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8月17日 地下鉄(1)

2023年2月21日:全面改定

 歩くような速度で大型の4WDを前進させながら、望は人間を轢いた罪悪感が晴れないままハンドルを握っていた。タイヤをスーツ姿の死体に乗り上げた感触が未だに足の裏側に残っている。


「お兄さん、そろそろ大通りです」


 助手席の音葉は前のめりになって外の様子を探っていた。


「通りにはゾンビがいる可能性があります。できるだけゆっくりと進んでください」

「わかった。もしゾンビがいたら?」

「数次第です。少なければそのまま進んでください。車のガラスを割れるようなゾンビは滅多にいません」

「滅多に?」

「見た目からして明らかに違うので直ぐに見つけられます。他のゾンビよりも大きいのがいたら注意してください」

「……了解。数が多かったら引き返せばいいのかな」

「そうです。あと、ゾンビがいなくても何か異常があったら止まってください」


 望はできれば引き返さずに済むよう祈りながらアクセルを踏んだ。緩やかなカーブを過ぎると駅前の大通りが見えてきた。広い道に出れば死体があっても避けて通れるし、確実に西山に近づける。沈んでいた気持ちが少しだけ上向きになった気がした。


「大通りに出たら、左に曲だっけ?」

「そうです。左折して、道沿いにしばらく真っ直ぐです」


 ついに車が住宅街を抜ける。左右を固めていた塀や住居がなくなり、片側二車線の広い通りが目の前に現れる。等間隔の並木、牛丼屋や弁当屋、コンビニ、ドラックストアのカラフルな看板、どれも灰を被ってくすんではいるが見慣れた光景だ。だが目に入って来たのはそれだけではなかった。望は事前の打ち合わせ通りブレーキを踏み車を止めた。


「これは、ゾンビはあんまりいないけど……」

「進むのに苦労しそうですね」


 目の前に広がっていたのは、放置された大量の車だった。何十台、いや何百台が同じ方向を向いて停車している。車が向かおうとしていた方向は都心方向で、遠くの方に検問が見えた。都心に向かおうとする車が検問で止まり、渋滞が何百メートルも続いたようだ。そして痺れを切らした運転手が車の隙間や歩道から目に進もうとし、壊れた改札に殺到する通勤ラッシュの乗客のように車の押しくらまんじゅう状態になっていた。さらにその渋滞に突っ込んだ車、横転して荷台の荷物を他の車の屋根にぶちまけたトラック、三台の軽自動車を潰して電柱に激突した外車など路上は混沌としていた。

 望が呆気にとられている中、音葉は近くの車をじっと観察していた。


「ほとんどの車が無人ですね」

「確かに、ドアが開けっぱなしの車が多い。何かあったのかな」

「多分、検問で止められている間にゾンビの群れが来たんだと思います。みんな慌てて車から降りて逃げたんでしょう」

「ゾンビはそれを追っていった?」

「おそらく。だからこれだけ車があってもゾンビが見当たらないんだと思います」

「そうか。進むのは大変そうだけど、ラッキーだったのかな。それにしても、何もかもメチャクチャだね」


 車だけで無く周囲の建物もひどい有様だった。道路沿いにあった薬局やコンビニ、本屋などの店舗は、略奪にあったのか、あるいはゾンビに襲撃されたのか、ガラスが粉々に砕けており、商品が外に散乱していた。郵便局の前にあったポストがなぜか破壊されており、ハガキや封筒が散乱している。マンションも何棟かあるのだが、火災で黒く煤けていたり、エントランスが破壊されていたりと悲惨な状況だ。地下鉄の入り口にはシャッターが閉じていたが、車が突っ込んでいた。消防車も何台か放置されているし、向かい側の歩道には救急車が乗り上げており、その後部ドアは開きっぱなしで何かが載ったままのストレッチャーがはみ出したままだった。


