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8月20日 ホームセンター(3)

 望は肩から短機関銃を下ろすと身を隠していたフェンスに立てかけた。鞄から拳銃を取り出し、五発の弾丸が装填されている事を確認してからスラックスの背中側に差し込み、その上から地下鉄で手に入れた上着を羽織った。バールを握り直し、準備が終わった事を目で音葉に合図する。


 「その大きな銃、置いていくんですか?」

 「ああ。あの人達の武器はバットやスコップだろ? マシンガンを見せて刺激するのは良くないし、万が一の時は音葉ちゃんが使って俺を助けて欲しい」

 「人を撃つ自信は無いですが……。横の安全装置を外して、引き金を引く、でしたっけ?」

 「そう。空に向けて威嚇射撃するだけでも効果はあると思う。ほら、ドラマとかでよくあるだろ、動くな、動けば撃つ、てやつ」

 「残念ですが見たことはないです。威嚇射撃……相手を狙わなくてもいいってことですよね。それならできると思いますが、そういう状況にならないようにしてください。もし助けが必要になった時はどうしますか」

 「そうだな、ハンドサインとかどうかな。こんな風に、一本なら逃げろ、二本なら助けて」


 下に向けた右手の人差し指と中指だけを突き出し、じゃんけんのチョキを逆さまにしたサインをしてみる。

 

 「ここからだと結構距離があります。指の小さな動きを正確に確認するのは無理だと思います。無理そうなら大声で助けを求めください。もしくはこっちで適宜対応します」

 「了解。それじゃ、行ってくる」


 望は音葉が隠れている位置を集団に悟られないように一度園芸コーナーを敷地の出入り口近くまで戻った。それから大きく深呼吸をして物陰から立ち上がる。あえて障害物の無い空間を進み見つかりやすいようゆっくりと駐車場の中央に向かって進んだ。

 最初に気がついたのは見張りをしていた男の一人だった。ヘルメットを被った四十代くらいの小太りの男は近づいてくる望を見つけ、切羽詰まった声で仲間に警戒を促す。言い争いをしていた二人が即座に議論を切り上げ、茶髪の男が何か指示を出し、女子大生風の女はバスに走って向かい走り出した。他の六人は手にした武器を構え、集団は一気に戦闘態勢になった。

 望は両手を上げて敵意がないことを示しながら集団に近付く。


 「止まれ! それ以上近づくな」

 

 茶髪の男が大声で叫ぶ。望は素直に指示に従って足を止めた。茶髪の男が一歩目に進み出てきた。何かスポーツをやっていたのか、あるいは肉体労働をしていたのか、かなり体格がいい。もし格闘戦になったら勝ち目はなさそうだった。だが少し後ろにいる他の六人は違う。小学生くらいの子供、四十代くらいの小太りの男性、四十代くらいの女性、五十代くらいの男性が二人、その内一人は頭に包帯を巻いている。さらに初老の老人が一人。バッドや農耕器具を構えているがとても戦い慣れしているようには見えない。


 (銃や飛び道具はない。茶髪の人さえ気をつければ争いになっても何とかなるか)


 望は背中に当たる金属の塊の感触を確かめた。相手より優れた武器があると心に余裕ができる。


 「武器を捨てろ!」


 茶髪の男が怒鳴られた望はバールを地面に放り投げる。灰で覆われたアスファルトの上に金属の棒がぶつかり甲高い音を立てた。望が丸腰になったように見えたところで茶髪の男はさらに一歩前に踏み出してきた。遮る物の無い駐車場を一陣の風が吹き、乾燥し始めた火山灰の一部が巻き上がり、西部劇の決闘のように対峙している望と茶髪の男の間を吹き抜けていった。

