のピクルスを落としてしまっていた。
恥ずかしそうにそれを拾い、コーヒー皿の端に置いておく。
ややもすると間抜けな光景なのだが、美人のカーラがそれをするとそれは画になった。
「次に行くのは、魔法使いの国なのよね?」
カーラがそんなことを聞いた。
「なんか楽しみ。強い魔法使いに会えるかしら?」
「どうだろうな?」
ゼネバはドワーフの血を引いている。
ドワーフというものはほとんど魔力がないらしく、その血を引くゼネバもほとんど魔力がない。加えて魔力を感じることも得意ではない。
魔法使いの国には何度か行ったことがあるが、誰が強い魔力を持ってるかどうかよくわかっていなかった。
カーラもさほど魔力が強そうではなさそうだが、魔力を感じる能力は高いようだ。