「直接左折はできなさそうだね。でも左側の道にいければそれほど混んでない」


 ちょうど望達のいる辺りが渋滞の最後尾付近だった。あと五十メートルずれていれば車がほとんどいない道路だったのだが生憎目の前は障害物だらけだ。すぐ左では事故を起こした車で壁ができており、正面もでたらめに放置された車で迷路ができていた。だが何とか抜けられそうだ。渋滞の最後には一台の大型観光バスが横転していた。そのバスは底を望たちに向けて道路の半分ほど塞いでいる。よく見るとわずかに煙を上げており、灰もほとんど積もっていない。


「あれは最近事故ったのかな」

「灰の積もり具合からして、ああなったのは今日の朝か、遅くとも昨日ですね」

「じゃあ、生き残りが?」

「もしいたら私達を見つけて声をかけてくると思います。多分ですが、乗っていた人は逃げ出してもうこの辺りにはいないと思います」

「そうか……でも、俺達以外にも生きている人がいるってことだよな」


 とはいえバスはかなり派手に事故を起こしている。高速で走っていて、前方に放置された渋滞を見つけ、慌てて急ブレーキをかけハンドルを切ったものの曲がりきれずに横倒しになり数十メートル路上を滑って車列に突っ込んだ、そんな感じだ。車内にいた人は軽傷ではすまないだろう。


「あのバスまで行ったら降りて人を探した方がいいかな」

「どうでしょう。もし息のある人がいたら助けたいですが、これだけ物が多いとどこにゾンビがいるかわかりません。外に出るなら見通しの良いところで直ぐに逃げられる時だけにしてください」

「わかった。取りあえず目の前の障害物を迂回してバスまで行ってみよう」


 直ぐに左折したかったが生憎とそこには玉突き事故を起こした自動車が壁を作って道を塞いでいた。歩道にもワンボックスカーがいて通れそうに無い。だが正面真っ直ぐなら進めそうだし、救急車が止まっている向かいの歩道は車で通れそうだ。


「向こうに行って、こっちまで戻って、また向こう側行けば抜けられそうだ」


 つまり「S」を右に倒し、右下から左上に進めばこの放置自動車の迷宮を抜けられそうだった。

 望は少し身を乗りしながら進行方向の道路の状態を確認した。地面には壊れた自動車の破片やスーツケースなどが散らばっているが死体は見当たらない。 足跡は無数にあるのだが、車と車の間には火山灰が均一に積もっておらずいつのものか判断するのは難しかった。


「ゾンビの姿は今のところないです。ゆっくりお願いします」

「まずは、道路を突っ切って反対側までいくよ」


 ハンドルを細かく左右に動かしながら、灰の積もった車を避けて向かい側の歩道を目指す。車は横断歩道や車線お構いなしに置かれているので運転初心者の望には厳しかったが、なんとか反対側の歩道まで車を進めることができた。そこには後部ドアが開いたままの救急車があった。


「音葉ちゃん、あの中にゾンビが」

「いますね。バンドみたいなもので固定されているので大丈夫だと思います」


 救急車の後部からはみ出たストレッチャーの上に真っ白な肌をした性別のわからないゾンビがいた。救急隊員が抑さえようとしたのか太いバンドのような物で胴体や腕を固定されている。白濁した目は確実に望達を追っていたが文字通り手も足も出ず、掛けられたシーツの下でもぞもぞすることしかできないようだ。


「あのゾンビに拘束を破る力はないみたいです。無視してください」

「わ、わかったよ」


 とはいえ、動く死人に睨まれるのは背筋が凍るような思いだ。望は少し焦りながら歩道に入り、十メートルほど進む。できればこのまま真っ直ぐ行きたかったが、その先は観光バスの事故に巻き込まれて押し出された車で塞がれていた。望はハンドルを切って再び道路を埋め尽くしている大量の車の中に入った。通れる部分でも車一台分しか余裕は無く、何度も側面を擦りながら前進する。反対が和の歩道に到達すれば、放置された車や道路の真ん中で横転したバスを抜けることができる。右に曲がり、左に曲がり、赤いポリタンクを満載したトラックやなぜか大型のテレビを満載した軽トラックの横を通り、時間はかかったものの五分ほどで最初に大通りに入ってきた側の歩道の手前までこれた。歩道には街路樹や柵があり入れないが、横転したバスの後部の横には十分な隙間があり、その先には障害物のほとんどない道が続いている。