 茶髪の男の仲間、外にいる人間に加えバスの中にいる人達も不安そうに望の様子を伺っている。そこには偶然出会った生存者を歓迎するような雰囲気は全く無かった。


 「お前は誰だ。ここに何をしに来た」


 茶髪の男の声はよく通り威圧感がある。背中に拳銃を隠していなければ恐怖で身がすくんだかもしれない。


 「俺は冠木望っていいます。近くで車のタイヤの跡を見つけて、他にも生存者がいるのかと思ってここに来ました」

 「お前は一人か?」


 その当然の質問を望は予想していなかった。真実を告げれば二人だが、音葉の存在を隠すには一人と答えなければいけない。どう答えるべきか、一瞬の迷いが生じてしまう。


 「なぜ口籠った! 他に仲間がいるのか」


 望への不信感を露わにし、茶髪の男は腰の大型のナイフに手をかける。


 「違います。俺は一人です」

 「仲間がいるのかと聞いている!」

 「えっ、いや、その……」


 茶髪の対応は想定外だった。友好的に話しが進んだり、あるいは攻撃を受けたりすることは予想していた。だが何日も知能の無いゾンビばかりを相手にしてきた弊害か、言葉で責められる事は考えていなかった。


 「なぜ黙る!? 気に入らねえな。俺たちの物資が狙いか?」

 「ちょっと野瀬さん!」


 バスの横にいた女子大生風の女が小走りで野瀬と呼ばれた茶髪の男に近づき、その腕を掴んだ。


 「そんな喧嘩腰じゃ、彼もきちんと話しをできないわ」

 「こいつは最初、妙に余裕な感じで現れやがった。今まで俺たちが見つけた別の生存者はもっと必死な感じだったろ。こいつは何か胡散臭せえ」

 「確かにそうかもしれないけど、相手はまだ子供よ」

 「松戸の事を忘れたのか? 俺たちは大学生のガキ共に攻撃されたんだ。高校生くらいの野盗がいても不思議じゃねえ。見てみろ、普通大勢の武器を持った奴に囲まれれば怯えるもんだ。こいつは平然としてやがる。普通じゃねえぞ」

 「そうね、そうかもしれない」


 女子大生風の女も望を疑い始める。他の六人も武器を構える姿勢が前のめりになっていた。


 「いや、俺は怪しく無いです。ゾンビと違って人間だから武器を持っていても怖くない、そう思っただけです」


 望の言葉は虚しく空振りする。気持ちは焦るがどう説明すればいいのか見当がつかない。


 「あなた、本当に一人なの」

 「そうです! 一人です」

 「一人でここまで? そのバール一本で?」

 「いえ、他の武器もあって……」

 「どういう事!?」


 銃を持っていると素直に答えていいのか迷い、その沈黙さらに集団を不安にさせる。


 「てめえ、他にも武器があって仲間もいたんだな。お前一人だけ出てきて何が目的だ。俺たちの食料か? それとも女達か!!」

 「違うんです。俺たちは皆さんに助けてもらおうとして」

 「俺たち!? やっぱり仲間がいるんだな」


 野瀬と呼ばれていた茶髪の男が大型ナイフを引き抜く。それを合図に、様子を見ていたバスの運転手がエンジンをかけた。


 (これはまずい! 何とかしないと)


 望が悪化する状況に焦って何かを言おうとした時、野瀬たちの視線が望の後ろに向いた。慌てて振り返ると日本刀を手にし、肩に短機関銃をかけた音葉が呆れ顔で近づいて来てくるところだった。

 日本刀と銃を持った少女という絵面が意外だったのか、野瀬たちは動きを止め音葉が近づいてくるのを待っていた。音葉は望の隣に立つと短機関銃と日本刀を地面に置く。それからチラリと望を見た。


 「俺に任せろ、でしたっけ?」

 「ごめん、無理だった」

 「後は私がなんとかします」


 そう溜息混じりに言うと音葉は野瀬やその仲間と向き合った。


 「お、おう、お前は誰だ?」

 「私は奥山音葉といいます。まず、混乱させてしまった事をお詫びさせてください」


 音葉が舞台挨拶をする役者のように頭を下げる。二つに束ねた長い髪が肩から流れ、先端が灰と雨で汚れた地面をこすった。


 「試すような事をして申し訳ありませんでした。私達は私と望さんの二人だけです」  


 集団の態度は明らかに音葉の出現で変化していた。警戒感が少し薄れている。まだ驚きが抜けきれない野瀬が何かを言いかけたが、それよりも早く女子大生風の女が男の前に立ち柔らかい笑顔を作った。