「お兄さん、バスの横で一旦停車してください。もしかしたら生存者がいるかもしれません」


 望は「わかった」と応えアクセルを踏みバスと歩道の間に車を進めた。大型のバスの横を通り過ぎると視界が開け、道の全体が見渡せるようになる。バスは横転しているので、今まで見ていた裏側ではなく屋根側が見えている。生き残りを示す何かがあるか目を向けたが、そにには想定外の光景があった。


「!? 嘘だろ……」


 そこには大量のゾンビがいた。横転した大型バスの車体に隠れて見えなかったが数は数十から百体。密集しその多くは地面に屈みこんで何かをしている。目を凝らしてみると、人間のパーツらしいものに貪りついている。腕や足、頭部、そしてどこの部位かもわからないどす黒い塊を緩慢な動作で口に運んでいた。それららはまだ「新鮮」らしく、ゾンビに咀嚼される度にどす黒い液体が地面に滴っていた。直ぐ近くに望達の車があるにも関わらず食事に夢中なのかこちらに気がついていない。

 言葉を失った望とは対照的に音葉は冷静だ。


「バスに乗ってた人、なんでしょうね。逃げそびれた人がゾンビの餌食になったんだと思います。そこにゾンビが集まったんですね。数は、七十か八十か」


 音葉が冷静にゾンビの集団を確認しながら日本刀の柄に手を掛けた。

 望は息を止め、震える足でブレーキを踏みながら状況を確認する。バスの周囲に金属バッドやヘルメットが散乱していた。横転した車内から何かを引きずったような黒い汚れが地面にあり、その先には食事中のゾンビの群れがいる。辺りを見渡しても生きている人間は見当たらない。


「ゾンビ達は食事に夢中です。一気に横を抜ければ行けると思います」

「あんなにいるのに?」

「走れるゾンビは滅多にいませんし、いても車には追いつけないはずです」

「なるほど……あのさ、あそこにも二体いるんだけど……」


 望たちの正面、十メートルほど先に近所の女子校の制服を着た少女が地面に座り込み小さな肉片のようなものを食べていた。後ろ姿なのではっきりとはわからなかったが間違いなくゾンビだろう。女子高生の後ろにももう一体いるがどんなゾンビかはわからない。位置関係は、望達の車の十五メートル右にゾンビの群れ、左側は歩道のガードレール、正面十メートル先やや右に女子高生ゾンビともう一体、そして後ろは車の迷宮だ。ちなみに正面には大量のゴミ袋があり、それを避けると女子高生ゾンビにぶつかることになる。こうなると選択肢は多くない。


「ゾンビの群れの横を勢いよく抜けて、正面のゾンビを撥ねてそのまま進みましょう。絶対に避けようなんて考えないでください。七十体に囲まれたら車も動けなくなるかもしれません。行けますか?」

「やってみる……」


 望はブレーキから足を離し、アクセルを踏んだ。緊張していたためか、クラッチペダルを踏んだままで、エンジンが盛大に空回りする。轟音が辺りに響き渡った。


「お兄さん!?」

「ごめん!」


 その音で一番近くにいた女子高生ゾンビが顔を上げた。口元はどす黒い液体で汚れ、何かで殴られたのか顔の半分は崩れおち、右の眼窩に眼球はなく白い骨が見えている。ゾンビの残った左目が望たちを捉えた。女子高生ゾンビは手にしていた肉片を地面に落とすと、ふらふらしながら立ち上がりかすれ声を上げた。それを聞いた周囲のゾンビが顔を上げ望たちの方を見る。