 「女の子がいたのね。それならそっちの彼が警戒しても仕方ないわね。名前は奥山さん? 私は波多野、こっちは野瀬って言うの。よろしくね」

 「おい、何を勝手に俺の名前まで教えてんだ」

 「野瀬さん、とりあえずナイフをしまって。二人は武器を捨てて丸腰なのよ。こっちも武器を下ろしてしっかり話し合いましょう」

 「波多野、お前は警戒心が無さ過ぎるぞ。このガキらが何か企んでいたどうするんだ? 他に仲間がいたら?」

 「もし野盗の類なら、こんな可愛い女の子が無事なわけないでしょ? おっかない銃だって持ってるんだし私たちを襲うつもりなら出口で待ち構えるとか、もっと他に方法があったはずよ」


 波多野と名乗った女子大生風の女に言われ、野瀬が唸った。  


 「今は他にやるべき事があるでしょ。それに、この子達は戦えそうよ?」


 波多野の言葉に野瀬は何かに気がつき、苦虫を潰したような顔をする。


 「お前、まさか」

 「利用できるものは何で利用しましょう。私たちに選択肢はほとんどないんだから」


 何かを納得した野瀬は大型のナイフを鞘に納めると筋肉質の腕を音葉に差し出した。最初、音葉は攻撃されるのかと思い足元の日本刀に手を伸ばそうとしたが、それが握手だとわかるとはっきりと拒絶の意を示した。


 「ごめんなさい。でも初対面の人と接触は避けたいんです。おじさんがゾンビに感染している可能性もありますから」

 「音葉ちゃん!? もっと言葉を選んだ方が」

 「はっきり言う奴だな。嫌いじゃねえが不快だ。俺は野瀬。このグループのリーダーをやってる。お前は奥山だったな。それでそっちが、」  

 


 野瀬は睨めつけるように隣の望に視線を移した。下手な事をした容赦しないと言わんばかりの眼力に望は思わず一歩後ろに下がる。そんな望に野瀬は同じように手を差しだした。慌ててその手を握ると野瀬はリンゴを潰すような勢いで望の手を握りしめた。


 「い、痛いっ」

 「お前は冠木だった。まあよろしくな。俺たちは厄介ごとの最中なんだ。下手な事をしたらぶっ殺すからな」


 そう言って野瀬は望の手を乱暴に振りほどいた。痛みを感じるほどの握手だったが、それが望にとっては噴火以来、初めて触れた生きた人間の身体だった。生きている人間の体温、それだけで不思議と安心感を感じた。野瀬との握手が終わると、波多野と呼ばれた女が笑顔で右手を望に差し出してきた。


 「私は波多野っていうの。まあ、この野瀬さんの補佐役ってことろ。ゾンビじゃないから安心して。よろしくね。冠木君」

 「よ、よろしくお願いします」


 こちらは大人の女性の手だった。野瀬とは違い、細くて柔らかい。


 (握手ってすごいな)


 望は離れていった波多野の手の感触をしみじみと思い出していた。長い冬の終わりに春の空を見つけたような、そんな気分だ。音葉が隣から冷たい目を向けていたが、望が気づくことは無かった。

 集団に張り詰めていた緊張な緩み、バスのエンジンは再び止まり、望と音葉を遠巻きに警戒していた六人も武器を下ろしていた。改めて野瀬が望と音葉の二人と向き合う。


 「それで、お前たちはどうして俺達を追ってきたんだ?」

 「望さんが言った通りです。車の痕跡を見つけて生存者がいるのなら仲間にしてもらおうと思ってきました」

 「そうか......」

 「野瀬さん、ちょっといいかしら」

 