「気づかれた!?」


 望は意味もなくハンドルに身を隠し叫んだ。


「無意味な事をしないでください。ゾンビはまだ動き出していません。車よりも食事の方が優先順位が高いんです。いまらな強引に進んで突破できます」

「つまり?」

「前に進むんです! 早く! 今すぐ!!」

「はいっ」


 望はハンドルから頭を出し、アクセルを踏もうとした。だが女子高生ゾンビと目が合ってしまう。グロテスクで怪物じみていたがどこからどう見ても人間だ。


「ごめんっ」


 望は思いっきりアクセルを踏み、女子高生ゾンビに突っ込んだ。二トン近い重量があるSUVは容易に少女ゾンビを吹き飛ばすはずだった。だがゾンビを跳ね飛ばしたと思った瞬間、激しい衝撃が走り望と音葉の目の前に白い風船のような物が広がった。


「うわわ?」


 全身を大きなフライパンで叩かれたような衝撃に一瞬意識を失う。直ぐに気を取り直し、風船のようなもの、衝突した拍子に展開したエアバッグを押しのけた。フロントガラスの向こうには女子高生ゾンビを守るように一体の大きなゾンビが仁王立ちしていた。車のフロント部分はぐちゃぐちゃに潰れている。大型のゾンビも相当なダメージを負ったらしく、恐ろしい形相のままこちらを睨んでいるが動こうとはしない。


「あれが、もしかして、見た目からして明らかに違う大きいヤツ?」

「……ですね。よりによってラスト二体の一体とは思いませんでした。お兄さん、車はバックできますか」

「なんとか動きそうだけど」


 大型のゾンビはまだ止まっているが、女子高生ゾンビや右側にいた群れが辿々しい足取りで望たちに向かってくる。車を方向転換させる空間的な余裕はなかった。望はシフトレバーをバックに入れると、バックミラーを見ながらゆっくりと車を後退させた。時速五キロほどでもゾンビの足よりは早い。しかしハンドルの操作感がおかしい。エンジンも妙な音を立てている。


「お兄さん! 車がふらふらしてますよ」

「わかってる。ちょっと調子が……」


 何とか車の迷宮に戻ったものの、狭い隙間を右に左に曲がりながら後退するのは運転経験の浅い望には難易度が高かった。小さな操作ミスを繰り返し何度も別の車にぶつかる。その度に車体が揺さぶられ、エンジン音が歪になっていく。さらに萎んだエアバックや言うことを聞かないハンドル、追ってくるゾンビと、望の気持ちは焦るばかりだった。アクセルを踏み込みすぎ、勢いよくトラックにぶつかる。ハンドルを切ると車が何かに乗り上げ、ぐちゃっと潰した。車体が二十センチほど突然沈んだ。衝撃でエンジンが停止し、さらにシートベルトが身体に食い込み音葉が苦しそうな声をあげる。


「ぐっ」

「ごめん、大丈夫?」

「私は平気です。それよりも早く移動を」

「今エンジンをかけ直す」

「……待って!」

「えっ?」


 衝撃で停止したエンジンをかけようとキーに手を伸ばした望を音葉が鋭い声で制止した。


「エンジンはかけないでください、ガソリンの匂いがします」


 望はキーから手を離すと車内から地面を見た。車の真下から黒い液体が川になって流れていた。ドアの隙間からガソリンスタンドの臭いまで漂ってくる。バックミラーをみると赤いポリタンクを積んだトラックが真後ろにあった。


「地面に落ちていたポリタンクを踏んだんです。それでガソリンが漏れたんだと思います」

「じゃあ、エンジンをかけたら? まさか爆発する?」

「わかりませんけど」

「どうする!? もうゾンビが来る」


 目の前からは女子高生のゾンビを先頭に数十体のゾンビの群れが一歩、また一歩と近づいてきていた。音葉はゾンビの数と、横で煙を立てている大型バスを見て、シートベルトを外した。