 何かを言い澱んだ野瀬に波多野が耳打ちをする。二人から「早く。時間が無いのよ」とか「いや俺が」など言葉の断片が聞こえてくる。やがて波多野との密談を終えた野瀬は不服そうに音葉と望に向き直った。


 「それで、奥山に冠木、お前達はどこに行くつもりだった。何か目的があってこの辺りをうろついていたんだろ?」

 「館山に行くつもりでした」

 「そうか。俺たちもだ。あの放送を聞いたのか」

 「いいえ。実際には聞いていません。放送を聞いた人に教えてもらいました」

 

 望は西山の手帳を鞄の上からそっと撫でた。彼女の残してくれた情報で望達はついに他の生存者と会う事ができたのだ。望はある事を確かめようと野瀬に質問をする。


 「あの、みなさんの中に西山千尋って中学生の女の子はいませんか?」   「西山? いや俺たちの中にそんな名前の奴はいなかった。そうだよな?」


 波多野が「ええ」と言って首を横に振った。望はそれを見て少しだけ落胆する。


 「西山ってのはお前達の仲間か? 途中ではぐれでもしたか」

 「いえ、館山の事を教えてくれた人の妹です……」

 「そうか。無事だといいな」

 「野瀬さん、もし館山に行くのなら私たちも一緒に行かせてもらえませんか。ゾンビとの戦闘経験は結構ありますから戦力にはなると思います」

 「はっ、まるで俺たちが戦力不足みたいな言い方だな」

 「違うんですか?」

 「ちょっと音葉ちゃん!? 言葉!」

 「今は非常時です。つまらない腹芸をしても状況をややこしくするだけですよ」


 ついさっき、野瀬達と拗れただけに望は返す言葉が無かった。


 「ガキがはっきりと言うな。だが、まあ、そうだよ。俺たちはゾンビ共と戦うには戦力が足りねえ。メンバーのほとんどは年寄りに女子供だ。お前たちが加わってくれるなら歓迎するぜ。だが、」

 「だが、何ですか? 何か条件があるんでしょうか」

 「ああ。まあ、なんだ……」


 野瀬が口籠る。望と音葉の二人に何かを告げようとして、それを迷っている。見かねた波多野が野瀬の代わりに言葉を続ける。


 「あなた達に頼みたいことがあるの。そうですよね、野瀬さん」

 「……ああ。そうだ。だが、くそっ」


 野瀬は地面を思いっきり踏みつけた。表面の乾いた灰が、ぱっと空中に広がる。その微粒子が、砂時計の様にゆっくりと地面に落ちる。野瀬は太陽の光を受けて輝く微粒子をじっと見つめていた。全ての灰が地面に戻った時、野瀬はようやく決心し口を開いた。


 「初対面のお前たちにこんな事を頼むのはどうかと思うが、俺たちの仲間を探してきてほしい」

 「野瀬さん達の仲間?」


 望がバスの方を見ると野瀬が首を横に振る。


 「あっちじゃない。ホームセンターの中だ。三人が物資を調達に行ったきり戻らない。中に入ってもう一時間以上経つ」

 「中にはゾンビがいるんですか?」


 音葉が足元の日本刀を拾いながら言った。


 「わからん」


 野瀬が吐き捨てる。


 「わからんまま、あいつらを行かせた。俺のミスだ」


 悔しさを隠そうともせず、野瀬は唇を噛み、拳を強く握りしめた。そんな野瀬の背中に波多野がそっと手を添える。


 「野瀬さんのせいじゃない。私も賛成したし、新城君達が自分から行くって言い出して行ったんだから」

 「行かせるべきじゃなかった。ガソリンが手に入ればそれで十分だったのに、クッソ」


 野瀬が地面を蹴り上げる。今度は雨で固まり泥となった灰がべちゃっとアスファルトの上を跳ねた。その泥の一部が飛んできたが音葉は顔色一つ変えずに躱す。


 「つまり私たちにその新城さん、って人を探して来いっていうんですね?」

 「……そうだ。情けない話、俺達にはもう捜索に出せる戦力が無い。中に入った新城達が俺たちの中で一番ゾンビとの戦いに慣れていた。できれば俺が助けに行きてえが」

 「ダメです。野瀬さんは私たちのリーダーなんです。館山までまだ距離がある。野瀬さん抜きではたどり着けないわ」

 「分かってる。だからこいつらに頼むんだ。奥山に冠木、子供にこんな事を頼むのは間違ってるのはわかっている。だが俺はあいつらを見捨てたくない。建物の中に入って、あいつらがどうなったのかだけ確認して来てくれないか?」