「爆発のリスクは無視できません。車を捨てましょう」

「でも外にはゾンビが……」

「ここにいても囲まれて動けなくなるだけです。行きますよ」


 音葉は後部座席から自分の荷物を手取り肩にかけた。望も迷いながらも自分の荷物を抱える。


「車から出たら私から離れないでください。行きますよ」


 望は頷くと、運転席のドアを開けて外に飛び出した。強烈なガソリンの匂いに思わず鼻を押さえたくなる。既に近くまでゾンビの群れが迫っている。望は慌てて音葉の姿を探した。年下の女の子は既に望と群れの間に立ち刀を構えていた。


「お兄さんは隠れていて!」


 望はその場にうずくまる。その直後、女子高生ゾンビが奇声を上げながら飛びかかってきた。音葉は一歩前に踏み出すとゾンビの目を素早く日本刀で突いた。刀は女子高生ゾンビの残っていた方の目に数十センチ単位でめり込む。ゾンビの全身から力が抜け、刀を抜くと女子高生ゾンビはスカートをふわっとさせながらその場に倒れた。


「まだくるよ!」

「まったくっ。次から次へと!!」


 また別のゾンビ、コンビニの制服を着た男性ゾンビが近づいてきた。コンビニ店員ゾンビは女子高生ゾンビより機敏だったが、足元に転がっていた車のサイドミラーに引っかかり勝手に転倒する。すかさず音葉は倒れたコンビニ店員ゾンビの首に刀を振り下ろした。刀が首の半分くらいまでめり込む。音葉が刀を抜くとゾンビがふらつきながら立ち上がろうとする。しかし、千切れかけた首が、重みでだらんと垂れ下がり、一呼吸置いて胴体から離れた。脳を失った胴体はそのまま倒れ、首から先はまだ動いていたがカチカチと歯を開けることしかできなかった。そうしている間に、音葉はなぜか水着姿の金髪の男性ゾンビを倒していた。


「すごい……」


 次々とゾンビを倒す音葉に望はただ感心していた。視界に大きく黒い影が入って来た。先ほどの大型ゾンビだ。さらに赤いポリタンクから漏れたガソリンが地面に広がり横転したバスの下に入り込んでしまった。そのバスの内側からは未だに白い煙が上がっている。


「まずい、音葉ちゃん、デカイのとガソリンが」

「何がいいたいんです!?」

「とにかく逃げよう。爆発する。ガソリンがバスにっ! 煙が上って、まだ火があって」

「そういうことですか」


 状況を理解した音葉はエプロン姿の女性ゾンビの首を跳ね飛ばすとその身体をゾンビの群れに蹴り飛ばした。狭い通路には既に数体のゾンビの死体が倒れており、音葉を襲うとした別のゾンビはそれに足を取られて転んだ。大型のゾンビは群れの奥にいるので他のゾンビがいい足止めになっている。


「いいですね。逃げましょう」


 勢いよくくびきを返した音葉が駆け出し、望もそれに続く。車の迷路を駆け抜け、歩道に乗り上げた救急車の位置に辿り着いた時、爆竹を大きくしたようなパンっという音がした。バスの下に入り込んだガソリンに、燻っていた火が落ちて小さな爆発を起こしたようだ。


「なんだ。それだけか」

「いえ、違います!」

「えっ?」

「地面を見て。火がガソリンに引火してます」


 バスの下まで伸びたガソリンの川を遡るように炎が広がっていた。地面を走る炎がゾンビ達の群れを照らした。あの大きなゾンビもそこにいる。そしてその先には赤いポリタンクを満載したトラックがあった。


「その救急車の中に!!」


 音葉が叫びながらゾンビが固定されたままのストレッチャーを蹴り倒し、望を掴んで救急車の中に飛び込んだ。そしてすぐに扉を閉じる。その直後、大爆発が起こった。

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[一言] 主人公は、どんだけ考えが甘いの? 音葉に、あれだけ世界が変わって、今までの常識が通用しないと言われているのに、主人公の言動や考えがダメすぎて、真っ先に仲間とかに見限られると思うんだけど、読ん…
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