 そう言って野瀬は望と音葉の二人に頭を下げた。音葉はある程度予想していたのか平然としていていたが、強面の男に殊勝な態度を見せられた望は戸惑っていた。


 「お兄さん、どうしますか?」


 音葉が望に尋ねた。これは試験ではなく純粋な質問のようだ。 お兄さん」という呼び方に野瀬が首を傾げるがそこは問題ではない。望は考えた。ゾンビがいるらしいホームセンターに入るのと、このまま野瀬達とは別れて館山に向かう事、どちらがよりリスクが高いのか。せっかく出会えた他の生存者は貴重だが、命をかけるほどなのか。野瀬達のグループは戦力よりも守るべき対象の方が多い。その集団に加わるメリットはあるのか。


 「……俺は断った方がいいと思う」


 望の言葉に野瀬が唇を噛み、期待が外れた時に出る失望の表情を一瞬見せた。だがすぐに強い男の顔に戻る。


 「戦い慣れた人が三人もいて一人も帰ってこれなかったって事は、中に相当な危険があるって事だよな。そんなリスクをわざわざ取る必要は無いと思う。それに、ここから館山まではそんなに人口の多くないエリアだろ? 俺たち二人でも十分進めるよ。ただ、」


 望は野瀬達のグループを見た。高校生の望から見てもこのまま無事に生存者の救助に当たっているという自衛隊がいる館山に辿り着けるか怪しい。バスの中には子供だけでは無い。よく見れば赤ん坊を抱いた女性までいる。

 鞄越しに西山の手帳に触れた。西山は車が故障し負傷した妹を逃がすために囮になり結果として命を落とした。野瀬の集団でバスが動けなくなったら、そこをゾンビに囲まれたら、野瀬や外にいる人数でバスの中にいる三十人以上を守れるとは到底思えなかった。


 (でも西山なら二つ返事で助けに行くんだろうな。じゃあ、音葉ちゃんは? 愛想は無いけど助けを求める人たちを放っておくような子じゃない)


 じっと望の答えを待つ音葉、熊のような体格に似合わずすがるような目で望を見る野瀬、そして断られた時のショックに備えようとする波多野、三者三様の視線が望に向けられていた。


 「ただ、何ですか?」


 音葉が望の結論を促す。


 「ただ、俺たちにしかできないなら行くべきだと思う。もしかしたらゾンビの大群に囲まれて動けなくなってるだけかもしれない。それなら俺たちが囮になれば三人を助けられる」

 「そうですね。私も中に入る事に賛成です」

 

 音葉は即答しながら少しだけほっとしていた。それを見て望も安心する。きっと望が行かないと言ったら彼女は一人でホームセンターに入っていっただろう。安心したのは望だけではなかった。野瀬も二人の答えを聞いて肩の力を抜いていた。


 「二人とも、助かる。だがいいのか? 中には間違いなくゾンビがいるぞ」

 「大丈夫です。俺たちはもう五十体近いゾンビを倒します。こう見えて結構なベテランなんですよ」


 スコアの八割は音葉の手柄なのだが望は自信たっぷりに言ってみた。音葉もあえて否定せず頷いて見せる。


 「……すまねえ。中に入った奴らを頼む」


 そう言って野瀬はもう一度頭を下げた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公はめちゃくちゃ人間味のある良いキャラですねw ただよくある人間性が良くかつ俺TUEEEEのキャラではなく、女の子に、それも年下だから余計に良いところを見せたい、役に立ちたい、認められた…
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